CCさくら×テイルズ ~カードを求めて異世界へ~   作:あんだるしあ(活動終了)

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vsドラゴンパピー

 閉鎖されたダムノニア美術館でノルミン天族のアタックと会った時、コタローが真っ先に思い出したのは、母のしもべ(母本人は友達と言っていたが)の片割れ、太陽の獣ケルベロスだった。

 

(ケルベロスさんも仮の姿の時はこんな感じのノリだったなあ)

 

 ちなみに、コタローはアタックとの意思疎通のため、スレイの肩に手を置かせてもらっている。いい加減、男同士で手を繋ぐのにうんざりしたのだ。

 

 当のアタックは、ライラに飛びつこうとして、さりげなくライラに避けられた。

 

(あ。これは母上とケルベロスさんにはなかった関係)

 

 

『ケロちゃ~ん』

『おうっ。どないした、さくら』

 

 

 仲睦まじい母と太陽の獣を思い出したコタローの胸を、郷愁が締めつけた。

 それを振り払うために、コタローは質問を口にした。

 

「ノルミン天族は分かりましたけど、それがどうして憑魔化して美術館なんかに?」

 

 するとアタックは間を置き、

 

「思い出した……ウチや……ウチが壊したんやな、大事な大事な宝もんを……うわ~~~~ん!」

 

 いきなり下から泣かれては、姿が視えずともコタローでも驚く。

 

 アタックは嗚咽混じりに語ってくれた。人間の芸術が大好きで美術館に棲みついたこと、国同士の戦争で美術品が利用されたこと、美術品の横流しをした人間の言葉と態度が許せず憑魔化したこと――

 

(そういえば、『(ダッシュ)』が助けてくれた女の子に、カードの力を貸したことがあるって、父上、言ったっけ。人外って、人みたいに感情が複雑に出来てないから、純粋な気持ちには純粋な心で応えちゃうんだよな)

 

 コートの上から、内ポケットに入ったさくらカードを押さえた。

 

 彼らもまた、仮の主であるコタローには従順だ。だからこそ、この絶大な力の使い方を誤ってはならない。

 

 改めて心定め、コタローは街へ再びくり出すアリーシャとスレイに続いた。

 

 

 

 

 

 街中にいる憑魔、ハウンドドッグをかなり減らしたことで、スレイがついにドラゴンパピーとの決着に踏み切ると宣言した。

 

 エドナがアタックを連れてきてくれたので、ドラゴンパピーを撃ち落とす手も見つかった。

 

 そして夜。彼らは決行した。

 

 

 雲が流れる満月の空を見上げ、コタローは星の鈴と「(クラウド)」のカードを取り出した。

 

「雲を払います。後はお願いします」

 

 コタローが見上げた先は、無人の民家。おそらく住人は感染して聖堂にいるので無人なのだろう。

 その屋根に上にスレイと、話によればミクリオとアタックは、いる。

 

「木之本桜の創りしカードよ、その魔力を鈴に移し、我に力を。『(クラウド)』」

 

 ふわっとした綿菓子のような童女の姿をした「(クラウド)」が現れた。

 

「この広場の上の雲を全て払ってくれ」

 

 「(クラウド)」は肯き、上空へと舞い上がった。そして、くるりと一回転。それだけで、広場の上の雲は綺麗に消え去った。

 戻ってきた「(クラウド)」は、コタローの手の中でカードに戻った。

 

 青い神依をまとったスレイが、巨大な青い弓に矢を番え、空に向ける。

 

「今だ!」

 

 コタローにも感じられるほどの霊力を込めた矢が、空へ放たれた。

 矢は見事、ドラゴンパピーを射た。

 

 ドラゴンパピーが広場に落ちてきた。

 

「ここからが本番だ!」

 

 屋根から飛び降りてきたスレイ、そして槍を持つアリーシャに続き、コタローもドラゴンパピーの前へと走った。




 アタックを見た時、「あ、これケロちゃん」と思ったのは自分だけでないと信じたいあんだるしあです。

 コタローは律儀にケロちゃんを「ケルベロスさん」と呼びます。
 もう一人、コタローの双子の兄も「ケロちゃん」とは呼ばないのですが、それはまた別の機会に(*^_^*)

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