CCさくら×テイルズ ~カードを求めて異世界へ~ 作:あんだるしあ(活動終了)
シェリアを無事救出できたシューイらは、彼女も伴ってラント領主邸に戻った。
ヒューバートとレイモンは屋敷の客間にいた。レイモンのほうはベッドに寝かされた状態で。
「シェリア! 無事でよかった」
ヒューバートが浮かべた表情は、今まで一番血が通ったものだった。
「今回の件は全てぼくの監督不行届きが原因です。申し訳ありませんでした」
「過ぎたことはもういいわ。それより」
シェリアはベッドの横へ行き、レイモンの容態を診る。
「ひどい傷……」
「追いつめられて発作的に自らを刺してしまったんです」
「もう大丈夫ですよ。今、治療しますからね」
シェリアはレイモンの患部に両手の平をかざした。真白い光が照らした部分から傷は消えていった。
「私はあなたにひどいことをしたんですよ……一体どういうつもりで……」
「もうそのことはお互い忘れましょう。これからは無茶なことはしないでくださいね」
レイモンがシェリアの笑みを食い入るように見つめた。
レイモンの言うように、陥れた相手を救うという行為が信じがたいのだろう。シューイが同じ立場でもそう思う。
シェリアの治療が終わってから、シューイらは客間を出た。
「では俺たちは予定通り信書を届けにストラタへ行こう。シェリア……も、ついて来てくれる、か?」
「あ、うん。もちろん」
ぎこちないアスベルの問い方と対照的に、シェリアの返事は簡潔だった。
「ちょっと待ってください。これを」
ヒューバートが差し出したのは、掌に収まる程度の大きさの、平たい巾着袋だった。
「広場で渡そうと思ったんですが、あんな騒ぎになって渡せなくて。別に大した物じゃありませんよ。ただの……お守りです。さあさあ! 行くなら早く行ってください!」
怒った調子でそっぽを向くヒューバート。
(兄弟で物のやりとりをするのがそんなに恥ずかしいことか? おれなら姉上でも
お守り袋の像が一瞬、ぶれた。
シューイはとっさに、お守り袋を懐に入れようとしたアスベルの手首を掴んだ。
「どうした?」
「――さくらカードの気配がした」
シューイは手に剣を召喚した。
ぎょっとする全員を尻目に、お守り袋を剣先で小突こうとした。
「「「「あっ」」」」
「「??」」
思った通り、見えない壁でもあるように、剣先はこつこつと鳴っただけで終わった。
視えたのはソフィとアスベルとシェリアとヒューバート。パスカルとマリクには何が起きたかわからなかったようだ。
「『
「シールド?」
「防御カードで、より大事なものを守ろうとする性質があるんだ。よほど大事にされてるんだな、これ」
驚いた様子だったヒューバートが、急に顔を赤くした。
「だ、だ、大事になんて、してません!」
「語るに落ちるぞ。『
「決めつけないでください! 大体、サクラカード? って何ですっ」
「あ~、そこからか~」
「そういえばシューイってば、さくらカードのこと、アスベルやヒューバートたちにはきちんと説明してなかったものね」
「――わかった。後で改めて説明するから、今は『
シューイはアスベルの手首から手を離し、考え始めた。
(どうする。母上は『
ロングコートの内ポケットから取り出すさくらカードは、「
(こういう使い方は初めてだから上手く行くかわからないけど)
シューイは「
「風よ。刃となりて我が手に宿り、かの守りを裂け。『
剣先が突いたさくらカードが光った。顕れるは風の乙女。「
「
――旋風の中に生じる
「その袋を投げろ!」
アスベルが反射的といった感じにお守り袋を高く放った。
シューイはお守り袋が目の前に落ちてきた瞬間を狙って剣を振り下ろした。
狙い通り、放った斬撃はお守り袋を傷つけず、周りの囲いだけを斬った。
ぼう、と浮かび上がる「
「汝のあるべき姿に戻れ! さくらカード!」
剣先を「
やがて完全にカードになった「
「――おかしいな。これで最後の一枚まで封印したのに、ちっとも嬉しくない」
シューイはお守り袋を拾い上げ、アスベルに差し出した。
「大事な餞別に乱暴な真似して悪かった」
「あ、ああ、いや、あ、ありがとう?」
「アスベル、言ってることめちゃくちゃよ」
シューイは苦笑し、最後のさくらカードをロングコートの内ポケットに入れた。
「さて。説明するって約束だったな。何から話そうか」
シューイがだいぶグレイセス勢にほだされてきました。
お守りイベントを見て、「盾」のエピは絶対ここに入れようと何年も前から決めていました。
妹の名前を変更しました。