CCさくら×テイルズ ~カードを求めて異世界へ~ 作:あんだるしあ(活動終了)
「マルトランは憑魔だもの。災禍の顕主の配下として、戦争を煽った張本人なのよ」
唇がいびつな弧を描いて固まったのがわかった。
「エドナ!」
「教えておかないとマズイでしょ」
「だな。後ろから刺されてからじゃ遅い」
エドナとザビーダ以外の顔色の変わり様から、それが冗談でも何でもないのだと伝わった。
「ちょ、ちょっと待ってください!」
一番に反論したのはコタローだった。
「マルトランさんは本気でアリーを励ましてました。おれも見ました。部外者のおれにもわかったくらいです。そんなマルトランさんが憑魔なわけ」
「コタロー」
アリーシャはコタローに歩み寄り、肩に手を置いた。
「いいよ。ありがとう」
「けど、アリー!」
「本人に会えばわかることだ。――行こう」
アリーシャはライラに頼んで神依を解いた。そして一番に歩き出し、屋敷の門を潜って街へ出た。
コタローはスレイから離れ、小走りにアリーシャを追って隣に並んだ。
「アリー、まさか信じたの? エドナさんたちが言ったこと」
「信じられない、というのが本心だよ。でも、君が先に怒ってくれたから冷静になれた」
怒りたくても先に別の人間が怒ったら怒りが引く。ままあることだ。それでも、そう言われては、あそこでアリーシャより先に怒鳴ってしまった自分に対して悔しさが向いた。
「真実は私の目で見極める。私は、
「おれも、信じるよ。マルトランさんだから」
例え信じた先に、夜より闇よりなお昏いモノが待ち受けていたとしても――
グレイブカント盆地に着くまでもなく、レイクピロー高地を少し行ったところで、コタローらはマルトランに遭遇した。
「
蒼い軍装を翻し、威風堂々と歩いてくるその姿は、まさしく「蒼き
「やっと気づいたか。私の正体に」
その朱唇はアリーシャにとって残酷な言の葉を吐いた。
「っ、あなたはアリーを10年も育ててきた人でしょう!? それだけの時間をアリーに寄り添って来たんでしょう!? なのに、どうして!」
「私が信じる理想のためだ。アリーシャと出会って幾月程度の小僧にはわからんだろうがな。――お前が使者だろう。総攻撃の勅命を渡せ」
「――、できません」
アリーシャは懐を押さえて一歩引いた。
「では力づくで奪うとしよう。来い、ここでは人目につく」
マルトランはコタローらを追い抜き、小道に入って行った。
コタローは小道の先に開けた場所があるのを知っていた。他でもない「
「アリー、辛いなら待ってても」
だが、アリーシャは首を横に振った。そして、マルトランが入って行った小道に歩いて行った。
「導師さん、アリーから目を離さないでくださいね」
後戻りはできない。
唯一といっていい母親譲りの第六感が、コタローにそう告げていた。
「きっと今回、アリーにはあなたが必要になります。おれよりも――誰よりも」
訝しむスレイにそれ以上は言わず、コタローもアリーシャを追った。
ここで自分がアリーシャに何かするのではなく、スレイに働きかける。
コタローがアリーシャに恋しているなら自分で何かしたのでしょうが、コタローは友情で、スレアリっぽい雰囲気を察している。だから文末の助言に繋がります。