CCさくら×テイルズ ~カードを求めて異世界へ~   作:あんだるしあ(活動終了)

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涙「雨」

 アリーシャがレディレイクに帰ることで、立った波風は大したものではなかった。

 それというのも、マルトランの取り成しと、スレイを戦争に参加させた功績もあって、今回は沙汰なしになったのだ。

 脱走についてはコタローに連れ去られたことにした、とマルトランが謝って来たので、お礼で返した。

 

 アリーシャの日々は再び単調なものに戻った。

 

 槍の稽古をして、政治の本を読んで勉強し、それらが終わればテラスでぼんやりする。

 

 変わったことがあるとしたら、さくらカードの存在だ。「(スノウ)」も「(ショット)」も「(ミラー)」も、時々カードのまま宙に舞い、アリーシャを心配してくれている。

 

「……コタローが『カードは仲良し』だと言っていた。本当にそうだね」

 

 アリーシャはテーブルに突っ伏した。

 

「もういいやって思う気持ちと、スレイを諦めきれない気持ちがあるんだ。私、優柔不断だね」

 

 これらのカードを操る鍛練の時間もあったのだが、それについてはやめてしまった。

 どんなに魔法使いとして大成しても、もうスレイの横にアリーシャの居場所はない。

 終わったのだ。何もかも。

 

 アリーシャはこの小さな城で、届かない正道を叫び、嗤われる理想を吐き、叶わない平和を説き、朽ちていくのだ。

 

 葉擦れの音がして、アリーシャは反射的に顔を上げた。

 

「アリー、いる?」

 

 この世で2番目に聞きたかった声だった。

 

「いるよ、コタロー。お帰りなさい」

 

 庭の木からコタローが飛び降り、鮮やかに着地してから、テラスに歩いて来た。

 

「長い時間待たせてごめん。じゃんっ」

 

 コタローはテラスを登ってきて、ピンク色の札をアリーシャに見せた。

 

「『(レイン)』。憑魔に無理やり使われてたらしい」

 

 コタローはいつもの席に座ったので、アリーシャも椅子に戻った。

 

「ローランス帝国の教会神殿の奥にそいつは巣食っててね。かなりやばめな奴だったんだけど――、――」

 

 こうしてカードにまつわるコタローの冒険譚を聞く時間が、アリーシャは好きだった。どんな英雄譚より、コタローの話のほうが100倍楽しかった。

 

「次でラスト。必ず見つけて、みんな家に連れて帰ってあげるんだ」

 

 コタローは何気なく言っただけかもしれない。されど、その言葉は、アリーシャの心に大きなヒビを入れた。

 

(スレイを拒んで、コタローがカードを集め終えて国に帰ってしまったら、私は――ひとりぼっち)

 

 スレイがいない。コタローがいない。

 その時初めて、アリーシャは、そのことに、ようやく気づいたのだ。




 タイトルと内容の差に自分で「うへえ」となりました。
 この辺からアリーシャ鬱展開が始まる予定です。
 皆様、覚悟の準備は十分か?

 2/24 改題しました。

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