CCさくら×テイルズ ~カードを求めて異世界へ~   作:あんだるしあ(活動終了)

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マルトランの正体 2

「マルトランは憑魔だもの。災禍の顕主の配下として、戦争を煽った張本人なのよ」

 

 唇がいびつな弧を描いて固まったのがわかった。

 

「エドナ!」

「教えておかないとマズイでしょ」

「だな。後ろから刺されてからじゃ遅い」

 

 エドナとザビーダ以外の顔色の変わり様から、それが冗談でも何でもないのだと伝わった。

 

「ちょ、ちょっと待ってください!」

 

 一番に反論したのはコタローだった。

 

「マルトランさんは本気でアリーを励ましてました。おれも見ました。部外者のおれにもわかったくらいです。そんなマルトランさんが憑魔なわけ」

「コタロー」

 

 アリーシャはコタローに歩み寄り、肩に手を置いた。

 

「いいよ。ありがとう」

「けど、アリー!」

「本人に会えばわかることだ。――行こう」

 

 アリーシャはライラに頼んで神依を解いた。そして一番に歩き出し、屋敷の門を潜って街へ出た。

 

 

 

 

 コタローはスレイから離れ、小走りにアリーシャを追って隣に並んだ。

 

「アリー、まさか信じたの? エドナさんたちが言ったこと」

「信じられない、というのが本心だよ。でも、君が先に怒ってくれたから冷静になれた」

 

 怒りたくても先に別の人間が怒ったら怒りが引く。ままあることだ。それでも、そう言われては、あそこでアリーシャより先に怒鳴ってしまった自分に対して悔しさが向いた。

 

「真実は私の目で見極める。私は、師匠(せんせい)を信じる」

「おれも、信じるよ。マルトランさんだから」

 

 例え信じた先に、夜より闇よりなお昏いモノが待ち受けていたとしても――

 

 

 

 

 

 グレイブカント盆地に着くまでもなく、レイクピロー高地を少し行ったところで、コタローらはマルトランに遭遇した。

 

師匠(せんせい)……」

 

 蒼い軍装を翻し、威風堂々と歩いてくるその姿は、まさしく「蒼き戦乙女(バルキリー)」の二つ名にふさわしい。なのに。

 

「やっと気づいたか。私の正体に」

 

 その朱唇はアリーシャにとって残酷な言の葉を吐いた。

 

「っ、あなたはアリーを10年も育ててきた人でしょう!? それだけの時間をアリーに寄り添って来たんでしょう!? なのに、どうして!」

「私が信じる理想のためだ。アリーシャと出会って幾月程度の小僧にはわからんだろうがな。――お前が使者だろう。総攻撃の勅命を渡せ」

「――、できません」

 

 アリーシャは懐を押さえて一歩引いた。

 

「では力づくで奪うとしよう。来い、ここでは人目につく」

 

 マルトランはコタローらを追い抜き、小道に入って行った。

 

 コタローは小道の先に開けた場所があるのを知っていた。他でもない「(ファイト)」のカードを、その広場で戦って封印した。

 

「アリー、辛いなら待ってても」

 

 だが、アリーシャは首を横に振った。そして、マルトランが入って行った小道に歩いて行った。

 

「導師さん、アリーから目を離さないでくださいね」

 

 後戻りはできない。

 唯一といっていい母親譲りの第六感が、コタローにそう告げていた。

 

「きっと今回、アリーにはあなたが必要になります。おれよりも――誰よりも」

 

 訝しむスレイにそれ以上は言わず、コタローもアリーシャを追った。




 ここで自分がアリーシャに何かするのではなく、スレイに働きかける。
 コタローがアリーシャに恋しているなら自分で何かしたのでしょうが、コタローは友情で、スレアリっぽい雰囲気を察している。だから文末の助言に繋がります。

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