CCさくら×テイルズ ~カードを求めて異世界へ~   作:あんだるしあ(活動終了)

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最初からわかってた

 アリーシャ・コタローと別れ、スレイらが次に向かったのは、ローランス帝国であった。

 

 道中でひやひやすることはいくつもあった。それらも転じてよい方向に向かったが。

 

 ローランスの皇都ペンドラゴで出会った憑魔――フォートン枢機卿についてだけは、笑ってすませられる事態ではなかった。

 導師の秘力について知れたのはよかったが、憑魔となったフォートンの領域にスレイは打ち負け、手も足も出なかった。

 

 そのような出来事があったから、スレイらは辺境のゴドジンという村を訪れた。

 

 秘力について記された石碑は、ローランス帝国教皇にしか読めない。その教皇がゴドジンにいるらしいとの情報がロゼからもたらされたのだ。

 

 ――ちなみにロゼ、それにデゼルとは、ローランスのラストンベルからの付き合いだ。

 検問に引っかかったスレイを、ロゼが「あたしの護衛」で通して弁護してくれたのだ。

 デゼルもまた、目的は措いて、陪神となってスレイに力を貸してくれることとなった。

 

 世の中にはいいも悪いもあるが、ローランス帝国領に入ってからの一連の出来事は、総じて「いい」になるのではないか――と言ったらミクリオに小言を食らうので黙っているが。

 

 とにかくゴドジンを訪れたスレイは、驚く人物に再会した。

 

 

「スレイ!」

「アリーシャ!? え、何で!?」

 

 見慣れた騎士姿のアリーシャに、スレイは一目散に駆け寄った。

 

「――、アリーシャ?」

「? 何だ?」

「いや……それで、どうしてこの村に?」

「さくらカードがこの村にあるんだ。それを追ってきた。実はコタローと洞窟の中ではぐれてしまって……困ってるんだ。私だけ出てきてしまって」

 

 彼女は両手でスレイの両手を取った。

 

「頼む。一緒に来てくれ。コタローを探してくれ」

 

 若草色を潤ませてスレイを見上げる、その目。

 スレイは助けを求めて後ろの仲間をふり返ったが、誰も助け舟は出してくれなかった。

 

「わかったよ。案内してくれる?」

「ああ。こっちだ」

「ちょ! 走らなくてもちゃんと行くって!」

「いってらー。あたしらはあたしらで上手くやるから~」

 

 スレイは彼女に手を引かれるまま、村人と話すこともなく村の奥に連れ込まれた。

 

 

 

 

 

 洞窟に入る時、近くにいた村人がぎょっとしていたが、アリーシャが離してくれなかったので、視線を気にしながらもそのまま洞窟に入ったスレイであった。

 

 暗闇の中なのに、彼女は迷いなく進む。スレイは手を引かれるまま付いて行く。

 

「まだ?」

「もっと奥」

「そうか」

 

 彼女は進む。スレイも手を引かれるまま進む。

 暗闇に目が慣れてきたのを見計らったように、手が離れた。

 

「この辺?」

「うん。そっち。そっちだよ」

 

 声で示されるまま進んでみると、足場が――消えた。え、と間抜けな声が上がった。

 

「う、わ、ああああああ!?」

 

 人一人分ほどある穴の下に、スレイは悲鳴を上げて落ちて行った。

 

 

 

 

 

「――大丈夫?」

 

 低い女声がスレイの意識を呼び覚ます。

 

「……オレは平気。君は?」

「私も大丈夫だ」

「じゃあ行こ……か……」

 

 立ち上がろうとして、スレイはその場に崩れ落ちた。

 足を痛めた。これでは動けない。

 

「……あのさ」

「何だ?」

「君、アリーシャじゃないよね」

 

 アリーシャ――の顔をした何者かは、大きく瞠目した。

 

「いつから」

「最初からわかってた。けど、アリーシャの顔で困ってるなんて言われたんじゃ、放っとくなんて、オレ、できない、か、ら」

 

 せっかく起きたのに、急速に意識が暗くなっていく。

 ごめん、ちょっと休ませて。

 そう言いたかったのに、それさえ言えずに、スレイは再び意識を失った。




 これもろ某カードと桃矢兄さんのやりとりですよね。
 できるだけカード捕獲のシーンは原作をオマージュする方針です。

 さて。穴に落ちたスレイ君の運命やいかに!?

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