CCさくら×テイルズ ~カードを求めて異世界へ~ 作:あんだるしあ(活動終了)
魂の橋を渡ったルドガーたちは、瘴気に満ちた迷宮を踏破しなければならなかった。
これについては、ミラ付きの四大精霊の力を防具にした上で、ツバサの持つ「
おそらくは最短の時間で迷宮の外、目的地であるオリジンのいる場所まで辿り着いた。
3人と1匹だけで。
四大精霊が守れるのは4人だけとミラが言った時、ルドガーは自分とルルを除いてあと2人――ツバサとガイアスに同行を頼んだ。
飛び出した、巨大なカウンタードラムのある空間で、ルドガーは、見た。
うなだれるエルが気だるげに顔を上げる。その右半面は炭化し、虹彩は赤く染まっていた。
ヴィクトルと同じく、エルも
「ルド……っ」
エルが叫びかけた瞬間、エルは近くにいたビズリーもろとも闇色の球に閉じ込められた。
闇色の球は高く高く浮かび上がった。
「二人がかりなら勝てると算段したのだろうが、残念だったな」
エルたちを閉じ込めた張本人であるクロノスは、いけしゃあしゃあと言った。腸が煮えくり返るかと思った。
「エルに何をした!」
ルルが吼えた。愛娘にあの仕打ちだ。娘を溺愛するルルが黙っているわけもなかった。
「異空間に閉じ込めた。あの娘には、
クロノスが指差したのは巨大なカウンタードラム。示す数は999999。あと一人、
「オリジンは人間に進化の猶予を与え、その身を焼きながら魂の浄化を続けてきた。だが貴様らは、自らの不浄を省みず、魂の昇華を思いもせぬ。もうたくさんだ! 我は浄化を止め、オリジンを救い出す!」
「オリジンはそんなこと望んでません!」
「人間ごときがオリジンを語るな!!」
ツバサは星の長杖を持ちながら、悲しみをありありと浮かべた。
「ツバサ」
「ルドガーさん……」
「俺とガイアスでクロノスを引きつけておく。エルを結界から出してやってほしい。さくらカードには『何でも切れる剣』があったよな」
「……わかりました。ルドガーさん、アーストさん……死な、ないで」
ツバサが背を向けた。
ルドガーは双剣を、ガイアスは長刀を、それぞれ鞘から抜いてクロノスに向けた。
ツバサの背後で戦いの音がしている。ルドガーとガイアスがクロノスと激しく戦っている。
ツバサはエルたちが閉じ込められている結界を見上げた。
(あの高さ、『
レッグホルダーから、白鳥の図柄のさくらカードを取り出した。
「怖いのか」
「っ、ルル君」
「ジュードから大体聞いた。そのさくらカードは使いたくないか」
さくらカードは主の命令に逆らわない。だが、この「
「君にとってのさくらカードは、ただ命令に従うだけの道具か?」
「……いいえ」
「反抗する者、命令を聞かない者に価値はないか?」
「いいえ」
エレンピオスに来て、ジュードたちと関わって、知った。
一方的な命令ではなく、相手の意思を尊重して力を借りることが、人と人、人と精霊が――ヒトと人外が上手くやっていく秘訣。
(お願いよ、『
ツバサは「
「『
ばさっ。
背中から1対の白い翼が広がった。
すかさず「
「
「やぁああ!!」
下から上へ。空を飛ぶ勢いを殺さず全て刀身に乗せ、結界を切り裂いた。
今度は上から下へ。結界という足場を失ったことで落下していくエルとビズリーへと飛んで行く。
追いついたところで、エルを片腕で抱き締め、ビズリーの手をどうにか掴んだ。
ゆっくりと地上に舞い戻る。先にビズリーの足が地面に着いたので手を離し、両手でエルを抱き締めた。
「おかえりなさい。エルちゃん」
「ツ、バサ……う!? あ、く、ああぁぁ!」
「エルちゃん!」
ツバサは急いでルドガーたちの下へ、エルをきつく抱えて翔け下りた。
「エル!」
ルドガーがツバサからエルを受け取り、地面に寝かせて手を握った。
「ルド、ガー……パパ……」
「怖かったろう、エル。もう大丈夫。パパたちが付いてるよ」
「うんっ……、あ、あああ!」
「「エル!」」
「諦めろ。その娘はもう助からん」
無情にも宣告を突きつけたのはビズリーだ。
「オリジンに願えば、話は別だがな」
「~~っオリジン!」
ルドガーはエルを抱きかかえたまま叫んだ。
「お前に提案がある! 『願い』じゃなくて『提案』だ! この話を聞いてもらえるなら、俺は願いの権利でお前を瘴気の浄化から解放する! だから出てきて俺の話を聞け!」
地上にいくつもの足音が反響した。
見下ろせば、残して来たジュードたち全員が迷宮を抜けて審判の門の前に辿り着いたところだった。
ツバサは彼らの前まで飛んで行った。
「ツバサ、そのカッコ!」『天使みたい~♡』
「えへへ」
「使えたんだね。『
「うん。心配してくれてありがとう、ジュード君」
“それがさくらカードの力なんだね”
この場の誰でもない声だった。ツバサは辺りを見回した。
“ツバサ・キノモト。いや、リ・イーファと呼んだほうがいいかな。初めまして。異邦の魔法使い”
「わたしを知ってるの?」
“君にそっくりの君のお母さんからたくさんの話を聞いたよ”
その時、ルルとミラに変化が起きた。二者の像が二重になったようにぶれ、次の瞬間にはまるで彼らから剥がれるように、分史世界のミラとヴィクトルが現れたのだ。
「これは――」
「ちょっと、何よここ。私、ニ・アケリアにいたんじゃなかったの」
ミラと同時に現れた「
“ここは正史世界も分史世界も隔たりなく魂が還る場。ここでのみ、正史世界と分史世界の同一存在は同時に存在できる”
「パパ……っ」
「エル。さびしい思いをさせてすまなかった。ここにいるよ」
ヴィクトルはルドガーからエルを受け取り、宝物のように小さな手を握った。
「ねえ、ツバサ。もしかして、あれがエルの父親?」
「はいっ。正真正銘、エルちゃんのお父さんです。少し込み入った事情があって、ミラさんと同じで、分史世界から来てもらうことになっちゃいましたけど」
「え!? じゃああの人も私と同じ……」
“ツバサ”
オリジンの呼びかけに対し、ツバサは「
“僕と君が出会った時に何が起きるのかは僕も知っている。でもそれは後にしたほうがよさそうだ。今はまず、僕の審判に決着をつけよう”
一拍置いて、オリジンは今度、ルドガーに声をかけた。
“ルドガー・ウィル・クルスニク。君がこの審判の場で何か仕掛けようとしているのはわかってる。僕に聞かせてくれないかい。『願い』ではなく『提案』だと言う、君の話を”
――ついにこの瞬間が来た。
ルドガーはエルをヴィクトルに任せて立ち上がり、無手でカウンタードラムの前に立った。
「俺は“オリジンの審判”の
地味に長くて苦労したパートでした。
カナンの地なら同時に存在できるんじゃね? だって全部の世界の魂が集まるんだし。と、思って急きょミラさんとヴィクトルさんにも参戦してもらいました。
ルドガーが今日まで何のために調査を続けて来たのか、次回で全てを明かします。
それにしても今回はビズリーの影が薄い……