CCさくら×テイルズ ~カードを求めて異世界へ~ 作:あんだるしあ(活動終了)
ホーニャンとケルベロス、カノンノは、花びらの山を避け、橋を渡り切った。
「ホーニャンは花を操って戦うんだね」
「うーんと。花以外にも、この子たちに手伝ってもらったらもっと色々できるよ、きっと」
ホーニャンはレッグホルダーからさくらカードの束を取り出してカノンノに見せ、また戻した。
「この先に行けばいいの?」
「うん。船に乗ったら、希望する場所へ運んでもらえるよう、アンジュさんに伝えるから――あ! 船が来たよ」
辺り一帯に影が差した。ホーニャンは見上げ、ケルベロスともどもぽかーんと大口を上げた。
でかい。超ど級にでかい。
船の形をしてはいるが、空を飛んでいる。これがジャパニメーションによく見る「空飛ぶ船」というやつか。
その空飛ぶ船――空中戦艦バンエルティア号に、カノンノに続くまま、ケルベロスを肩に乗せてホーニャンも船に入った。
カノンノに案内されたのは、小洒落たデザインのエントランスホールだった。
ホールにいる人間は、カウンターに上品そうな青毛のシスターが一人。
「お疲れ様、カノンノ。ペカン村の人たちの移民は無事に済んだよ。ところで、そこの女の子は?」
青毛のシスターはホーニャンに目を向けた。
「彼女とは、ルパーブ連山で会って」
「じゃあまずは自己紹介からね。わたしはアンジュ・セレーナ。あなたの話を聞いてもいいかな?」
「ホーニャン・リーです。この子はケルベロスのケロちゃん。遠いとこから来てて、どこへ行くかは、決めてないです」
「行く宛てがないの? もしかして……家出?」
「ち、ちがいます! ちゃんと父と母の言いつけで、ちょっと『探し物』をしに来たんです! ただ、来たばっかでこの世界のこと、わかんなくて」
「あのね、アンジュさん」
カノンノが、山でホーニャンが魔物を避けるために使った魔法について、アンジュに話した。
「そうねえ。知識の少ない女の子を、ここまで聞いといて放り出すのはいいことじゃないか。話を聞く限り、戦力になってくれそうだし。あなた、ここで働いてみない? 衣食住は保証するわよ」
「いいんですか?」
異世界に降り立って1時間と経たずに拠点が確保できてしまいそうな気配だ。
「(ケロちゃん、どうしよ)」
「(受け取ったらええ。悪い組織やったら夜逃げでも何でもすりゃええ。わいが責任持って守ったる。さくらにもそう約束したからな)」
ホーニャンはアンジュとカノンノに向き直った。
「それじゃあ……お願いします」
「そうこなくっちゃ。それじゃあ今から、あなたをギルド“アドリビドム”の一員として迎えるね」
アンジュはカウンターから何かの紐綴じ書類の束を出し、羽根ペンでさらさらと何かを書きつけ始めた。
「まずはみんなに挨拶に行こう。わたしも付いてってあげる。あ。あとこれ、艦内見取図だよ」
「色々ありがとね」
「おおきにな、カノンノ嬢ちゃん」
「はー、つっかれたー」
ホーニャンは宛がわれた船倉の部屋に入るなり、リボンハイヒールを脱ぎ捨ててベッドにタイブした。
「こら。行儀悪いで」
「だってえ。色んな人とたくさん会って気疲れしちゃったんだもん」
医務室のアニー。アンジュの教会仲間のミント、フィリア、ルビア。ルビアの幼なじみのカイウス。アンジュと同郷のエミルとマルタ。フィリアの友人のスタンとルーティ。
厨房を任されているクレアとリリス。不思議な青い生き物のロックス。クレアと同じ村出身のヴェイグ。
傭兵のクラトス。
訳あって故郷の村を出たルカとイリア。
村を助けてもらった恩返しに参加したコハクとシング。
元マリントルーパーのセネルと、その妹シャーリィ。
猟師のリッドと、彼の幼なじみのファラ。
研究室の博物学者ウィル。
このバンエルティア号の持ち主で、船長だと名乗ったチャット。
「明日は本番か~」
足をぷらぷらさせながら、アンジュの言いつけを思い出した。
――“まずは簡単な仕事を用意するから、見習いから始めてもらおうかな。というわけで、最初はカノンノを同行者にして、仕事のやり方を学んでね”――
「あのアンジュっちゅうねーちゃん、結構グイグイ物事進めるタチみたいやな」
寝転がったホーニャンは前髪の、星と薄羽の髪留めを外し、真上にかざした。
――これがホーニャンの封印具。展開した星のロッドでカードを打つことで、ホーニャンはさくらカードを封印し、または使役する。
そして、みつあみの飾りの碧玉。これが元いた次元に帰る時に使うブースター。
「ねー、ケロちゃん。あたしの魔法、この世界でどこまで通用するかな」
「なんとかなるて。いざっちゅー時はわいが真の姿になって、
「その時はお願い。さてっと、お風呂入って寝よーっと」