CCさくら×テイルズ ~カードを求めて異世界へ~   作:あんだるしあ(活動終了)

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スレイの休息

「それからコタローが『(パワー)』で鉄格子をねじ曲げて、私たちは牢を脱走して、『(フロート)』で空を翔けてグレイブカント盆地に向かって、君が兵士に囲まれているのを見つけたんだ」

 

 長い長い激動の道行きに、スレイはただただ呆然とするしかなかった。

 

「アリーが導師さんを囲んだ兵士に『(ショット)』をすぐ使ったの、驚いたなあ」

「あれはスレイが危ないと思ったから」

「うん。それだけ導師さんが心配だったんだよね」

「そんなことが……ありがとう。アリーシャ。コタロー。大変だったのに、オレを助けに来てくれて」

「私が君を心配しないわけないじゃないか」

「アリーが大事なら、おれにとっても大事な人です」

 

 泣きそうだ。何故あの戦場で自分は独りなのだと思ったのだろう。スレイにはこんなに案じてくれる友人が二人もいたのに。

 

 

『スレイさんはご自分だけでなく、周りにいる人にも恵まれていますのね』

『お姫様に助けられる導師なんて。普通、男女逆だろ?』

『自分が助けられなかったからって嫉妬するのは見苦しいわよ』

 

 

 自身の中から聴こえた声に、スレイは思わず立ち上がっていた。

 

「みんな!」

『スレイ!? 元に戻ったのか』

 

 3人の天族が姿を現した。ミクリオ。ライラ。エドナ。あの戦場ではぐれたとばかり思っていた、大事な天族の友人たち。

 

「本当によかったですわ!」

「いなくなったのかと。すげー焦った!」

 

 と言いながら、自分の声が弾んでいるのをスレイは自覚していた。

 

「ミクリオ様! ライラ様! エドナ様! ご無事だったのですね」

 

 アリーシャもまた立ち上がり、スレイの横に並んだ。

 

「……誰、この子」

「あ~。ちょっと込み入った事情があって」

 

 スレイは事細かに「(チェンジ)」にまつわる騒動と、アリーシャがロゼの体を使っていることを伝えた。

 

「つまり今は『これ』がアリーシャなのね」

 

 エドナが畳んだ傘の尖端でびしっと、ロゼの姿をしたアリーシャを差した。

 

「事情は分かったけど、アリーシャ、僕らが視えるの?」

「え? あ、そういえば、どうしてでしょう。皆さんのお姿、はっきり視えます。お声も聴こえます」

「きっとそのロゼさんが霊応力の強い方なのでしょう。見た限りですが、素質だけなら神依も可能かと思われます」

「そっか。だから従士契約なしで認識できたんだ」

 

 スレイはぽん、と手を叩いた。

 

「で。肝心のアリーシャの体のほうは?」

「ロゼが使ってるっていうか入ってるっていうか……」

 

 聞くところによれば、ロゼはオカルトやホラーが大の苦手なのだとか。そのせいで、アリーシャの体になった自分を持て余してひどく沈んでいるらしい。

 

 コタローが軽くスレイの腕に触れた。

 

「ロゼさんには、アリーがこの状態で動き回ることの了承を得てます。もし遺跡探検したいならしてもいいって」

「遺跡探検か。久々だな」

 

 ミクリオが一番にコタローの提案に乗った。

 

「でも、災禍の顕主を放っとくなんて」

「だめだ。今の君には休息が必要だ」

「導師としての、ね。僕もアリーシャに賛成」

 

 結局は多数決で負け、スレイらは奥の遺跡の探索へ向かうこととなった。


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