CCさくら×テイルズ ~カードを求めて異世界へ~   作:あんだるしあ(活動終了)

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「雪」降る神殿

「わあ……っ」

 

 アリーシャが感嘆の声を上げた。

 雪、だ。巨大な空洞の遺跡の中に、ゆったりと雪が舞い下りてきているのだ。

 

「きれい……」

「うん……」

 

 コタローとアリーシャはしばし、その幻想的な風景に見惚れた。

 

 我に返ったのは、大空洞の中心にある泉が水を打ったからだ。

 コタローは星の鈴を、アリーシャは槍を構えた。

 

 やがて波打っていた泉の水が浮かび上がり、空中に固定された。

 

「文字……? 『お前たちの知り合いか?』」

 

 この世界の文字が充分に読めないコタローに代わり、アリーシャが水の文字を読んでくれた。

 

「あなたこそ何なんです」

「『私は護法天族アウトル』!? 天族の方!?」

「知り合いって、誰と誰が」

 

 水の文字が形を変える。

 

「『この雪を降らせる者だ』」

「知り合いです。おれたち、この雪を探しにここに来たんです」

 

 また水の文字が、少し長い文を宙に描く。

 

「『弱っていたので我が領域にて保護していた。雪が神殿を埋め尽くす前に連れ帰ってはくれまいか』って」

「わかりました。――『(スノウ)』!」

 

 雪を降らせるカードなどその一枚しか心当たりがなかったので、その名で呼んだ。

 

 泉の上に雪が集まり、着物を着た白い女の姿となった。

 

 星の鈴を掲げる。

 

「汝のあるべき姿に戻れ、さくらカード!」

 

 星の鈴の前でピンクのカードが形作られていく。絵柄には先ほどの白い雪女。封印成功だ。

 

 

 アリーシャが槍を下ろし、泉の前まで行って跪いた。

 

「天族アウトル様。我が友の大切な品をお守りいただき、ありがとうございます」

 

 コタローも慌ててアリーシャの横へ行き、石畳に正座して頭を下げた。

 

「本当にありがとうございます。母の大事な友達なんです」

 

 泉から水が浮かび、また文字を浮かび上がらせた。

 

「『用が済んだなら早々に去るがよい。本来ここは導師とその主神・陪神のみが来るべき場所だ』……スレイたちが。ならば確かにここにいるわけにはいかない」

「うん。また従士になってから来よう」

 

 コタローとアリーシャは同時に立ち上がった。

 

「ではアウトル様、失礼いたします」

「ありがとうございました、アウトルさん」

 

 二人して会釈し、彼らは水だけになった大空洞を後にした。

 

 

 

 

 

 再び「(スルー)」で滝を越えて、アリーシャらは川岸に戻って靴を履き直した。

 

「あー、生き返る。ほんっと寒かった~」

「ああ。川の水がぬるま湯に思えるくらいだ」

 

 コタローはしばし「(スノウ)」のカードを見下ろしていたかと思うと、アリーシャに差し出した。

 

「使ってみない?」

「……いいの?」

「大丈夫。できる。言ったろ? その槍には星の鈴(こいつ)と同じ力が宿ってるって」

 

 アリーシャは恐る恐る「(スノウ)」のカードを受け取り、槍を持って立ち上がった。

 

「槍の穂先をカードに立てて」

「あ、ああ。――力を……お貸し、いただけますか?」

 

 「(スノウ)」のカードが一人でに浮かび上がり、アリーシャの正面で止まった。

 アリーシャは槍の刃でカードを小さく突いた。

 

「降り注ぎ煌け。『(スノウ)』」

 

 大気に変化が起きる。キラキラと煌く極小の粒が、辺りに降り始めたのだ。まるで光が固体化して降ってきているようで、見惚れた。

 

「ダイヤモンドダストだ」

「ダイヤモンド、ダスト?」

「雪よりもっと小さな氷の結晶が降る自然現象だよ。すごいな。きっとおれじゃこうはできない。カードへのアリーの気持ちがちゃんと届いたんだ」

「私の気持ち、が」

 

 戻って来た「(スノウ)」のカードを、アリーシャは宝物のように抱き締めた。

 

 どこでどう訴えても上滑りするだけだった、アリーシャの心。それが、初めて、他者に届き、こんなすばらしい贈り物となって返って来た。

 

「――ありがとう――」

 

 アリーシャはコタローと共に、いつまでも、舞い降る氷の結晶を眺めていた。




 封印はできませんが、カード魔法がアリーシャにも使えるようになりました。
 でもここからが鬱展開なんですよね。原作だと特にスレイにとって。
 まあ鬱なのも嫌いじゃありませんが。

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