CCさくら×テイルズ ~カードを求めて異世界へ~   作:あんだるしあ(活動終了)

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ラントの危機 1

 バロニアの都にて即位式が催され、リチャードは正式にウィンドル国王となった。

 

 式が終わって控えの間として宛がわれた部屋に、シューイ、ソフィ、シェリア、パスカルはいた。

 アスベルだけがいない。リチャードの急な呼び出しで、部屋を出て行ってしまった。

 

「何か見えるか?」

 

 ガラス窓に両手を突いて外を見ていたソフィに、前よりは幾分冷静に問いかけることができた。

 

「鳥」

「鳥? ああ」

「お空、飛んでるね。空を飛べたら気持ちいいのかな」

「おれも、知りたいな。空を飛ぶ気分」

 

 帰ったら姉が所持する「(フライ)」のカードを借りて空中散歩してみてもいいかもしれない。

 

 バンッ!

 

 感傷を吹き飛ばす勢いでドアが開けられた。アスベルだった。

 

「シェリア!」

「は、はい」

 

 アスベルは部屋に入るなりシェリアに詰め寄った。

 

「落ち着いて聞いてくれ。このままだとラント領が戦場になる可能性がある。リチャードはラントへ侵攻するつもりだ」

 

 シェリアは蒼白になって口元を両手で覆った。

 

「俺はそうなる前にラントへ行き、交渉の席に着くようヒューバートを説得するつもりだ」

「私も行くわ。そんな話を聞いたらじっとしていられないもの」

 

 そこへ、この場の誰でもない声が割って入った。

 

「それならオレも同行させてもらえないか」

 

 部屋に入ってきたのは、ウォーターブリッジの砦で戦った鉈剣使いの厳つい男だった。

 

「マリク教官――」

「お前が進言してくれなかったら、オレや騎士団は処刑されていただろう。お前には大きな借りができた。今度はオレがお前の助けとなろう」

「教官のお力をお借りできるのは、とても心強いです。どうか、よろしくお願いいたします」

「よろしく。教官」

「……やれやれ。この分だと教官で定着してしまいそうだな」

 

 

 

 

 バロニアから船に乗り、ラントを目指す海の上。

 シューイは船室に篭もり、さくらカードをあるだけ使ってこれからのことを占っていた。

 

(原因は『(サンダー)』。噴出する激しい感情をコントロールできるかが試されること。過去の状況は『(ライト)』。昔は誰もが恵まれていたんだな。それが7年置いてこの有様か……現在の状況は『(メイズ)』。他人の忠告に耳を傾ける……はできていないな。最後、解決方法は、『(イレイズ)』? 確かに運気は下降気味だが、これがどう解決してくれるんだ?)

 

「何してるの?」

 

 心臓が口から飛び出すから思うほどに跳ねた。

 

 とことこ。ツインテールを揺らしてソフィが並べたカードの横に座った。

 

「これ、何?」

「さくらカードで占ってた。これからのことを。気休めだけどな」

 

 すると、ふわ、ふわ、とさくらカードがひとりでに燐光を帯びて浮かび上がり、ソフィを囲んでくるくると踊り始めた。

 

「きれい」

「お前の心が清らかだからだよ」

「わたし?」

「さくらカードに好かれる人間に悪人はいない。何たってあの母上のカードだから」

 

 シューイが手を差し出すと、掌の上にさくらカードが集まり、落ちて束となった。

 

「結果はよくなかったが、それはこれからどうするか次第だ。あくまで占いだからな」

 

 コートの内ポケットに全てのさくらカードを入れ直した。

 

 

 

 

 船を下り、陸路を越えて、ついにシューイらはラント領東門前まで辿り着いた。

 東門は閉じられ、門番が2名配置されていた。

 

「頼めば開けてくれるわ。私はいつもそうしていたもの」

 

 シェリアは軽く教えてくれたが、これに反対意見を唱えたのがマリクだ。

 

「彼らはアスベルの正体を知っているのではないか。不用意に近づくのは避けるべきだ」

 

 シューイはコートの内ポケットから1枚のさくらカードを取り出した。

 

(腹は括った。エフィネアにいる間は彼女のため、彼女が大事にしてるもののために、力を使う)

 

「一つだけある。正面から怪しまれずに入る方法」


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