CCさくら×テイルズ ~カードを求めて異世界へ~   作:あんだるしあ(活動終了)

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 ものっっっっそい更新を放置しておいて申し訳ありません。
 ぶっちゃけ、別ジャンルを渡り歩いておりました。
 ここも暫定的に戻ってきた感じで、今後も亀更新でございます。
 すみません。


旅のご無事を

 

 

 シューイはベッドの隅に腰かけ、苦しげに呻くソフィに、ただ治癒の西洋魔法を施し続けた。少しでも痛みが和らぐように、という、気休めでしかないとわかっていても。

 

「大事な方なのですね」

 

 客室の椅子に座っていたポアソンが、まるでお天気の話でもするように言ったものだから。

 

「ああ。おれの一番大事な女の子だよ」

 

 シューイも気負いもてらいもなく、本心を答えた。

 例えソフィが人間でなかったとしても、シューイの中にあるソフィへの好意は揺らがなかった。揺らがなくてよかった、とシューイは心から思った。

 

「大丈夫。絶対、大丈夫だからな」

「――みんなと、違っても?」

 

 ソフィは探るように手を動かした。シューイはすぐにソフィの小さな手を両手で握った。

 

「どうした。おれはここだ」

「シューイ、だね。この声。うん。知ってるよ。みんながわたしのこと、人間じゃないんじゃないかって話してたの。わたしの体、ここじゃ治せないから、みんなフォドラに行くことにしたんだよね」

「起きてたのか……ああ。フォドラへ行く手段を確保しに、あいつらは先に行った。あいつらが方法を見つけるまでに、よく休息を取って少しでもマシな状態になること。それが今のお前の役目だ」

「でも……寝ていても、よく、ならないんでしょう……?」

「――ああ。よくはならない。でも、悪くもならない。それがアスベルの、シェリアの、ヒューバートの、パスカルの、マリクさんの、意思と心を支える。お前はただ『休んでる』んじゃない、みんなの心が折れないように『戦ってる』んだ。だからどうか『戦い』続けてくれ。『戦い』は何も拳や剣のぶつけ合いばかりじゃない」

「みんなの、支え……」

 

 ふと、窓の外で機械的な音がした。

 シューイは一旦ソフィの手を離し、窓を開けてすぐ閉めた。冷気と共に入ってきたのは、機械の鳥だった。

 

「パスカル姉様から通信ですわ」

「へえ。そう使うのか。何て?」

「『ソフィの 具合 知りたい  繭から魔物(モンスター)が出てきて 無差別に 人を 襲って います 気を つけて  フォドラへ 行くために ラントへ 向かう』――以上です」

「1個目はシェリアで2個目はヒューバート、3個目は――アスベルってとこか」

「返信はどういう内容にします?」

「んー、じゃあ『ソフィは苦痛と戦っている真っ最中。魔物(モンスター)には気をつける』。あとは……『こちらで手伝えることがあればすぐに伝えろ』。こんな感じで」

「了解です」

 

 ポアソンは淀みない手つきでボタンを押して、シューイの言った内容を入力していき、再び機械の鳥を、窓から空へ放った。

 

「わたし……やっぱり、行く」

「ソフィ?」

「休んでもこのまま、なら……みんなと、一緒がいい……足手まといにはならないようにするから。お願い……アスベルたちのとこ、行かせて」

「――やっぱり『アスベルが』か」

「シュー、イ……?」

「わかった。ただし、追いつくまではおれが抱えてく。目が視えてないのにいきなり自力で歩くなんて危ない。慣れるまではおれの背中の上だ。いいな?」

「うん。ありがとう」

 

 シューイは一度ソフィの手を強く握ってから離した。

 ベッドサイドに脱ぎ捨ててあったロングコートを取り上げ、着直す。内ポケットにはさくらカードと李家の符。ソフィが持っていた少ないアイテムも、ロングコートの外ポケットに詰め込んだ。

 

 ソフィの背中とベッドの間に腕を差し入れると、ソフィはシューイに身を寄せながら起き上がった。シューイはそのままソフィを抱え寄せながら、背中を向けて小さな体を負ぶった。

 

「行かれるのですか? どうしても?」

 

 ポアソンが幼い声で、されど淡々と口にした。

 

「ああ。行く」

 

 ポアソンは笑顔で首を横に振り、客室のドアを開けてくれた。

 

「旅のご無事を」




 グレイセスf編まで書ける自信がなくなってきた今日この頃。

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