CCさくら×テイルズ ~カードを求めて異世界へ~   作:あんだるしあ(活動終了)

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紅娘/マイソロジー3編
追想曲と魔女っ子


 世界樹の恩恵によって人々が暮らす世界、“ルミナシア”。

 世界樹が生み出したとされる“マナ”と“星晶(ホスチア)”。

 

 人々は星晶(ホスチア)をエネルギー資源とし、目覚ましく発展していった。

 やがて大国は星晶(ホスチア)の保有を求め、各地で戦いが繰り返されるようになった。

 混迷していく世界――

 閉塞した時代の中、人々は一人の救世主を待ち望んでいた。

 

 世界樹の守り手・ディセンダー。

 太古より予言されていたそれは世界樹によって生まれ、世界を守護するために現れる――はずだった。

 

 そのディセンダーは過去の履歴を持っていた。

 そのディセンダーは不可能に挫け、恐れに震え、己が卑小な人間だと諦観していた。

 それでも「それ」は「ディセンダー」だった。

 挫け、震え、諦観しても、「ディセンダー」であろうとした。

 

 …………

 

 ……

 

 …

 

 カノンノ・グラスバレーはルパーブ連山を歩いていた。

 ギルドのクエストを無事達成し、あとは迎えの空中戦艦が来るポイントに行けばいいだけ。いつもと変わらない一日になるはずだった。

 

 すると、夜でもないのに、眩しい光の一条が空を駆け抜けた。

 光の正体を確かめたくて、カノンノは光を追った。

 

(迎えまでまだ時間があるから、寄り道しても大丈夫だよね)

 

 カノンノが光が落ちた地点に着いた時、――光は一点に集まり、真紅の(しずく)を零していた。

 中心には、胎児のように丸まった女の子。その女の子がゆっくりと光から出て下りてくる。

 

 カノンノは両手を広げて女の子を抱き留めた。なぜか、ずっと別れていた片割れとようやく巡り会った気がして、腕を伸ばさずにいられなかったのだ。

 

 カノンノと近い年頃らしき面差し。真紅のミニスカワンピースに、胸から上と二の腕はリボンを格子状に絡めて衣服としている。カノンノの服装にどこか似ている。ワンサイドでみつあみにした栗毛はカノンノと同じ髪型だが、カノンノより長いし、碧玉の飾りがみつあみの先端に着いていた。

 

 女の子の両手にはしかと、オレンジ色のぬいぐるみを抱いている。ぬいぐるみのほうは、カノンノの執事で育て親でもあるロックスを彷彿とさせた。

 

 カノンノは女の子を慎重に地面に横たえ、肩を叩いて目覚めを促してみる。

 

「しっかりして。起きて」

「ん……」

 

 女の子は虚ろな琥珀色の目を開け、2、3回瞬いてから、ゆっくりと体を起こした。

 起きたのは女の子だけではない。彼女に抱えられていたぬいぐるみもまた、大きな伸びをしながらあくびをした。

 

「ん~、着いたんかあ?」

「わかんない。――ねえ。ここってルミナシア?」

 

 女の子はカノンノに尋ねた。

 

「うん、そうだよ。空から降りてきたんだもん。すっごく驚いたよ。あれは何かの魔術なの?」

「魔術といえば魔術なんだけど、『ここ』の魔術とはちょっとちがうんじゃないかなあ」

「どういうこと?」

 

 答えたのはぬいぐるみ――のような姿をした生き物のほうだ。

 

「この子は『魔法使い』。正確には魔術やのうて魔法を使うんや」

 

 魔法。耳慣れない単語にカノンノは首を傾げたが、深く追及はせず、気を取り直して立ち上がった。

 

「とにかく気が付いてよかった。ここは魔物が多くて危ないから。――わたしはカノンノ。カノンノ・グラスバレー。あなたは?」

 

 女の子は、カノンノが伸べた手に掴まって、立ち上がった。

 

「あたし、ホーニャン・リー。そんでこっちの、今肩に乗ったのが」

「わいはケルベロスや。よろしゅうな、親切なお嬢ちゃん」

「ホーニャンにケルベロスね。よろしく」

 

 カノンノはホーニャンたちを、自分のギルドの拠点である艦に案内すると告げて歩き出した。ホーニャンは素直に後を付いて来た。

 

 

 しばらく行くと、橋を渡るのを邪魔するように、オタマジャクシ型の魔物、オタオタがいた。

 

「あっちゃあ。通してくれそうにないなあ」

 

 するとホーニャンがカノンノの前に出た。

 

「下がってて」

「ホーニャン?」

「助けてくれたお礼に見せてあげる。あたしの『魔法』」

 

 ホーニャンはおもむろに前髪を留めていた星と薄羽の髪留めを外し、掲げた。

 

 

 

 

 

 ――魔力、この世界においては“マナ”と呼ばれるそれが、風となってホーニャンの持つ髪留めを中心に吹き巻く。

 

「星の力を秘めし羽よ、真の姿を我の前に示せ。契約の下、(ホー)(ニャン)が命じる。封印解除(レリーズ)!」

 

 髪留めがロッドの形に変形する。透明な「☆」から虫の持つような薄羽が生えたデザインのロッドだ。

 ホーニャンは星のロッドを掴んで軽く回転させてから、レッグホルダーから一枚のさくらカードを抜いた。

 

「木之本桜の創りしカードよ。我に力を貸せ。カードに宿りし魔力を羽に移し、我に力を。『花』(フラワー)っ」

 

 星のロッドで、宙に静止した『花』(フラワー)のカードを叩いた。

 ぶわっと赤、青、白、ピンク、オレンジと多彩な花吹雪が起きた。

 

「わあっ。素敵――」

 

 やがてオタマジャクシ型魔物は、『花』(フラワー)の花吹雪にこんもりと埋まり、動かなくなった。




 シューイ(柊一)/グレイセス編が思わしくないので、末娘のマイソロ3×末娘の最終シリーズと同時進行で書き進めることにいたしました。
 混乱させること、実に申し訳ありません。
 これからブクマの最新話更新は当てにならないとお思いください。

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