CCさくら×テイルズ ~カードを求めて異世界へ~   作:あんだるしあ(活動終了)

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君は私の「鏡」

 ライラの案内で、アリーシャらは件の「横道」までやって来た。

 ちなみにアリーシャは意思疎通のため、ミクリオと神依化したままである。

 

「ロゼさん、お願いしますわ」

「はいよ。『ハクディム=ユーバ』」

 

 エドナの姿が消えた。ロゼの赤毛が金に染まりテールになる。衣は黄とオレンジ、そして金のリボン。両手には巨大なナックル。

 

「でぇ――やあ!」

 

 ロゼは岩の塊を砕いて道を開いてから、神依を解除した。

 

「行こ」

 

 ロゼが一番に歩き出し、デゼルがすぐ後ろに続いた。そして、ライラ、エドナの順で歩き出した。

 

「すごいな、あの子。号令一つで、あれほどの天族の方々をあっさりと従えて……」

『別に従ってるわけじゃない』

「ですが、私でしたらこうはいかないんじゃありません?」

『それは……』

「スレイはいい従士に出会えたんですね。私なんかよりずっといい従士に――」

『アリーシャ……』

 

 洞窟に入るなり、アリーシャらは声を張り上げてスレイを呼んだ。

 

 応えてくれるならまだいい。応えられない事態になっていたら。そう思うとアリーシャの拍動はどんどん早くなっていった。

 

「なんとかなるよ」

 

 コタローが小さく言った。

 

「『絶対、大丈夫だよ』。母上から教わった、無敵の呪文」

「絶対、大丈夫――か。本当にコタローのお母様は強い人なんだな」

「うん。おれたちきょうだい、全員の誇りだ。だから導師さんも『絶対、大丈夫』」

「ああ」

 

 そこでコタローが困惑も露わに口元全体を押さえた。

 

「さくらカードの気配? 何で。『(サンド)』の時は感じなかったのに。ニアミスしたのか、くそっ!」

 

 コタローは太極の円盤を取り出した。

 

「玉帝有勅 神硯四方 金木水火土 雷風 雷電神勅 軽磨霹靂 電光転 急々如律令」

 

 円盤が六芒星の羅針盤へと変わる。羅針盤の光はまっすぐ奥――アリーシャらが「(サンド)」を封印した空洞へ続いていた。

 

 コタローが駆け出した。アリーシャは皆に「こっちだ!」と叫んでから、コタローを追いかけた。

 

 羅針盤の光は例の空洞に入るなり、空中で直角に曲がり、穴の下へと向かった。

 

「ここから落ちたの?」

「スレイ、スレイ!!」

 

 アリーシャはドレスが汚れるのも構わず、這いつくばって穴を覗いた。――いた。ぐったりと倒れて身動きしない。その隣には、いつもの騎士服の、自分。

 

「デゼル。下まで運んでよ。風の天族ならできるでしょ」

「俺はお前らの乗り物じゃねえ。が、今回は特別だ。導師が死んだら困るからな」

 

 デゼルが腕を一振り。すると翡翠色の風がアリーシャら全員を包んだ。

 次に目を開けた時、アリーシャらは穴の下の空洞にいた。

 

「スレイ!!」

 

 ふうっと力が抜けた。ミクリオが神依を解除したのだ。

 スレイの横には誰もいないのに、スレイの体は揺さぶられている。

 

「またする?」

「お許しいただけますなら」

「いいわ」

「ありがとうございます。――『ハクディム=ユーバ』」

 

 アリーシャは今度、オレンジと金のドレスに金のサイドテール姿になった。

 

 顔を向ければ、例の「アリーシャ」はスレイから離れた位置に立っていた。

 

「よくもスレイを! ――ツインフロウ!」

 

 ミクリオの水弾が「アリーシャ」に向かう。だが水弾は「アリーシャ」の目の前に壁でもあるように掻き消えた。

 

「効いてない!?」

「ちっ」

 

 デゼルが風の属性を帯びたペンデュラムを「アリーシャ」に放つ。しかしペンデュラムは「アリーシャ」をすり抜けた。

 

「何なのよ、こいつ」

「やっぱり。攻撃も捕縛も通らない特殊カードです。封印するには名前を当てないと。大丈夫、もう見当はついて……アリー!?」

 

 アリーシャは神依を解き、己に生き写しの少女の前に、一人で立った。

 

「……あなたが彼の『アリーシャ』?」

「そうだ。スレイに怪我をさせたのはお前か」

 

 「アリーシャ」は無言で肯いた。

 

「――後悔、してるんだな」

 

 また無言で彼女は肯いた。

 

 学生服姿のアリーシャと、鎧姿の「アリーシャ」。外装だけなら後者がアリーシャだが、前者のほうがずっと強く感じられた。

 

「私は一度、自分のせいでスレイを苦しめたことがある。二度と嫌だと思った。だから別れた。君はあの日の私そっくり。まるで『鏡』みたい」

 

 

 パキィィィン……ッ

 

 

 金属が割れる音がして、「アリーシャ」の外装が崩れ落ち、中から丸鏡を抱いた少女が現れた。

 

 

 ……ごめんなさい……

 

 

「今だ! ――汝のあるべき姿に戻れ。さくらカード!」

 

 鏡を持つ少女の姿がほどけ、札の形を成していく。

 やがてピンク色の札となった「(ミラー)」がアリーシャの手に舞い降りた。

 

「本当に鏡だったんだな……」

 

 すると、コタローが前触れなく拍手した。

 

「おめでとう。『(ミラー)』は正真正銘、君を選んだ。それはアリーのものだ」

「私の、もの。でもっ。これはコタローのお母様の」

「おれが帰郷する前に返してもらえればそれでいいよ」

「……すまない。では、拝借する」

 

 アリーシャは「(ミラー)」を大事に懐に収めた。




 ここで「鏡」が化ける偽物をスレイにするかアリーシャにするかとても悩みました。

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