CCさくら×テイルズ ~カードを求めて異世界へ~ 作:あんだるしあ(活動終了)
「上手くいかないねえ。説得」
「うん……」
コタローは川際に足を投げ出して、アリーシャはその隣で膝を抱えて、それぞれ地べたに座っていた。
戦いはないのだから体は疲れていない。
ただ、ヤル気のない人間をヤル気にさせるために使った精神が疲れを訴えているのだ。心の疲れを。
「どうして? 同じ国の民……同胞なのに。今でもマーリンドの民は病で苦しんでいるのに。橋が架からないと何もしてあげられないのに、それを何とも思わないの?」
コタローは黙ってアリーシャの背中を柔らかく叩いた。
人間はこういう時に我が身可愛さを発揮する生き物だ。
橋が架かれば疫病がレディレイクにも流れ込む。そうなれば次の罹患者は自分かもしれない。
ならば橋など架からず、マーリンドの中で疫病が終わるのを待てばいい。
そういう思考回路なのだろう。
「ごめん、アリー」
「へ。何が」
「おれ、さくらカードがないと何もできないんだ。これが兄さんだったら、病気を治す魔法も知ってたんだけど。橋を架けるのに役立つカードもないし。おれ、思いっきりアリーの足引っ張ってる」
「そんなことないよ。君という友人がいるだけで、私がどれだけ救われているかわかる? 一人じゃ頑張れないことも、世界のどこかで君も頑張ってるんだからって思うと、頑張れた」
「アリー……」
「だから謝ることなんて何もない」
「そっか……なんか、おれのが励まされちゃった」
「そんなこと――――スレイ!」
アリーシャが若草色の目を輝かせて立ち上がった。
スレイ一行、霊峰レイフォルクから無事のご帰還である。
しかしである。そこにはコタローには特に看過できない光景が広がっていた。
「『
「そっか、コタローは視えないんだっけ。ここ。このブランコっぽい部分。ここに乗ってるのがエドナ。オレたちに力を貸してくれる、地の天族の女の子だよ」
ふいに「
音だけなら、ライラと話したことで鋭くなったのか、聞き分けられるようになった。
「今、コタローの目の前にいる」
「あ、あの、ええと。ごめんなさい! あなたが乗って来たアレ、我が家にとって……おれの母にとってすごく大事なトモダチなんです。だから、返して……もらえますか?」
間が空いた。
スレイがこちらを――正確にはコタローの前にいるのだろう天族を見て肯いている。
「コタロー、いいってさ。『便利な乗り物がなくなるのは残念だけど、そういうことなら譲ってあげる』って」
「何ですかその上から目線……はあ」
コタローは星の鈴のキーホルダーを出した。
「星の力を秘めし鈴よ。真の姿を我の前に示せ。契約の下、虎太郎が命じる。
しゃらららん。紙垂が翻り、手に鈴が収まった。
コタローは星の鈴を持って「
「無事でいてくれてありがとう。もう大丈夫。母上のとこに連れて帰ってあげるから」
息を吸い、吐く。契約の文言はすでに頭に。
「汝のあるべき姿に戻れ。さくらカード」
ピンクの気球がほどけ、鈴の前にピンクのカードとして形を再び成していく。
やがて完全にカードの形になった「
「アリー、さっきの前言撤回。「
工事に来た兵隊や大工らの好奇の視線に、アリーシャを曝したくない。
「夜まで待って。人のいない時間帯にやろうと思うんだ」
「そうか……わかった。君がそう言うなら、夜まで待とう」
コタローとアリーシャ側で話はまとまった――というのに。
スレイは自分より背の低い誰かと話すように下を向いている。内容までは聞こえてこないが、おそらく天族たちがスレイに力を見せるなと言っているのだろう。だが、スレイは頑として肯かない。
やがてスレイは壊れたグリフレット橋の前に立ち、神依を発動した。
今まで見た、ライラやミクリオの時とはまた意匠が異なる。黄とオレンジ、それに金の意匠がスレイを包んでいる。両手には、巨大なナックルボンバーのような拳を装着していた。
「ふぅ―――でや!」
スレイが巨大なナックルボンバーで地面を殴った。
すると、分断された橋の間に、いくつもの岩が隆起し、足場を作った。
皆が呆然としている。導師に好意的だったマーリンドのネイフト代表でさえ、驚いて開いた口が塞がらない様子だ。
ようやく落ち着きを取り戻したネイフトが、大工らに号令を出した。大工らは戸惑いながらも作業を始めた。
「スレイ、君って人は……」
「人が穏やかに話進めようとしてる時に何でやらかしちゃうかなあ」
純粋に感動するアリーシャ。そして、穏やかに事を運べず頭痛のするコタローであった。
ここその場でやるか夜にやるかで選択肢が出るんですよね。
どっちも観たのに夜バージョンがどんなだったか思い出せないorz