Zestiria×Wizard 〜瞳にうつる希望〜 作:フジ
3話に続き、4・5話の更新でもランキング入りさせていただき嬉しい限りです。
今回でウィザードラゴンさんを登場させる予定だったのですが、ランドン戦の文字数が膨れ上がったので、またも分割です。
言ってしまえば新能力を得たアリーシャのチュートリアル回です。
チェイス「細かくチュートリアルをするのがテイルズのルールではないのか?」
D2・Gf「せやろか?」
強化されたアリーシャはフジの独断と偏見によるチョイスでTOZ本編には無い歴代シリーズの技を使用します。(アリーシャに似合いそうなやつ)
アリーシャの魔改造に反対の方もいるかもしれません
だが私は謝らない(ショチョ並みの感想)
ではどうぞ!
「ここからは、俺達の……ショータイムだ!」
その言葉と共に憑魔の群れに駆け出したウィザードとアリーシャ。それに反応しリザードマンの数体が迎え撃つように憑魔の群れから踊りでて剣をふりかざす。しかし……
「「ハァッ!」」
ウィザードとアリーシャは気迫の籠った叫びと共にウィザーソードガンと槍を振るいその、攻撃を受け流しすれ違いざまに斬撃と突きを叩き込む。
『ギャァァァァァア!』
強烈な攻撃に堪らず絶叫するリザードマンを尻目にウィザードとアリーシャは憑魔の群れへと飛び込んでいく。
「やぁっ!」
続けてアリーシャは再び鋭い突きをアーマーナイトに打ち込むが、その隙にアーマーナイトの背後から左右に別れて飛び出したリザードマンが襲いかかる。
「っ!……させるか!」
アリーシャは自身の身長を超える長大な槍を眼前で盾にするように回転させる。刺突以外にも用いれる程の大きな刃とそれを包み込む赤い炎が三体の憑魔を纏めて切り裂き焼き払う。
炎に包まれ倒れ伏した三体、その炎の中から次の敵目掛けて勢いよく突撃したアリーシャは炎を纏った槍の三連突きで怯ませる。
「一閃!」
叫びと共に自身の左下より払い上げた槍の炎と衝撃波により数体の憑魔が纏めて吹き飛んでいく。
「(凄い……全ての技が炎の力を纏っている……威力も段違い。まるで、ライラ様の神衣を振るうスレイの様だ……これもハルトの魔力の影響なのか?)」
今の技は『瞬華』『旋華』『散華』『龍華』、というアリーシャにとっては基本的といえる4属性の力を使わない槍術の連続攻撃だが、晴人の魔力により姿を変えたアリーシャの攻撃には常に炎の力が宿っている。それはアリーシャの記憶の中にある、神衣を纏い炎の大剣を振るうスレイの姿を思い起こさせた。
『ガァァァァァア!』
「……っ!?」
自身の得た力が何なのか考えたアリーシャの一瞬の隙を突き、彼女の背後から再び数体の憑魔が襲いかかる。慌ててアリーシャは迎撃しようとするが……。
「ハァッ!」
アリーシャの背後をカバーするように、両足に炎を纏ったウィザードが現れ、憑魔達に次々と脚技を叩き込んでいく。
「アリーシャ、考え事は後にしろって言ったろ」
憑魔の群れを蹴り飛ばし、アリーシャに注意をしつつも彼女と、背中合わせになる形でウィザードは再び剣を構える。
「あぁ、済まないハルト」
「どういたしまし……って言ってる場合じゃないな」
気づけば、背中合わせの二人を10体以上の憑魔が取り囲んでいる。
「やれやれ……しょうがない。行くぜアリーシャ!」
アリーシャに言葉をかけつつもウィザードはウィザードソードガンのハンドオーサーを起動する。
「あぁ! わかった!」
ウィザードの言葉に返答し、アリーシャは腰を落とし、燃え盛る槍を低く構える。
「(おそらく、この力は、魔力を与えてくれた晴人が使っている火の神衣と関係しているんだろう……。意識せずとも武器が炎を纏った状態なのだから、火属性の技を使う要領で更に大きい力を振るえる筈……ならば!)」
晴人に与えられた魔力により発現した自身の力を考察するアリーシャ。実際、彼女の考えは強ち、間違いではない。彼女が知っているウィザードの姿はフレイムスタイルという、能力のバランスが良く炎を操る力を備えた、ウィザードの基本形態だ。現状、炎を操る事が可能になったアリーシャと何らかの関係があるのは明白である。
【キャモナ! スラッシュ! シェイクハンズ!】
【スラッシュストライク! ヒー! ヒー! ヒー!】
ウィザードの剣とアリーシャの槍から激しく炎が噴き出す。
そして、背中合わせの二人はお互いの立ち位置を交換するようにぐるりと反転しながら己の得物を真横に一閃する。
「はぁぁっ!」
「魔王炎撃波!」
ゴォォォオォォォォ!
二人から放たれた炎の斬撃が周囲を取り囲んだ憑魔達を残さず吹き飛ばし、穢れを浄化する。爆炎の跡には気を失った両軍の兵士が倒れていた。
「で、できた……」
今までの自身が使っていた技のどれよりも強力な炎の攻撃。それを放てた事に自分自身が驚きを隠せないアリーシャ。
「チッ……無駄な足掻きを」
そんな彼女達の姿を、高みの見物を決め込んでいたランドンはつまらなそうに見つめている。
「やはり、私が引導を渡すほかなさそうだな」
他の憑魔を伴いながら、アリーシャ達へ向け、足を踏み出した。
「あとは師団長を含めて30体ってとこか……」
迫り来るランドン達を見つめながらウィザードは残りの敵の数を確認する。
「ハルト、二人であの憑魔達を抑え込まないと今、浄化したばかりの兵達が……」
「あぁ、わかってる。連中を浄化した人達に近づける訳には行かない」
このまま、防戦をすれば、今の戦闘により、浄化され意識を失い倒れた兵士達が危険だと判断したアリーシャは、此方に向かってくる憑魔を迎撃し抑え込もうと提案し、晴人はそれに同意する。
「アリーシャ、一人ずつ浄化するのは浄化された人が戦闘に巻き込まれる可能性があって危険だ。できれば、纏めて奴らを浄化したい」
その言葉にアリーシャは一瞬、考える素振りを見せ……。
「……それなら、一つ手がある。ハルト、あの憑魔達をできるだけ一箇所にまとめて身動きを封じる事はできるか?」
その問いかけに晴人は仮面の下で、不敵に笑った。
「奴らを、一箇所にまとめて、身動きを封じればいいんだな? 了解だアリーシャ」
「……! あぁ、頼んだよハルト!」
迫り来る憑魔達を見つめながら、アリーシャの考えを疑う事無く即座に作戦を請け負ったウィザードに、アリーシャ一瞬、驚いた表情をしたものの、すぐに表情を引き締める。
「そんじゃ、先ずは奴らを倒れた兵士達から引き離そう」
そう言ってウィザードは手に持った剣を逆手に持ち変えると腰のホルダーから緑色に輝く指輪を取り、左手の指輪を交換する。
シフトレバーを操作し左手の指輪をバックルにかざす。
【ハリケーン! プリーズ! フー! フー! フーフーフーフー!】
左手から展開かされる魔法陣。但し、今回の色は赤ではなく緑色のものだ。そして魔法陣がウィザードを通過すると、其処には、仮面とアーマーがエメラルドを思わせる緑色となり、ベゼルフレイム(頭部)の形状が逆三角形へと変化したウィザードが風を纏い立っていた。
「! ハルト、君は火以外の神衣も使え…っ!? これは!?」
天族との契約も無しに個人で神衣に近い力を持っているだけでも驚きだというのに、まさか、火属性以外の力まで有しているとは思わなかったアリーシャは驚きの声をあげるが、その言葉はアリーシャ自身の身に起きた変化に遮られた。
「これは……私の力も変化した?」
ウィザードの変化に合わせ、アリーシャの身にも変化が起きた。地面に緑色の魔法陣が展開され先程まで服装の赤く変化していた部分と瞳の色が緑色となり、籠手と具足の装飾も丸く赤い宝石から三角形の緑色の物へと変化し、得物である槍からは炎ではなく風を纏っている。
「あー、成る程、俺の力に反応してアリーシャの力も変わるって訳か。ま、丁度いいや。アリーシャ、行くぜ!」
威勢良く言い放ったウィザードは緑色の風を纏い浮き上がると、此方へ向かってくる憑魔の群れへ一直線に飛んでいく。
「飛べるのか!? 私も遅れる訳には!……ッ!」
文字通り風のような速さで敵に突撃したウィザードに続くべく駆け出したアリーシャだが、彼女は自身の身に起きた変化に驚いた。ウィザードのように飛行は出来ないものの、自身も風の様に地面から僅かに浮き上がり空中を滑るかの如く、駆ける事が出来たのだ。その速度は先程の比では無い。
「(風を操る力と速度の強化、それがこの力の特徴か!)」
ウィザードのハリケーンスタイルの特徴をその身で理解しながらウィザードに追従するアリーシャ。
「はぁっ!」
先行したウィザードは風を纏いながら独楽の様に回転し逆手持ちのウィザーソードガンで憑魔達を切り裂いていく。
「裂駆槍!」
憑魔達のど真ん中を切り抜けて行ったウィザードに続き、風による速度を維持したまま、風を纏う強烈な突きでアリーシャは憑魔の群れに切り込んでいく。
「櫓独楽!」
続けて一斉に周囲から襲い掛かる憑魔達をアリーシャは槍を地面に突き立て独楽の様に回転し遠心力を利用した蹴りを見舞い吹き飛ばす。風を纏った事により切れ味とリーチが増した技は複数の敵との戦いに有効に働く。それでも憑魔達は諦めずアリーシャに襲い掛かるが……
ダダダダダダァン!
『ガァァォォァォ!』
連続する発砲音と共に上空から飛来した弾丸が炸裂し憑魔達を怯ませる。ウィザーソードガンを銃へ変形させたウィザードが空中を旋回しながら銃撃を行ったのだ。
「アリーシャ! こいつらを引き離すぞ!」
「了解だ!」
二人はスピードを活かした動きで憑魔達を翻弄し注意を引きつけ、後方で倒れている兵士達から狙いを外させる。元の知性のある兵士相手なら有効ではない手だが、今の相手は強烈な穢れにより半ば正気を失った状態の憑魔達だ。案の定、憑魔達はあっさりと狙いをウィザードとアリーシャに定め、進軍を止め、兵士達から離れていく。
「(よし! 成功だ! 後は……)ッ!」
しかし、例外はある。憑魔を引きつけるアリーシャの眼前に巨大な大剣が迫っていた。
ドォン!
「チッ……ハズしたカ」
憑魔達の中ではまだ意識を維持している方であるランドンがアリーシャを狙った一撃を叩き込んだのだ。
「ヤはリ姫もドウシも利用カ値などナい、バルトロ大臣の妨げトなるキ様らはハイランドの繁栄にフヨウな存在だ! 私がこの場で死刑を申シ渡す!死刑に……死ケイ……シケイ!」
「……ランドン師団長」
風の力によるスピードで剣をギリギリ回避したアリーシャは哀しみを秘めた目でランドンを見据える。
狂喜を滲ませ、正気を失い、徐々に崩れていく口調。だがランドンの言葉の根本にはハイランドへの想いがあった。確かに彼は戦で武勲を立てることを望む典型的な軍人ではあるものの、アリーシャが生まれるよりも前からハイランドの為に戦ってきたのだ。アリーシャは自身の師から彼がハイランドにもたらした功績の数々を聞いたことがある。考え方が違ったとはいえ、ハイランドの為に戦い続けた彼が憑魔となり穢れ人でなくなりつつある事にアリーシャは哀しみを覚えた。だからこそ……
「ランドン師団長……私が貴方を助けます。貴方もまた、これからのハイランドに必要な人間だ」
必ず救うと心に誓い、アリーシャは槍を構える。
「グォォオォォオォ!」
最早、獣のそれと化した叫びをあげるランドンは再び大剣をアリーシャへ向けてた叩きつける。アリーシャはサイドステップでそれを回避すると回転し槍を勢いよく真横に振るう。
「夜叉燕!」
叫びと共に放たれた横薙ぎの真空波がランドンに炸裂する。風の力を纏ったことで強化された真空波は2メートルを優に超えるランドンを切り裂くと共にその体制を崩す。
「ウォォオ!?」
なんとか倒れないように踏ん張ろうとするランドンだが、そこに上空からウィザードが舞い降りる。
「ハァッ!」
空中から舞い降りながらの斬撃を浴び、ランドンは大きく後退する。
「アリーシャ、そこは『私が』じゃなくて、『私達が』って言う所だぜ?」
着地し今度は青い宝石の指輪を左手にはめながらウィザードはアリーシャに話しかける。
「あっ! そ、その…済まない」
「わかればいいさ」
律儀に謝るアリーシャに内心で苦笑しつつもウィザードは指輪をベルトにかざす。
【ウォーター! プリーズ! スイ〜スイ〜スイスイ〜!】
左手を頭上に掲げ展開された水を纏う青い魔法陣を通過したウィザードはサファイアを思わせるひし形の青い仮面へと姿を変える。
「今度は水の属性か!」
ウィザードに合わせてアリーシャの姿も青を基調とするものになり、宝石は青いひし形へと変化する。
そこに襲い掛かる憑魔。
「ふっ!」
繰り出された槍を流れるような動きで受け流すウィザードは懐に潜り込み肘打ちを叩き込み怯ませた隙に蹴り飛ばす。
「ガァァァァァァア!」
ランドン叫びをあげたランドンが迫り大剣でウィザードへ斬りつけようとする。しかし、それよりも早くウィザードは右手につけ変えた指輪をバックルにかざす。
【リキッド! プリーズ!】
ウィザードを両断するべくして振るわれた大剣はその目的通りウィザードを両断した……
「ゴァ!?」
否、体を液体に変えたウィザードの体をすり抜けたというのが正しい。全力で振り抜いた大剣が手応えなくすり抜けランドンは体制を崩す。
「本当になんでもありだな! 君は!」
その隙を逃さずにアリーシャが仕掛ける。
「海龍旋!」
回転しなが水を纏う槍を振りあげ、前方に発生した巨大な水流がランドンごと前方の憑魔を押し流す。
「(水の神衣に変わった瞬間から、私の内の力が増した……水属性を操る力と、霊応力の底上が得られるのか)」
霊応力を使用する技を使用した感覚からウィザードのウォータースタイルを理解するアリーシャ。
「お次はこいつだ!」
ウィザードは黄色に輝く指輪をはめ、バックルにかざす。
【ランド! プリーズ! ドッドッドッドドドン! ドンッドンドンドン!】
足元に現れた黄色魔法陣の輝きに照らされウィザードが再び姿を変える。頭部の形状は四角になり、その色はトパーズを思わせる黄色である。
「地属性……まさか四属性全てを使えるとは……」
ウィザードに合わせ、瞳と服装を黄色を基調としたものとなり、装飾である宝石が四角く黄色い物へと変化させながら、アリーシャは遂に火水風土の四属性全てを披露したウィザードにアリーシャ感嘆の声を漏らす。
「(天族の方達の力も借りずにこれだけの力を振るえるなんて……ハルトは一体、何処からこれ程の力を……?)」
晴人の話から彼の持つ指輪は魔宝石という特別な力を持つ石から作られた物だとは聞かされていたが、その指輪の力を引き出しているのは他ならぬ彼の内に秘められた魔力だ。
アリーシャが知る限り、幼い頃から天族と共に過ごし高い霊応力を持つスレイですら、天族の力を借りずにこれだけの真似はできなかった。だというのに、アリーシャが見る限り、晴人は独力で四属性の力の全てを振るっていた。
「(魔法使い……人の域を超えた導師と似て非なる力……ハルトはどうやってその力を得たのだろう?)」
そんな疑問が脳裏をよぎったアリーシャを他所に襲い掛かる憑魔達、ウィザードは左右繰り出された二本の槍を回避するとその肢を掴み強烈な力で引き寄せる。体制を崩しウィザードに引き寄せられた二体憑魔にウィザードは両の手を広げ通り過ぎざまにラリアットを叩き込む。天と地が逆転したかのように恐ろしい勢いで回転した憑魔が頭部を地面に叩きつけらる。
「おっと!」
そこに襲い掛かる憑魔の槍の攻撃も回避し再び槍の肢をキャッチするウィザード。そのまま憑魔ごと槍を持ち上げるとその場で一回転し遠心力をつけ、こちらへむかって来ている憑魔の群れへと憑魔を投げつける。
『グァアァァァア!』
まるで、投げられた憑魔に激突し、憑魔の群れはボーリングのピンのように吹き飛ばされた。
「キサマァァァァァア!」
そこに、激昂したランドンが襲い掛かり大剣で突きを放つが。
「まったく、困った暴れん坊ちゃんだ」
【ディフェンド! プリーズ!】
余裕を崩さないウィザードは防御の魔法を使用する。先程の炎の魔法陣による盾とは異なり、地面に現れた黄色い魔法陣から長方体の岩がせり上がる。
ドガァ!
「ナァッ!?」
ランドンの大剣は岩に深々と突き刺さる岩に亀裂が奔るものの貫通する事は出来ずに阻まれる。
「今だ! アリーシャ!」
「あぁ! 任せてくれ!」
晴人の言葉に応えながらアリーシャは眼前の岩の盾めがけて槍を構える。
「(地の神衣……地の力を操り、力が強化される………ならば!)」
「剛・魔神剣!」
剣圧で攻撃する技である魔神剣を、地属性を操り、パワーに優れるウィザードのランドスタイルの特徴を利用し、アレンジされたその技は、強烈な衝撃波を放ち、亀裂の入っていた岩の盾ごとランドンを吹き飛ばす。
気づけば憑魔達の群れは全体的にダメージを負い、当初の目論見どおり、一箇所に纏められていた。
「いけるか? アリーシャ?」
「あぁ! あれ位の範囲なら問題ない!」
「了解! ならトドメは任せる!」
そう言ったウィザードは左手の指輪を交換しベルトにかざし、アリーシャと共に再び、赤を基調としたフレイムスタイルへと姿を戻す。
「ほらよ! じっとしてな!」
右手の指輪を交換し魔法を発動するウィザード。
【バインド! プリーズ!】
ベルトの音声と共に憑魔達の周囲にいくつもの魔方陣が出現しそこから鎖が飛び出しランドンを始めとする憑魔達に巻きつき拘束する。
「いけ! アリーシャ!」
その言葉にアリーシャ槍を地面に突き刺し瞳を閉じながら意識を集中させる。
「(集中するんだ……ハルトが与えてくれた力に……炎を操る事に秀でたこの姿ならできる筈だ……)」
思い描くのは、火の神衣を纏ったスレイが力を振るう姿。本来なら天族のみが扱うことのできる秘術、『天響術』を思い起こしながらアリーシャは魔力を操る。
彼女の意識が研ぎ澄まされるのに呼応するように彼女の足元に輝く赤い魔法陣が展開される。そして……
「炎舞繚乱! ブレイズスウォーム!」
アリーシャの叫びと共に全ての憑魔達を炎を纏う強烈な熱風が包み込む。
『ガァァォォァォァァァァア!!』
響き渡る憑魔の叫び。アリーシャは憑魔の浄化を確信する。
しかし……
「マダダァッ!」
ランドンだけは耐えていた。浄化され倒れ伏した兵達の中でランドンは膝をつきながらも未だに憑魔の姿を保っている。
「(くっ……やはり、スレイの様にはいかないか)」
自身の記憶にある火の天響術をイメージし晴人に与えられた力で再現したアリーシャだが、力のコントロールがまだ未熟だったのか、ランドンを浄化する迄には至らなかった。
「いや、上出来だアリーシャ! 行くぞ!」
ウィザードは右手の指輪を交換しながらアリーシャに言葉を投げかける。
「!!、わかった! 」
その言葉にアリーシャは頷くと槍をクルリと回し構えなおす。
「フィナーレだ!」
決め台詞と共に指輪をベルトにかざすウィザード。
【チョーイイネ! キックストライク! サイコー!】
流れる呪文と共にウィザードはその場クルリと回転しローブを後ろに払いながら右足を前にして、重心を低くし構えをとる。右足を中心に赤い魔法陣が展開され強力な魔法の炎が足に纏わり付いた。
「これで決める!」
同様にアリーシャの槍にも赤い魔法陣が展開され槍が纏っていた炎の勢いが増していく。
二人は同時にランドンに向けて駆ける。
「「ふッ!」」
そして、ウィザードはローンダートを決め、勢いをつけて空中に跳び上がる。
アリーシャも同様に槍を地面に突き立て棒高跳びの要領で跳躍した。
そして……
「鳳凰天駆!」
「タァァァァァッ!」
槍から噴き出した炎が鳥の姿を成し、それを構えたアリーシャと右足に炎を纏ったウィザードが空中から勢いよくランドンに向けて突撃する。
ドガァァァァ!
「グワァッ!」
アリーシャの『鳳凰天駆』とウィザードの『ストライクウィザード』がランドンに炸裂した。
ズザァァァァ!
勢いのままランドンの背後に着地し膝をつきながら勢いを殺すアリーシャ。
バサァ!
対象的にローブを翻し、優雅に着地するウィザード。
その背後でランドンの体に赤い魔法陣が浮き上がり。
「グワァァァァァアッ!」
ドガァァァァァアン!
絶叫と共にランドンが爆発に飲み込まれた。
「ハッ!? 浄化は!?」
ランドンの身を案じ慌てるアリーシャ。
「大丈夫だ、アリーシャ。ほら……」
ウィザードの言葉通りに煙が晴れた場所には人の姿を取り戻したランドンが倒れている。
「うっ……私は…?」
「良かった……助ける事ができた」
意識を朦朧とさせながりも呻くように言葉を漏らすランドンに無事を確信したアリーシャは安堵の息を零しながら駆け寄っていく。
「ふぃ〜」
同じくウィザードもいつもの気の抜けた声を漏らした。
「(これで、とりあえず本陣は大丈夫だろ、後は……)」
ランドンを浄化したとはいえ未だに戦場を包み込む穢れの根本的な解決には至っていない。恐らくはこの状態を作り出した元凶が存在するのだろうと、自身が感じた巨大な穢れの存在を晴人は思い出す。
「……」
何かを考え込んだウィザードは5つの指輪を取り出し何かを確認するようにみつめる。
「(やっぱり、他の指輪も使えるかは怪しそうだな……いけるか?)」
彼が取り出した内の先程の戦闘で使用した指輪とは異なる赤青緑黄の4つの指輪は、まるで力が失われたかのように輝きを失っていた。
そして……残る最後の指輪。他の指輪よりもひと回り大きい水色のダイヤモンドを思わせるそれもまた、僅かに輝きを残すものの、本来の輝きを失ってしまっている。
「まぁ、やるしかないよな……『覚悟の上、無茶しよう』ってね……」
軽口を叩くウィザード。しかし、その言葉には強い覚悟が込められていた。
友人との雑談
フジ「ゼスティリアのパーフェクトガイドを買ってみた」
友「大丈夫? ファミ通の攻略本だよ?」
フジ「まぁ、テイルズシリーズの攻略本は毎回買ってるしな。本編が描写不足だし、設定が知れると思えば……」
友「巷ではパーフェクト燃料とか言われている代物を買うなんてブレイブな奴だ」
フジ「皆まで言うな」
友「そんで幾らしたんだ?」
フジ「2100円(税別)」
友「約1.6アリーシャか」
フジ「今度、俺の前でその単位使ったらムッコロスからな」
友「お、おう……まぁ読んでみようぜ」
読破後
友「新たな地雷要素が見つかったな」
フジ「もう、考えるのはやめだぁっ!」
友「自分流で行け!」