CCさくら×テイルズ ~カードを求めて異世界へ~   作:あんだるしあ(活動終了)

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“ディセンダー”

 入隊試験に無事合格し、ホーニャンは正式にギルド“アドリビドム”の一員となった。

 

 ホーニャンとケルベロスが、表向きは依頼を理由に、さくらカードを探してバンエルティア号を降りることが増えた。

 

 

 そんな日々の中の1日だった。

 ホールに帰艦したホーニャンを、ルビアとウィルとミントが囲んだ。

 

「ねえ、あなたって空からやって来たって、本当?」

 

 一番にルビアがホーニャンに詰め寄った。

 

「ど、どーだったかなー」

「でも、本当なんだもん。光に包まれて、空から降りて来たの」

 

 カノンノが話題に加わった。

 

「そんなこと、簡単には信じられないわ」

「真実であるかどうかは別としても、素敵なお話だと思いますよ。世界樹が光を放った日に空から降りてきたなんて、まるでディセンダーのようですね」

「ディセンダー?」

「そう。あたしやミントさんのいた教会には“救世主”の言い伝えがあるの。世界に危機が訪れた時、世界樹が生み出す存在」

「遠い昔から、教会に伝わる“予言”です。人々のために世界を学び、強くなり、ゆくゆくは世界を平和に導き、また世界樹へと帰っていくそうです」

「だが、彼女がディセンダーかどうかの真偽はわからない。予言で伝えられているだけだからな。そもそも、その予言自体の真偽すら、誰にもわからない。だがかく言うオレも、世界樹が光ったのを見た時、真っ先に予言の話を思い出したからな」

 

 このままここにいると、本当に「ディセンダー(救世主)」として祭り上げられる気がした。

 

「え、えーっと。あ、あたし、もう1件依頼があったんだった! そっち行ってくる」

 

 

 

 

 

 ホーニャンは急いでケルベロスと共に再び船を降り、つい先ほどまで潜っていたブラウニー坑道へと走った。

 

不是玩笑(じょうだんじゃない)。世界を救うなんて大役、こっちから願い下げ。あたしのやるべきことは、ルミナシアに散ったお母さんのさくらカードを全て封印して、持って帰ることなんだから)

 

 

 ――ギルドに入隊したばかりの頃、アンジュからこの世界の情勢について聞いた。

 

 ルミナシア。世界中で、エネルギー資源である星晶(ホスチア)を巡って、大国同士の争いが起きている世界。

 星晶(ホスチア)があるとされる小さな国や村は、力のある大国にそれを搾取されるがまま。

 星晶(ホスチア)にはマナを出す力があり、採掘され尽くしたら、土地は荒れ、作物は育たない不毛の地になる。

 

 

(その辺は、あたしみたいなイレギュラーじゃなくて、本物のディセンダーにがんばってもらいましょ)

 

 ホーニャンが坑道に足を踏み入れようとした時だった。

 

「ホーニャン!」

 

 自分を呼ぶ声にふり返ると、カノンノがホーニャンの前に走って来たところだった。

 

「どうしたの」

「ん、あのね、さっきホーニャン、様子が変だったから。気になっちゃって。みんながごめんね。悪気はないんだよ」

 

 ホーニャンはケルベロスと顔を見合わせた。

 

「わざわざ言いに来てくれたの?」

 

 カノンノは、えへ、と笑って、一枚の紙を差し出した。

 

「依頼書。忘れてったでしょ。あそこから逃げようとしたの、みんなにもバレバレだったよ」

「は、はぅ」

 

 今すぐ穴を掘って入りたい気持ちを堪えつつ、カノンノから依頼書を受け取った。

 

「魔物はもう退治して来たんでしょう?」

 

 ホーニャンは肯いた。どう倒したかというと、『花』(フラワー)で魔物を酩酊させる種の花を撒き散らし、魔物の動きが鈍ったところを、李家伝来の魔法符を使って燃やしたり雷撃を落としたりした。

 

「そうだと思った。だから退治じゃなくて採掘の依頼、アンジュさんから貰って来たんだ」

 

 採掘とは、書いて字の如く鉱物や宝石などのアイテムを各地から採って来る仕事である。

 

「わたしも一緒に行っていい?」

「いいよ。カノンノがそうしてくれるなら」

 

 ホーニャンとカノンノは並んで薄暗い坑道を歩き始めた。


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