CCさくら×テイルズ ~カードを求めて異世界へ~   作:あんだるしあ(活動終了)

118 / 180
落ち延びる

 地下通路を抜けたシューイらは、とりあえずはグレルサイド方面の街道にある山小屋を一つの目的地として歩みを進めた。

 

 小屋が見えた所で、リチャードが「ここでいい」と砂浜に倒れるように座り込んだ。

 アスベルはリチャードの前に座り、リチャードにこれまでの経緯を尋ねた。リチャードも応えて話し始めた。

 

 シューイは目だけでソフィの動きを追った。

 

 ソフィは海岸に一羽だけ留まっているカモメに近寄り、しゃがんでカモメをじっと見つめている。

 

「カモメ、好きなのか?」

 

 深呼吸し、なるべく平静を装ってソフィに声をかけた。

 

「よくわからない。なんとなく」

「そうか」

 

 ソフィから少し離れて砂浜に腰を下ろし、足を投げ出した。

 

 後ろでアスベルが大きな声を上げた。カモメは飛んでいった。

 ソフィはカモメを追いかけて行ったので、シューイも立ち上がってソフィを追った。

 

(待てよ。これ、あいつが行った距離が大きいと……二人きりになる!? うわー、うわー!)

 

 第三者から見ればおかしくしかない心配も、街道の向こうからやってきた敵影によって掻き消えた。

 

「人が来る」

「リチャード王子を追ってきた連中か。王子はまだ本調子じゃない。王子を見つけられる前に片付けよう」

「うん」

 

 ソフィは格闘技の構えを取るなり、すぐ近くまで来た兵士にアッパーをくり出してノックダウンさせた。

 

 シューイもまた右手に剣を現し、コートの内ポケットからさくらカードを取り出した。

 使うのは広範囲の攻撃効果を持つ「(サンダー)」。

 

「木之本桜の創りしカードよ。我に力を貸せ。カードの魔力を剣に移し、我に力を。『(サンダー)』!」

 

 前方広範囲に雷撃が落ち、円形に地面を伝った。兵士は全員が感電して気絶した。

 

「戻ろう。あの二人に伝えないと」

 

 シューイは剣を消し、アスベルとリチャードのいる小屋の前へ走った。

 

「アスベル、大変。兵士が来た」

「なに!?」

 

 アスベルが鞘を握って立ち上がった。

 

「安心しろ。おれたちで片付けた。王子。追われる心当たりはあるか?」

「叔父のセルディク大公……今や国王を騙るあの男の手の者だろう」

 

 リチャードもまた立ち上がり、アスベルに助力を求めた。ここで断らないのがアスベルだと、短い付き合いだがわかってきたシューイだった。

 

 アスベルはリチャードと固く握手を交わした。

 すると二人の間にソフィが立ち、じっと握手する二人の手を見下ろした。

 

「ソフィもやりたいのか?」

「いいよ。大歓迎だ。7年前に戻ったかのようだね」

 

 ソフィが握手の上にさらに手を重ねた。

 

 ――瞬間、シューイは確かに視た。

 リチャードの手から噴き出したごくごく僅かな黒煙が、ソフィを弾いた場面を。

 

 弾かれた手を見下ろすソフィの横に立つ。

 

「手」

「え?」

「手、診せろ」

 

 ソフィは不思議そうにしながら両手の平をシューイに開いて見せた。特に傷らしい傷はない。手袋の損傷すらない。

 

「大丈夫なら、いい」

 

 ソフィはますます不思議そうに小首を傾げた。急に居た堪れなくなった。

 

「は、早くグレルサイドを目指すぞっ」

「ちょ、シューイ、やっぱり歩くの速い! そんでソフィも同じ速度で追わなくていいから!」

「ふふふ。面白い人たちだね」




 単にシューイがカードで戦闘するシーンを書きたいがために入れたと言ってもいい回でした。

 シューイの照れると速度が上がる癖は小狼譲りです。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。