CCさくら×テイルズ ~カードを求めて異世界へ~   作:あんだるしあ(活動終了)

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せめて姫として

 従士として世界に貢献できないなら、せめてハイランドの姫として国に貢献できないか。

 その前向きさが裏目に出るなど思いもせずに、アリーシャは行動を開始した。

 

 

 

 

 ヴィヴィア水道遺跡を降りてすぐの場所で、二人の男が密会している。

 アリーシャは壁際からその様子を見届け、コタローに対して肯いた。コタローも肯き返した。

 

 飛び出した。

 

「動くな! 機密漏洩の容疑で拘束する」

「大人しく御縄にかかったほうがいいですよ。でないともっと痛い目見ますよ~?」

 

 しかし、男たち、特に大柄なほうは特に慌てた様子もない。

 

「これはどういうことですかな?」

「す、すまん! これは違うのだ! ――聞いてください、姫様。これは」

「言い訳無用。この者の屋敷を捜索し、ローランスに繋がる証拠は押さえた。グリフレット橋の修復や軍需物資の受注、不正な取引の証拠も――」

「それは報酬です! この者の貢献への!」

 

 貢献? アリーシャは訳が分からずコタローと顔を見合わせた。

 

「このロゴスは、ローランスとの非公式の外交ルートを担う重要人物なのです。――大問題ですぞ。非公式ルートまで潰れたら、どちらかが滅びるまで戦うしかなくなる」

「だが、私には何も知らされて……」

「当然でしょうな。貴女のような方では」

 

 今のは胸に突き刺さった。一商人が、末席とはいえ王家の姫に、政治に関わる資格なしと言い放ったのだ。

 

「この短慮が何を招くか……覚悟されよ」

 

 ロゴスは足並み荒くヴィヴィア水道遺跡の出口へと歩き出した。

 

「とにかく善後策を講じねば。釈明は後で聞かせてもらいましょう」

「……わかった」

 

 もう一人の男も去った。

 

 アリーシャは悄然と俯くしかなかった。従士としてがダメなら、せめて姫として、国のためになることをしたいと思って奔走したのに。アリーシャには非公式ルートの存在すら知らされていなかった。

 

「アリー」

「なんだかずっと空回ってる。スレイと別れてからずっと」

「アリーは何も悪いことしてない。外交したいなら、戦争なんてやめて堂々と友好の使いを出せばいい。そんなこともできない後ろ暗いことをあの人たちはしてたんだ」

 

 吐き捨てたコタローは、180度回った優しい声でアリーシャに言った。

 

「気に病まないで、アリー。おれもカードたちも、いつだってアリーの味方だよ」

 

 コタローの言葉に応えるように、懐の3枚のさくらカードが、コタローの持つさくらカードたちが、アリーシャを囲んで踊った。

 

「コタロー、みんな、ありがとう……」

 

 

 

 

 

 その頃。アリーシャの行動をしっかり見ていた導師一行では。

 

「すっかりコタにお株奪われちゃったね、スレイ?」

「むっ。――あ、瞳石発見!」

「逃げたな」

「逃げたわね」

「逃げましたねえ」

 

 などという、朗らかな会話がくり広げられていたとか。




 アリーシャはもっと報われて然るべきです。

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