CCさくら×テイルズ ~カードを求めて異世界へ~   作:あんだるしあ(活動終了)

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星の核へ

 

 

 星の核(ラスタリア)

 

 星の核(ラスタリア)からは原素(エレス)が生まれ、大煇石(バルキネスクリアス)煇石(クリアス)に蓄積される。

 大煇石(バルキネスクリアス)は地表に漏れ出る原素(エレス)を吸収し、世界を安定させる機能も担っている。

 大煇石(バルキネスクリアス)の大元だと考えていい、とパスカルは結論を簡潔に述べた。

 

 パスカルが英知の蔵で手に入れた知識を解説中に、「フォドラ」や「ラムダ」の単語に、ソフィは苦しげに胸を押さえた。

 シューイはすかさずソフィの斜め後ろから彼女を支え、静かに膝を突かせた。

 

「何か……思い出せそうなんだけど、そうすると頭が痛くなるの……」

「外の空気でも吸いに出ましょう?」

 

 シェリアがごく自然にソフィの傍らにしゃがんだ。

 

「わたしたちはソフィに付いてるわ。みんなは調べ物を見つけて」

 

 シューイはシェリアと肯き合い、両側からソフィが立てるよう介助した。そして、ソフィを真ん中に、英知の蔵を出て行った。

 

 

 

 

 

 

 装置を渡って普通の集落に戻ったところで、適当な段差を見繕い、ソフィをそこに座らせた。

 

「痛むか?」

「何か、思い出せそうなんだけど」

「無理して思い出そうとしなくてもいいのよ」

「うん、でも……早く思い出さないと、大変なことになる、ような……でもこわいの。思い出すのが」

 

 シューイは無言でソフィの額に手の平を当て、鎮痛の魔法を使った。

 

 もちろんソフィの痛みが病気などではなく精神的なものから来るものだとは分かっている。せめて少しでも気が楽になればいいと、その程度にしか考えていない。

 

 すると、とさりと、軽い感触が、ソフィの隣に座ったシューイの二の腕にもたらされた。

 

 ソフィがシューイに寄りかかっている。

 

 口が金魚のようにぱくぱくと開閉し、結局、どんな言葉も出て来なかった。ただ顔が熱く、心臓がうるさかった。

 

 

 アスベルたちが英知の蔵から出てきた。

 

「みんな、聞いてくれ。これからすぐに孤島へ向かおうと思う」

「わかった」

「ソフィ。無理はするな。もし調子が良くなくなったら、シェリアか……シューイに、言うんだぞ」

「わたしは平気。だから一緒に連れて行って」

 

 星の核(ラスタリア)のある孤島へ行くべく、シューイらはザヴェートへ戻ることになった。

 

 

 

 

 

 

 ザヴェートの港に着くなり、シューイたちはすぐさま船に乗り込んだ。

 

 船室に入れば、吹雪が遮断されただけでそこが温かく感じ、シューイは壁にもたれてその場に座り込んだ。他の仲間も車座になった。

 

「話の規模がどんどん大きくなってきて、何だか付いて行けなくなってきたわ」

「同感」

「珍しいですね。あなたでも弱音を吐くんですか」

「おれを何だと思ってるんだ。元よりさくらカード集めで手一杯だったのに、今や世界を巻き込む惨事に発展しつつあるんだぞ」

「そうよ、ヒューバート。シューイはこう見えて繊細なんだから」

「フォローと受け取っていいのか、それ」

 

 シューイはロングコートを脱ぎ、掛布団代わりに体に被って横になった。

 

「少し休む。着くまでには起きるから」

「ええ。おやすみなさい」

 

 休息もまた戦いだ。実験場所でのさくらカード連続使用の疲労を癒しておかねば、次の戦場では何枚のさくらカードを使うことになるかわからないのだから。

 

 …………

 

 ……

 

 …

 

 吹雪に体を叩きつけられながらも、リチャードは両肘両膝を突いて立ち上がろうとしている。

 

 

 “星の核(ラスタリア)へ……星の核(ラスタリア)へ向かわななくては”

 

 

 その面に浮かぶのは、微笑み。

 

 

 “そうすれば、叶うんだろう? 僕らの、望みが……叶うんだろう?”

 

 

 “僕らだけがこの星を救えるんだ……争いに満ちたこの星をあるべき姿に戻せるんだ……そうなんだろう……?”

 

 

 まるでこの世全ての半分を共に背負っている半身に語りかけるような、優しい声だった。

 

 …

 

 ……

 

 …………

 

「ありゃ、シューイ起きた。まだかかるから二度寝しちゃいなよ」

「夢見が悪かったんだ。もう起きてることにする。――ソフィとアスベルは?」

 

 パスカルが指さしたのは、デッキへ通じるドア。

 シューイはロングコートを改めて着てから、立ち上がってドアを潜った。

 

 

 デッキへ出ると、先端で、ソフィは一人海を眺めていた。

 声をかけようとしたのだが、シューイより先にアスベルがソフィに歩み寄って声をかけたので、シューイはとっさに隠れてしまった。

 

 

「もし……わたしがリチャードを倒しても、それでも、やり直せるの?」

「それは、俺たちを守るためにそうするというのか?」

「……リチャードとの友情の誓い。もう一度できたら、こんな気持ちはなくなるのかな。リチャードを倒さないと、アスベルやみんながいなくなっちゃうような気がして。リチャードだって大切なともだちなのに。わたし、何で……」

「ソフィは昔からそうやって、俺たちを守ってくれたよな。俺は大人になったら、そんなお前を守れるようになりたいと思ってた。だから、リチャードのことは、俺に任せてくれないか?」

 

 シューイは腕組みしていた手できつく自分の二の腕を掴んだ。

 

(ソフィにはやっぱりアスベルの言葉が一番効く。おれじゃなくて、アスベルのほうが。アスベルはおれと違って、人の心がわかる奴だから)

 

 シューイは踵を返して船室に戻った。


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