CCさくら×テイルズ ~カードを求めて異世界へ~   作:あんだるしあ(活動終了)

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明るみにされる“配役” ①

 今日、ライマ国という中小王国の王女とその同行者2名が、アドリビトムを訪ねてきた。

 

「エステル姫さんの時思い出すなあ」

「ねー」

 

 話を聞く場に同席していい、とアンジュが言ったので、ホーニャンはケルベロスともども、その訪問者――ナタリア、ジェイド、ティアの事情を聞く場に向かった。

 

「っと、この部屋だ。――失礼しまーす」

 

 ドアを開ければ、アンジュと、ホールでちらりと見ただけの3人の男女。女性二人の年齢は兄姉たちと変わらないと思われるのに、兄姉たちよりずっと大人びていた。

 

「――で暴動が起こりましてね。“暁の従者”という宗教団体の扇動によるものです」

「暁の従者!」

「あのディセンダーもどき奪ってった連中かいな」

 

 ――少し前にティトレイ、メルディと行ったクエストで、ホーニャンたちは赤い煙を発見した。いや、その時の「それ」は煙ではなく、人体模型をのっぺりしたようなヒト型を取っていた。

 ホーニャンたちは赤いヒトガタを連れ帰ろうとしたのだが、赤いヒトガタをディセンダーだと思い込んだ“暁の従者”に邪魔された。

 

 入ってすぐ大声を上げたホーニャンに、アンジュや客人たちの目が向いた。

 

「彼女は?」

「はい。紹介しますね。――いらっしゃい」

 

 ホーニャンが部屋に入ると、アンジュはホーニャンの両肩に後ろから両手を置いた。

 

「この子はホーニャン。こちらはこの子のパートナーのケルベロス。我がアドリビトムの中でも特に率先して、大きな仕事をいくつも請け負って、完遂してくれる働き者のメンバーです」

「ホーニャン・リーです。よろしく、お願いします」

「ケルベロスや。よろしゅうな」

 

 そこでふとホーニャンは気づいた。

 長髪で右目を隠した女性が、妙に潤んだ左目でケルベロスを見つめている。頬も朱が射している。

 

「あの、お熱でもあるんですか?」

「っ、な、なんでもないわ」

 

 彼女はしきりに髪をいじりながらそっぽを向いた。

 

「話を続けても?」

「ええ。お願いします」

「――“暁の従者”の信者たちは皆、人を超えた異様な力を持っていました。民は信者に煽られてしまい、城を攻め落とそうと……」

「そういえば、ディセンダーが降臨したと言っていましたね」

 

 ホーニャンは根拠もなく直感した。「人を超えた異様な力」を与えたのはあの赤い存在に違いない。そして、国の象徴たる王族への畏敬を忘れたことについては、ヒトの心の奥底に、赤い存在が関係ない純然たる敵意があったからだろうとも。

 

「暴動の時、彼らはそのディセンダーと呼ばれるモノを連れていたの?」

「そこまでは確認していません」

「そうですか……でも、小さな宗教団体が、大きな力を手に入れ、一つの国を没落寸前に追い込むなんて。考えられない事態よ」

「アルマナック遺跡に拠点があるという情報までは掴んだのですが、いかんせん、我々には反撃に転じるだけの武力も士気もない。だからこうしてあなた方に匿ってもらおうと訪ねたのです」

「アルマナック遺跡……」

 

 くるん。アンジュがホーニャンたちをふり返った。

 

「どうする? 赤い煙関係の依頼で、あなたは一度倒れてる。それでもまだ赤い煙――いえ、あの“願いを叶える存在”を追いたい?」

 

 ホーニャンは薄羽の髪留めに一度手をやり、静かに肯いた。

 

「ホーニャン」

「大丈夫、ケロちゃん。今度は『戻』(リターン)のカードは使わない……ように、気をつける」

「――しゃあない子やなあ。ほんま。父親と母親、どっちに似たんやか」

 

 なでなで。ケルベロスはホーニャンの肩に立って、小さな手でホーニャンを撫でた。




 ティアだったらケロちゃんに反応してもおかしくない……よね?

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