CCさくら×テイルズ ~カードを求めて異世界へ~   作:あんだるしあ(活動終了)

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壊れたココロ

 コタローとスレイがアリーシャに追いついた時、アリーシャはスレイに体当たりするように彼の胸に飛び込んだ。

 

「嫌だ! 嫌だ! (うち)に帰りたい! 知らないよ! 戦争も国も民も! 陰口を言われるのも意地悪をされるのも、もうたくさん! 王女も騎士もやめる! バルトロでも誰でも勝手にすればいい!」

 

 コタローは痛ましい思いでアリーシャを見つめた。

 

 みんなのために頑張った。悔しさも辛さも、全て心の底へ沈めて。

 その対価が、今日までの不遇の日々であり、この裏切りの結末。

 

「頑張っても、いいことなんかなかった……何も……っ」

 

 すると、スレイの大きな掌が、アリーシャの細い両肩を包んだ。

 

「あの人が嘘を言ったとしても、受け止めたアリーシャの気持ちは本物だろ? それで今ここにいるアリーシャは、間違いなく本物だよ。オレが保証する」

 

 アリーシャはまじまじとスレイを見上げた。コタローも同様だった。

 

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 違うのだと言いたくて言えなかった。

 今アリーシャが必要としているのは、自己の肯定などではない。ただ、アリーシャは悪くないと、辛かったけどもう大丈夫と、安心させて、存分に泣かせてやるための言葉が必要なのに。

 スレイはちっともわかっていなかった。ただ突き放すよりずっと質が悪い。

 

 アリーシャがスレイを凝視しながら後ずさっていく。恐ろしいものを見る目で。

 

「! 後ろ!」

「え?」

 

 森の陰から敵意全開の気配が飛び出した。

 

 スレイがアリーシャを抱えて地面に倒れ込み、「それ」の突進を避けた。勢いのまま襲ってきた「それ」は、コタローが一度しゃがんで下からアッパーを食らわせた。

 

 地面を盛大に滑って転がった「それ」から、浄化の炎が上がった。おそらくライラあたりが浄化してくれたのだろう。

 

「アリー、ちょっとごめん」

 

 コタローはアリーシャの懐に手を突っ込んだ。スレイが制止したが無視した。

 取り出すのは「(ミラー)」のカード。

 

「木之本桜の創りしカードよ。その力を鈴に移し、我に力を。『(ミラー)』!」

 

 窪地を囲んで鏡の円筒が展開された。

 

 「(ミラー)」は真実を映す「鏡」。これで憑魔が視えないコタローでも、窪地に降りた憑魔なら鏡を見て迎撃できる。

 

 ウルフの形をした憑魔が窪地に飛び込んでくる。

 コタローは次々にそれらを殴っては蹴った。

 

 戦闘不能になったウルフは浄化の炎によって燃え尽きる。鏡を見れば、紙葉を投げるライラや、杖や傘で迎撃するミクリオとエドナ、ペンデュラムでウルフを縛って地面に落とすザビーダの姿があった。

 

「みんな、オレも!」

「導師さんはアリーから離れないでください!」

「けど、見てるだけなんて」

「それでも! あんたが今、アリーから離れたら終わりなんだよ!」

 

 コタローはウルフの脇腹に回し蹴りを叩き込んだ。

 

 やがてウルフの群れは、コタローと、天族たちの助けによって全て浄化できた。

 

「はぁ…は…っ」

 

 コタローは汗をぬぐって鏡の壁を消し、急いでアリーシャに駆け寄った。

 

「アリー、大丈夫っ?」

 

 アリーシャはスレイに抱え起こされたままぼうっとしている。避けた時の打ち所が悪かったのかもしれない。

 治癒魔法が使えないコタローは、急いで王都へ連れ帰って医者に診せようと、スレイに提案しようとした。

 

 アリーシャは茫洋とした目でスレイを見上げ、コタローを見上げ。

 

 

「――だぁれ?」

 

 

 聞き間違いであってほしいと願うほどの言葉を、発した。




 アリーシャの心がついに折れました。バッキバキです。複雑骨折です。
 いやあの時ね、原作ね、スレイはアリーシャを抱きしめてあげてよかったと思ったんです。

 ここからオリジナルパート入りま~す。

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