CCさくら×テイルズ ~カードを求めて異世界へ~ 作:あんだるしあ(活動終了)
信者の一人が腕を一振り。すると衝撃波が岩床を抉りながら、アンジュへと向かった。
「ホーニャン、
「わかった!」
ホーニャンはアンジュの前に出て、地面に落ちていた小石を蹴り上げつつ、
小石は
その隙にアンジュが詠唱を完成させた。
「明澄なる光よ、罪深きものに裁きを! レイ!」
高く灯った光球から光線が男たちに降り注いだ。
なのに、信者たちは服こそ焦げたものの、一切のダメージなく健在だった。アンジュの攻撃が効いていなかった。
「見たか! ディセンダー様のご加護を。搾取のない、平等で平和な世界の望んでいる者たちのためにも――」
「ディセンダー様を、お前たちに渡すわけには行かない!」
もう一人の信者が拳に波動を乗せて殴りかかってきた。
これに対しては、ジェイドが出て、信者の腕を上手く躱して懐に入るなり、相手の顔面に強烈なチョップをお見舞いした。
顔面を攻撃されると、痛み以上に混乱してすぐ戦線復帰できないのが人間の心理だ。ジェイドは上手いことそこを突いている。
信者の両方ともが同時に足を止めた――チャンスだ!
「ホーニャン、帽子や!」
「! そういうことね、
ホーニャンは再び星のロッドで
巨大化させる対象は、信者たちが揃って被っている帽子だ。
ぼむっ、ぼむっ、ぼむっ!
帽子は人一人なら軽く覆い隠してしまえる程度に巨大化した。
自重で落ちた巨大帽子は見事持ち主の上に落ちて、信者たちを封じ込めた。
「
「油断しちゃだめよ」
ぴしゃり、と。まだ構えを解いていないアンジュに言われて、ホーニャンも星のロッドを握り直した。
ふと、気づく。
二つの巨大帽子の中からドライアイスの煙に似たもやが漂い出ている。
「これって」
「赤い煙やないけ!?」
ホーニャンはすぐさま
中かから出てきたのは信者たちだったが、その姿は――見るもおぞましい魔物に成り果てていた。
「まさか……生物変化現象!?」
「あ、あたしじゃないよ!」
「大丈夫よ、分かってるから」
異形化した信者たちは悲鳴を上げて遺跡の奥へと一目散に逃げて行った。
後ろから追い打ちをかけることは、ホーニャンたちにはできなかった。
「わたしたちや、多くの人たちと同じように、彼らも平等な世界の理想を持っているのに、世界はバラバラで、人々の想いは……かみ合わない」
「仮にディセンダーが存在したとして、この世界を見たら、どう思うでしょうね?」
「見たって、失望とか幻滅とかしないよっ! だってアンジュさんが、ジェイドさんが、みんなが、がんばってるんだもん」
アンジュはホーニャンの言葉を聞いて、少し寂しげな笑みを浮かべた。
「彼らを追いましょう。この奥にいるモノの正体を確かめるためにも」
ホーニャンは息を呑んで星のロッドを両手できつく握った。
「そう緊張しなや」
「ケロちゃん」
「『絶対、大丈夫』やろ? わいもアンジュねーちゃんらも付いとる」
「……うん」
歩き出しながらも、嫌な予感が拭えなかった。危険があるという以上に、この先に進むことに不安を覚えずにいられなかったのだ。
そんなもやもやとした気分から我に返ったのは、先を歩いていたアンジュたちが立ち止まったからだ。
ホーニャンもその光景を見て――立ち尽くした。