CCさくら×テイルズ ~カードを求めて異世界へ~ 作:あんだるしあ(活動終了)
王宮からしばらく離れるなり、スレイがコタローの手を掴んだ。
「うわっ。何ですか」
「なんかライラが話したいって言うから」
しようがないので立ち止まった。
アリーシャとスレイなら絵になるだろうに、何が悲しくて男同士で、往来の真ん中で手を繋がなければいけないのか。猛烈に逃げ出したかった。
「確認ですが、コタローさんは人間ですよね?」
甘く、それでいて落ち着いた女の声が、鼓膜を叩いた。
「はい」
「では先ほどの、兵士を捕縛した力は何に由来するものですの? 天響術とも憑魔の力とも違っていました。コタローさん、あなたは一体……」
「何者なのか、ってことですか」
「はい」
コタローはアリーシャを見やった。アリーシャは微笑んで肯いた。
「おれは大陸の外のずーっと向こうから来た、異邦人です」
「異邦、人?」
「世界はグリンウッドだけじゃありません。現におれの姉と兄と妹も、エレンピオス、エフィネア、ルミナシア、全く別の3つの世界へ旅立ちました。おれが行使するのは故郷で魔法と呼ばれてる異能です」
空いた手でコートの内ポケットから、さくらカードを取り出して広げた。
「これがおれの力の源です。さくらカードっていいます。これを探して、故郷の母のもとに持ち帰るのが、おれの使命です」
「……この札からは非常に強い力を感じますわ。これほどの者たちを従えているというのですか?」
「従えてるというより、協力してもらってる、ですね。ライラさんやミクリオさんが導師さんにしてるのと同じ関係です」
ようやくスレイが手を離してくれたので、コタローは手をぷらぷらさせてから下ろした。
「アリーシャは知ってたの? コタローの秘密」
「ああ。初めて会った日に全部教えてもらった」
自慢げに語るアリーシャの姿に、現金にも嬉しくなったコタローである。
「それから何度も……というほどじゃないけど、コタローがカードを見つけるたびに、外の世界の出来事をたくさん教えてもらった。楽しかったなあ」
そこでアリーシャが寂しさを浮かべた。楽しかったのに、もう二度と聞けない。アリーシャの言葉にしない諦めがコタローには伝わった。
「行くんだね。アリー」
「ああ」
「ちょ、ちょっと待った。行くってどこへ」
「マーリンドだ。疫病の街の」
スレイが何か言いかけ、すぐ横を見た。その位置に向き、アリーシャは苦笑した。
「大臣たちの思惑はどうあれ、命令は正式なもの。何より――マーリンドの民が疫病に苦しんでいるのは事実です。私はできることをしたいのです。ハイランドの民のために」
アリーシャが敬語を使っているということは、その場にいるのだろう、ミクリオかライラのどちらか、あるいは両方が。
「わかった」
スレイはあっけらかんと言った。
「オレも一緒に行く」
先を越された! と、コタローが内心で絶叫したのは、また別のお話である。
どこまでもアリーシャに付いていくコタ君なのでした。