CCさくら×テイルズ ~カードを求めて異世界へ~   作:あんだるしあ(活動終了)

21 / 180
母の夢

 マーリンドの街を出てグリフレット橋を渡る。そうすればレディレイクまではすぐだ。

 

「よく言えたね、アリー。えらかったよ」

 

 コタローが立ち止まってアリーシャをふり返ると、アリーシャはきょとんとした。

 

「何が」

「導師さんとのお別れ」

「別に一生の別れでもないし。スレイは追いかけていいと言ってくれた。だから」

 

 確かに「魔法使いにならないか」と持ちかけたのはコタローだ。だが、答えたのはアリーシャのほうであった。

 昨夜、アリーシャはコタローの手を逆に握り返し、「君の弟子にしてくれ!」と訴えたのだ。

 コタローは忘れていた。アリーシャは前向きな女の子なのだと。

 

「だから、寂しくても、いつか会える日を信じて、がんばるんだ」

 

 コタローはアリーシャの頭を二度、優しく叩いた。アリーシャが泣きそうに見えて。

 

「――始めようか」

「ああ。頼む」

 

 コタローは星の鈴と、「(ツイン)」のカードを取り出した。この「(ツイン)」は散逸せず封印の書に残っていたカードだ。

 

「星の力を秘めし鈴を双つに分けよ。『(ツイン)』」

 

 かざした星の鈴がコタローの手を離れる。テレビ画面の砂嵐のように、宙に浮いた鈴の像がぶれ、ゆっくりと左右に割れていく。どちらも同じ星の鈴だ。

 

 二つになって降ってきた星の鈴を、コタローは両手でキャッチした。

 

「アリー。槍、出して」

 

 アリーシャが槍を差し出した。コタローは槍に、星の鈴の片方を当てた。

 

「――星の力を秘めし鈴よ、その身を魔力へ還元し、かの槍に宿れ」

 

 すると星の鈴は水銀のように溶け、槍の石附から穂先を覆って、槍身全体に染み込んだ。

 

 アリーシャは、特に外見に変化はない槍を、矯めつ眇めつしている。

 

「これで槍を媒介にカードを使えるようになった。封印はおれにしかできないままだけど。カードたちと一緒に頑張れば、アリーの霊応力もきっと上がる」

「不思議……見た目は変わらないのに、見ていると胸が躍るような」

「星のきらめきが魔力の源だからじゃない?」

「そうか。この槍には今、星々が宿っているんだね」

 

 アリーシャは大切そうに槍を抱き締めた。

 

「アリーの準備も整ったことだし、カード探し、始めようか」

「ああっ」

 

 

 コタローは羅針盤を取り出し、展開した。

 

 羅針盤から光の線が伸びる。

 

「この方角は……レイクピロー高地だな」

「どこ?」

 

 アリーシャはしゃがむと、地面に石ころで簡単な地図を書いて説明してくれた。

 

「ガラハド遺跡があった一帯だよ。ここからだと北へ進めば出られる」

「なるほど。じゃあ、行ってみようか。今度はどのカードかな」

 

 

 

 

 

 フォルクエン丘陵を抜け、レイクピロー高地の半分を、彼らは1日で進んだ。アリーシャの歩調が速かったのだ。きっと早くスレイの下へ戻りたくてしようがないのだと察せられた。

 もっとも、ショートカットしたくて岩を超えるために「(フロート)」を使ったコタローも、人のことは言えない。

 

 ちょうどガハラド遺跡に近づいたところで日が沈みそうだったので、コタローらは適当な木の下で野営することにした。

 

 …………

 

 ……

 

 …

 

 

 ――がんばってるね。

 

 

 懐かしい声がしたが、目を開けられない。

 

 

(そんなことないよ。おれはみんなに乗っかってここまで来ただけ)

 

 

 ――いいえ。あなたがカードさんたちを封印することで、力づけられてる人がいるじゃない。

 

 

(アリーのこと? それはアリーが元々持ってる強さで)

 

 

 ――ひとりぼっちで強い人なんて、いないよ。

 

 

 胸の上に、あたたかい掌の感触があった。

 

 

 ――これは、がんばったごほうび。明日からもどうか健やかに。虎太郎。

 

 

(うん。ありがとう――お母さん)




 ついにさくらちゃんが夢の中ですが本編INしました。
 CCさくら版のさくらちゃんも夢で不思議なことができるような描写でしたので、こんな感じにしてみました。四月一日がやったのと同じ夢渡りです。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。