CCさくら×テイルズ ~カードを求めて異世界へ~   作:あんだるしあ(活動終了)

129 / 180
明かした背景

「――と。まあ、話せる所はこんな感じだ。質問はあるか」

 

 ラントの屋敷の食堂が一番広いし椅子も多いということで、シューイは食堂を借りて、「(イリュージョン)」のプロジェクターも交えつつ、説明した。

 

 シューイが魔術師であること。

 「さくらカード」という母の大切なものを回収すべく旅をしてきたこと。

 シューイ自身が異世界人であること。

 

 いまいち呑み込みきれないメンツと裏腹に、ソフィが無表情で尋ねてきた。

 

「シューイは『シューイ』じゃないの?」

「ああ、それか。そうだよ。隠し名、あるいは忌み名ってやつだ。おれたちみたいな魔法使いにとって、真名を知られるのは大きなリスクを負うことになるんだ。だから最初はこう名乗った。最初だけのつもりだったんだが、定着した」

「じゃあ、シューイの真名って、なに?」

「木之本柊一。あるいは、李(チョン)(フイ)。ハーフだから、それぞれの国の名前を親から貰った」

「シューイチと、チョンフイ」

「呼びにくいなら今まで通りでいい」

「うん。シューイ」

 

 ソフィはふわりと笑った。

 

 ソフィの態度は変わらない。シューイが魔術師だろうと、異世界人であろうと。

 

(この子を好きになって――いや、おれが好きになった子がソフィで、本当によかった)

 

 

「じゃあシューイは、その、さくらカードを探すのを中断して俺たちを助けてくれてたのか?」

「ああ。初めて会った時点で残りは3枚だってわかってたから、寄り道もいいだろうと思って。それに、お前たちに逢えなかったら、『(ライト)』も『(ダーク)』も『(シールド)』も見つからなかった。感謝してる」

 

 シューイは深く頭を下げた。

 

「そんな。感謝されるようなことじゃないわ。私やヒューバートのとこに『(ライト)』と『(シールド)』があったのは偶然なんだし」

 

 

「この世に偶然はない。あるのは必然だけ」

 

 

「おれの師の奥様の口癖だ。だから、これから一緒にいられるとしたら、それも必然なんだろう。お前らが許してくれるなら、だが」

「あたしは全然いいけど~? シューイがいたら結構便利だし。カードくんたちの仕組み、やっぱ気になるし」

「分解はさせないぞ」

「オレもシューイの同行に異存はない。お前は様々な局面でオレたちを救った。これからもそうしてくれると有難い」

「受け入れてくれるなら、全力でサポートします。というか、サポートしかできないんですが」

 

 アスベルが立ち上がり、シューイの前まで来た。

 

「そういうわけだ。これからもよろしく頼む。頼りにしてるぞ」

「――こちらこそ」

 

 アスベルが差し出した手を、シューイは握り返した。

 アスベルはどうか知らないが、シューイはその握手を宣戦布告と受け取った。

 

「でも、いいの? さっきの話じゃ、さくらカードは全部集めたらお母様の所に持って帰らなくちゃいけないんでしょう?」

「それを変えるつもりはない。ただ、カードたちを連れて帰るのは、そっちの弟の件が片付いてからにする。そのくらいならカードたちも待ってくれるさ」

「シューイがそれでいいんならいいのだけど……」

「自分でも不思議なんだが、それでいいと思ってるみたいなんだ。どうしたんだろうな、おれ。今までさくらカード捕獲最優先の生活だったのに」

「みんなとお別れしたくなくなったとか~?」

 

 シューイは反射的にソフィを見た。ソフィは首を傾げる。

 

(そうか。『審判』が終われば、おれは元の次元に帰る。そしたら二度とこの子とは……)

 

 シューイはソフィの横へ行き、ソフィを見下ろして微笑した。

 

「――そうかもな」

「ん?」

「パスカルの言う通り、別れがたくなったみたいだ」


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。