CCさくら×テイルズ ~カードを求めて異世界へ~   作:あんだるしあ(活動終了)

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家に帰ろう

 ルドガーたちは力を結集してクロノスを退けることに成功した。クロノスが何故か動揺していたという要素も大きいが。

 

 最後衛にいたツバサはほぅ、と息をついた。

 

 ちなみにツバサは、時歪の因子(タイムファクター)化進行で戦力外とされたユリウスと、戦えないエルとルルを守って、いつでもさくらカードを使えるように星の長杖を構えていた。

 

 

「結局、カナンの地への入り方は分からずじまいだった」

 

 ミラが険しげに眉間にしわを作っている。それについては全員が賛成なのか、往々にして渋い顔だ。

 

 ツバサはルドガーと見交わした。ルドガーは肯いた。来たのだ、ついに、言うべき時が。

 

「カナンの地への入り方なら、俺とツバサが知ってる」

 

 ルドガーはエルの手を掴んだ。突然手を繋がれたエルのほうは、訳が分からないという様子でルドガーを見上げている。

 

「それも予知夢で?」

「俺は、そう。ツバサは分史対策室のエージェントたちから情報集めて、自力で答えに辿り着いた」

 

 仲間たち、特にレイアの視線に、ツバサは縮こまった。レイアの純粋な尊敬のまなざしが心苦しい。

 

 それでも、これからする重大発表に比べれば。

 

 ツバサは大きく息を吸い、吐いた。

 

「強いクルスニクの魂。クルスニク一族でもハーフ骸殻以上の使い手を殺して、カナンの地に捧げる。そうするとカナンの地への『橋』が架かるんだそうです。エージェントさんは『魂の橋』って呼んでました」

「魂の……橋……」

 

 エルが呆然と反復した。

 

 誰もが最後にして最大の試練を知り、顔色を青くしている。

 できるなら知らないでほしかったと思うのは、ツバサの甘さなのだろう。

 

「ビズリーは」

 

 ユリウスが口火を切った。

 

「あの男は、ずっと俺とリドウを『橋』の材料と見なしてきた。そういう男なんだ、あいつは」

「じゃ、じゃあ、どうなっちゃうの? ルドガーは? パパは?」

「ルルの報告はもうビズリーにも上がってるはずだ。立派に『橋』候補だろうな。だが、今は絶好のチャンスだ。ビズリー含む邪魔者は一人もいない。あとは『橋』を架けるだけだ」

 

 ユリウスが輪から出て距離を取り、右手で双刀の片方を抜いた。

 

「「ユリウス!」」

「勝手な兄貴で悪かった。だが、お前と過ごせた15年間は、俺の人生最高の宝物だった」

 

 ユリウスが双刀を首に当てて思いきり引く――直前、刀に半透明の羽根が生え、ユリウスの手から刀が消えた。

 

「許しませんから」

 

 ツバサの手に刀の柄がちょうど落ちた。

 

 ツバサはユリウスが双刀を抜いた瞬間に、「(ムーブ)」のさくらカードを発動した。いざ自決しようとした時、ユリウスから刃物を取り上げるために。

 ちなみにもう片方の刀もすでに鞘から取り上げてある。

 

「ツバサ君……」

「だって、こんなことで人が死ななきゃいけないなんて、絶対絶対おかしいです!」

 

 ツバサはルドガーとルルも、迫力はないと自覚していても睨みつけた。

 

「ルドガーさんも、ルル君も。誰にも言わないで『橋』になったら許しませんから。こんなことで死ぬなんて、許してあげないんですから!」

「ツバサ……」

「君という娘は……」

 

 ルドガーとルル、揃って脱力した笑みを浮かべるしかなかった。

 

「けど、ツバサ。『魂の橋』を使わないでカナンの地に行ける方法はどうするの」

「それはこれから考える。なんとかなるよ。絶対、だいじょうぶだよ」

 

 ツバサは心から満面の笑顔で、()()()()()()()()初めて「無敵の呪文」を唱えることができた。

 

 幾人かが反論しようとしたようだが、ツバサの顔を見て、結局は諦めてくれたらしい。

 

「そういうわけだ。ツバサがなんとかしてくれるから、エル、俺やパパを心配して、カナンの地に行くのやめる! とか言い出すなよ」

「な、何で……って、あ! 予知夢! ルドガー、ずるい!」

「文句は俺に憑いてるさくらカードに言ってくれ。で、どうなんだ? 俺たちから離れるか?」

「エル」

 

 ルルもまた寄ってきて、濃緑色の目でエルを見上げた。

 

「……エルがなんとかしなくても、パパもルドガーも、消えちゃったりしない?」

「しない。約束したろ。一緒にカナンの地へ行くって。それまでは消えないし倒れないよ」

 

 エルは首を縦に振った。

 

「またツバサがなんとかしてくれるんでしょ。ならツバサのこと、手伝ったげてよ。ツバサってすっごく無理してる感じだし」

「そ、そんなことないよぅ」

「そこは任せとけ」

「足しになるかは知らんが、そばにいて見張っておこう。そこでこっそり離脱しようとしている兄も含めて」

 

 ぎっくぅ!

 まさにそんな擬音がふさわしい風情で、去ろうとしていたユリウスがふり返った。

 

「……俺は冤罪とはいえ指名手配犯だぞ。一緒にいたら迷惑が」

「かけていいって。兄弟なんだし」

 

 ルドガーが歩いて行って、ユリウスに手を伸べた。

 

(うち)に帰ろう、兄さん。みんなで」




 魂の橋はとりあえず置いといて。
 まずはおうちに帰ってあったかいご飯でも食べましょう。みんなでね。
 おなかいっぱいになったら、いい考えも浮かびますって。
 だから画面の前のみんな、食事は抜いちゃだめですよ!

 ユリウスがPTinしました。
 クルスニク家が大所帯になりました。

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