CCさくら×テイルズ ~カードを求めて異世界へ~   作:あんだるしあ(活動終了)

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クィッキーとエステルと「歌」

 ある日。ホールに出ると、エステルが緊張した様子でしゃがみ込み、水色の毛並みの生き物に話しかけていた。

 

「えっと、こ、こんにちは。自己紹介がまだでしたね」

「クィ?」

「わたしは、エステリーゼと申します。趣味は読書をすることで……あ」

 

 水色の生き物はエステルが全てを言い終える前に走って行った。その先にはメルディがいて、その生き物はメルディの肩に登った。

 

「もしかしてクィッキーと仲良くなりたいんですか?」

 

 エステルは明らかな照れを浮かべ、肯いた。

 

「ならメルディ、いい方法知ってるよ。クィッキーな、歌好きだよ。だから歌聴かせるといいな」

「歌……ですか」

 

 エステルがしょぼんとしたのがホーニャンにもわかった。

 

「歌の魔法、あたし、持ってますよ」

「本当ですか!? ぜひお願いします!」

 

 ホーニャンは星のロッドを封印解除(レリーズ)し、『歌』(ソング)のさくらカードを叩いた。

 

「奏でよ、歓喜の調べ。『歌』(ソング)

 

 音符の髪留めをした女が、魔力によって形成された。

 

「わあ…っ」

「ワイール! 美人さんだよ~」

 

 『歌』(ソング)は笑顔で歌い始める。元になった歌は、母の親友の小学生時代の曲だ。

 

“~♪ ~~♪”

 

 クィッキーが耳をぴくぴくと動かし、メルディから離れた。成功だ。これでクィッキーはエステルのもとへ行く――と思わせて、クィッキーが向かったのは『歌』(ソング)そのものだった。

 

 『歌』(ソング)は笑って、クィッキーに体を登られるままにして歌い続けている。

 

「……『歌』(ソング)、もういいよ」

 

 『歌』(ソング)がカードに戻った。そのことで、『歌』(ソング)と戯れていたクィッキーは床にぽてっと落ちた。

 

 エステルを見やる。クィッキーを取られてさぞ嫌な気分にさせただろう……と、思いきや。

 

「わたし、諦めません。『(ソング)』さんのようになれるよう、今日から特訓です!」

 

 エステルは拳を握って宣言したかと思うと、船倉に走って行った。

 

「ここに来てからよう思うんやけど、ここの奴ら、カード不気味がる奴おらんな」

「確かに、少ないね。みんな最初はびっくりするけど。人が好い人ばっか、ってことかな」

「ええことやんけ。ホーニャン、これからはクエストでもばんばん魔法使うたり。わいもばんばん真の姿に戻って『キャーステキー!』とか言われたる!」

「ユージーンさんには勝てないと思うよ」

「わいかて真の姿やったら張り合えるわい!」

「仮の姿での負けは認めるんだね……」

 

 仮の姿であっても「わいはかっこええ」路線のケルベロスにしては珍しくて、ホーニャンは苦笑を抑えられなかった。

 

「ロックスとわいやったらわいのほうがええやろ!?」

「それはない。かっこよさならロックスのが、あたしはいいな」

 

 ケルベロスが暗い影を背負って肩を落とした。


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