Zestiria×Wizard 〜瞳にうつる希望〜   作:フジ

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仕事が忙しい……

長くなってまさかの三分割になってしまった……IS×SWORDを書こうか悩んだんですが、元々1話に纏めるつもりで書いていた『Just the Beginning』が殆ど書き上がっていたので此方を先に完成させてしまいました。後篇は夜に更新します。IS×SWORDをお待ちの方は次回で、必ず更新しますのでお待ちください。




4話 Just the Beginning 中篇

「約束する、俺がお前の……最後の希望だ」

 

自分を見つめ真剣な表情でそう告げた晴人に、アリーシャが最初に抱いた感情は『安心』だった。その言葉に込められた感情に嘘は無い。その言葉はきっと、口先の言葉では無く、晴人の信念と呼べるような何かが込められた言葉なのだろう。だからこそ、彼と出会ったばかりの自分ですら、それを心強く感じるのだ。

 

気付けば、先程まで彼女の中に渦巻いていた絶望の影は、少しずつ弱まっていた。胸の内に芽吹いた希望に背中を押されながら、彼女は晴人に自身の願いを告げる。

 

「……私は…スレイを…助けたいっ! だからハルト!君の力を貸してほしい!」

 

それは、一人で問題を抱え込み続けていた彼女にとって初めて、自分から助けを求めた言葉だった。

 

その言葉を受けた晴人は、微笑みを浮かべ、使用人のように頭を下げ、芝居めいたキザったらしい口調で返答する。

 

「お任せください、お姫様」

 

一瞬の躊躇いもなくアリーシャの願いを受け止めた希望の魔法使いにアリーシャは嬉しそうに笑みを浮かべた。

 

「ありがとう……ハルト」

 

「お礼なら、アリーシャの願いを、叶えてからでいいさ」

 

晴人は頭をあげると右手に指輪をはめ、彼女の願いを叶える為に、早速行動を開始しようとする。

 

「指輪が没収されなくてよかったよ」

 

この部屋へと連れて来られる前にアリーシャは武器である槍を奪われたが、晴人の魔法の事を知らない騎士達は指輪の事を見逃した。晴人からすれば、逃げてくれと言わんばかりの行為なのだが、今は好都合と言える。

 

「ハルト、君はあの姿……ウィザードになって兵達を突破するつもりなのか?」

 

脱出を企てる晴人に対してアリーシャはその方法を問うが、晴人は首を横に振りそれを否定する。

 

「いや、力づくでの脱出はしない。下手に怪我人を出したくないし、下手したら、それを理由にあの大臣が、またアリーシャに冤罪をかけてくるかもしれないからね」

 

確かに、ウィザードに変身すれば、鍵をかけられた扉など簡単に蹴破ることができるし、城内の兵に囲まれても蹴散らせるだろう。しかし、アリーシャはそんな事をして欲しい訳ではない筈だと晴人は考える。

 

「そうか、よかった」

 

戦闘での強行突破を否定した、晴人にアリーシャも少し安心した表情をする。彼女としても自国の兵士達を傷つけたい訳では無いのだ。

 

「……しかし、そうするとどうやって脱出を?」

 

そう問いかけるアリーシャに対して晴人は不敵に笑いながら答える。

 

「ま、戦うだけが、魔法じゃないさ。なぁアリーシャ、この部屋の真下の階ってどうなってる?」

 

その質問の意味がわからず困惑しつつもアリーシャは晴人の質問に答える。

 

「この部屋の下? 確か、書物などが管理されている部屋の筈だ。見張りの兵士もいないと思うが……」

 

 

「なら、問題無さそうだな。アリーシャ出来るだけ俺に近づいといてくれるか?」

 

「近くに? わかった」

 

戸惑いながらもアリーシャは晴人の真横に並ぶように移動する。

 

「じゃあ、行くか。掴まってなよアリーシャ」

 

「? どういう意味だハルト?」

 

「こういうことさ」

 

何が起こるのか問いかけるアリーシャに対して晴人はその答えを見せるべく指輪をバックルにかざす。

 

【フォール! プリーズ!】

 

「え? ……きゃあ!?」

 

ベルトから響く声と同時に突如として、晴人達の立っている床に大きい穴が空き、晴人とアリーシャの二人はそのまま下の階へと落下する。その唐突さにアリーシャは驚き、何時もの男言葉では無く女の子らしい悲鳴をあげた。

 

 

ダン!

 

 

一瞬の浮遊感と共に2人は大きな本棚の上へと着地する。

 

 

「おっと、大丈夫か? アリーシャ?」

 

体勢を崩したアリーシャを片手で支えながら話しかける晴人だが、当のアリーシャは驚きに固まってしまい、反応が遅れてしまう。

 

「あ、あぁ、大丈夫だよハルト。だ、だから……その……手を離してもらってもいいだろうか?」

 

急な落下により体勢を崩したアリーシャに対して晴人は左手を腰に回すように支えている。結果、アリーシャは彼に寄り掛かるような体勢になってしまっていた。流石に、恥ずかしかったのか、頰を染めながら手を離してもらうようアリーシャは晴人に告げる。

 

「ん? あぁ、ゴメンゴメン」

 

そんな彼女の態度に、軽い調子で返す晴人。晴人は手を離すと本棚の上から床へと跳び下り着地する。続いてアリーシャも床へと下りた。

 

「……なんでもありだなハルトの魔法は」

 

天井を見つめ、先程空けた穴が完全になくなり元通りになっているのを見て唖然とするアリーシャ。

 

「驚くのは後だ。お次はコイツだ」

 

指輪をつけかえた晴人は、もう一度、指輪をバックルへとかざす。

 

【ドレスアップ! プリーズ!】

 

音声と共に魔法陣が現れ晴人とアリーシャを通過する。魔法陣を通過した2人の服装は白と青を基調とした服に兜や籠手を着けたハイランド兵の服装へと変化していた。

 

 

「今度は服が!?」

 

「これなら、場内を移動しても怪しまれないだろ?」

 

「な、成る程……だが、随分と手慣れているんだね」

 

「ん? まぁ、城に忍び込むのは初めてじゃないからね。今回は浸入じゃなくて脱出だけどさ」

 

「……何故そんな経験があるのか、非常に気になるのだが」

 

さらりと不穏な発言をする晴人に理由を問うような視線を向けるアリーシャだが、晴人はそれを受け流す。

 

「機会があれば話してやるよ、今は戦場に急がないとな。さぁ行こう、城内の道案内は頼むぜアリーシャ」

 

そう言って話を打ち切る晴人の言葉にアリーシャは頷く。残された時間は少ない、ヘマをする訳にはいかないとアリーシャの表情が引き締まる。

 

「わかったよ。兵への対応は私がするからハルトは可能な限り喋らずについてきてくれ」

 

「オッケー、そこはアリーシャに任せるよ」

 

アリーシャの言葉に晴人が頷く。

 

「よし、では行こう」

 

 

アリーシャはそう言うと城内へ繋がる扉に手をかけた。

 

 

 

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結論から言えば2人は危険無く城内から脱出できた。アリーシャの対応により城内の兵士達にも怪しまれることなく城を出た2人はそのまま貴族街を抜け、夜明け前で人気の無い街の中央区を駆け抜け、橋へと繋がる街の門を通過した。

 

「ここまでは順調な感じだな。あとは時間との勝負か」

 

「だが、このままではグレイブガント盆地に辿りつけるのは早くても2日かかってしまう……手があるのか? 」

 

 

バルトロからの伝令を預かり、グレイブガント盆地へ向かうという嘘を信じた門番は兵士の姿をした晴人達をあっさりと街の外へと通し、二人はレディレイクの入り口から向こう岸までを繋ぐ湖上にかかった大きな橋まで辿りついた。すると晴人はドレスアップの魔法を解除し、足を止め右手の指輪を交換する。

 

「2日ってのは馬ならの話だろ? なら大丈夫さ。カボチャの馬車は用意できないけど、とびっきり速いヤツなら用意できる」

 

 

そう言って晴人は空間を繋ぐ魔法『コネクト』の指輪をバックルにかざす。

 

【コネクト! プリーズ!】

 

音声と共に赤い魔法陣が出現し、晴人が手を魔法陣から目的の物を引き出す。それはアリーシャにも見覚えのある物だった。

 

「それは、フォルクエン丘陵に置いて来た……」

 

晴人が魔法陣から取り出し物は、彼が丘陵地帯の茂みに隠した筈のアリーシャが見た事の無い乗り物だった。

 

「これなら、昼の開戦に間に合うのかハルト?」

 

戸惑いながら晴人に問いかけるアリーシャ。それもそうだろう、見た事の無い車輪を二つ付けただけの目の前の乗り物が、この国の名馬を遥かに凌ぐ速さを出せると言われても、すぐに信じるのは難しい筈だ。

 

「このタイミングだとギリギリになると思うけど、少なくとも、大遅刻はしなくて済むと思うぜ」

 

アリーシャの問いに自信を持って返しながら晴人は愛車であるマシンウィンガーに跨り黒いフルフェイスヘルメットを被る。

 

「はい、アリーシャもこれを被って」

 

「これは……兜なのか?」

 

「ん〜……まぁ、そんなところかな。被ったら俺の背後のシートに乗ってくれ」

 

ヘルメットを被った晴人は、続けてアリーシャへ、もう一つのヘルメットを渡す。アリーシャは見慣れないデザインに首を傾げながらもグレーのヘルメットを被ると晴人の指示に従い彼の背後のシートに跨った。

 

「飛ばすぜアリーシャ。しっかり掴まってろよ」

 

「わ、わかった!」

 

晴人の忠告に素直に従うアリーシャは、少し恥ずかしがりながらも、晴人の背後から腰に両手を回ししっかりと捕まる。

 

「よし、じゃあ行くぜ!」

 

そう告げた晴人はエンジンをかけるとアクセルを思い切り回し愛車を加速させる。

 

 

ブオォォォォォォォォォン!

 

 

 

古めかしい石造りの様式の街に似つかわしくないバイクのエンジン音が響き渡る。

 

 

「ッ!?」

 

馬とは比べものにならない急速な加速に驚くアリーシャは体勢を崩しそうになるが晴人に掴まる力を強め、体勢を立て直す。

 

 

晴人達を乗せたマシンウィンガーはあっという間に湖上にかかる橋を駆け抜け、橋を渡りきると南へ向けて方向転換し丘陵地帯へ向かう為にレイクピロー高地から流れる川にかかる橋を目指す。

 

「凄い! 凄いよハルト! この速度なら本当に間に合うかもしれない!」

 

予想を上回るバイクのスピードにアリーシャは喜びの声をあげる。戦争が起こるかもしれない状況に不謹慎かもしれないが、それもしょうがないだろう。上手くいけば、被害が広がる前にスレイ達を戦争から離脱させ、尚且つ、バルトロの考えた導師頼りの進軍も止められるかもしれないという希望が見えてきたのだ。

 

「喜ぶにはまだ早いさ。地面も舗装されていない分、運転も荒くなるから注意しろよアリーシャ!」

 

「わかったよハルト! だが、開戦まで時間が無い! 私に気を遣わないで全速力で頼む!」

 

「りょーかいッ!」

 

アリーシャの言葉にハルトは更にアクセルを回しマシンウィンガーを加速させる。

 

「ッ! もう夜明けか」

 

レディレイクへと繋がるレイクピロー高地の川にかかった橋へと差し掛かるその時、晴人達の左の方角から眩い光が昇り始める。

 

朝日に照らされ、湖上の街レディレイクは

合わせ鏡のように澄んだ湖と共に燦然と輝いている。

 

「連行されてる時は見れなかったけどこんなに綺麗だったんだな……」

 

絵画のような美しい光景を横目に見た晴人はポツリと賞賛の言葉を漏らす。だが、晴人は言葉の後に表情を曇らせた。

 

「……けど、一筋縄ではいかなそうだ」

 

何も知らない人々から見れば今のレディレイクの光景はとても美しく映るだろう。しかし、晴人の瞳には、レディレイクを包む穢れが見えていた。スレイ達が救出した加護天族により、加護領域が復活したとはいえ、信仰が失われつつある現状では穢れの自浄作用も完全に取り戻せていない。レディレイクを包む穢れは終わらない戦乱と災厄に苦しむハイランドの民の心の闇そのものなのかもしれないと晴人は思う。

 

「……ま、俺は俺のやるべきことをするだけだよな」

 

静かに呟きながら気持ちを切り替える晴人。アリーシャの夢は穢れのない故郷を取り戻すことだ。だとすればアリーシャを手伝う事は結果的にあの穢れを祓う事にも繋がっていくだろう。ならば、操真晴人のやるべきことは決まっている。まずは、1人のお姫様の希望を守り抜く、彼女の希望(ゆめ)が、いつかもっと多くの人々の希望となっていくことを信じて……

 

決意を固めた晴人は戦場を目指してバイクを更に加速させた。

 

 

 

 

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日が昇り始め、人々が活動を始めるであろう時間帯、晴人とアリーシャは昨日、師団長達により拘束された場所であるグリフレット橋へと差し掛かっていた。

 

「……っ! あれは」

 

何かに気づいた晴人はバイクを停止させる。

 

「どうしたんだ? 晴人? ……あれは! マーリンドの!」

 

バイクを停止させた晴人の視線の先を見たアリーシャ。その先には数台の馬車と多くの人々の集団がいた。恐らくは橋の近くで夜を明かしたのだろう。

 

「アリーシャ、あの人達は?」

 

「マーリンドの街の住民達だ。恐らくはレディレイクへ一時的に避難しに向かっているんだろう。もし、グレイブガント盆地をローランス軍に突破された場合、そこから1番近い街はマーリンドなんだ」

 

 

彼らを知っているのか問う晴人にアリーシャは彼らが何故此処にいるのか説明する。そんな二人に集団の中にいた1人の年配の男性から声がかけられた。

 

「アリーシャ姫! 何故此処に?!」

 

「ネイフトさん! 良かった、ご無事だったのですね」

 

バイクを降り駆け寄るアリーシャにネイフトと呼ばれた男性は戸惑った様子でアリーシャへ話しかける。

 

「貴女にローランス軍を手引きしたなどという冤罪がかけられたと聞きレディレイクへ着いたら、街の皆で無実を訴えに行こうと思っていたのですが、ご無事で本当に良かった……」

 

「ッ! ……ありがとうございます」

 

「礼を言うのは此方の方です。導師と共にマーリンドを救ってくださった貴女が、ハイランドを売るような方ではない事は街の皆もよくわかっています。私も街の代表として貴女には感謝しています」

 

「そんな、私は大したことなど何も……」

 

マーリンドの人々が自分の身を案じてくれた。その事実にアリーシャは、その言葉をどう、受け止めればいいのかわからず、戸惑ってしまう。しかし、時間がない事を思い出した彼女は、ネイフトにスレイ達がどうなったか知らないか問いかけた。

 

「そ、そうだ! ネイフトさん! スレイ達がどうなったか知っていないだろうか?」

 

「貴女が去った翌日に導師は、避難する我々と共にマーリンドからレディレイクへ向かっていたのですが……このグリフレット大橋でランドン師団長に……」

 

「……ッ! やはりバルトロの言っていたことは本当だったのか……」

 

「導師はそのまま師団長と共にグレイブガント盆地へ行かれました。街を守ってくれた木立の傭兵団も我々に何名かの護衛を残して其方へ……」

 

「……セキレイの羽、あの商人ギルドの者達は? 見当たらないようだが?」

 

「彼女達は、別件があると言って、昨晩、には……」

 

「そうか、情報感謝する。貴方達はこのまま、レディレイクへ向かってくれ」

 

ネイフトに避難を諭しアリーシャは晴人の方へと踵を返す。

 

「あ、アリーシャ姫はどうするのです!?」

 

彼女の行動に戸惑うネイフトは、その目的を問う。その言葉に振り返ったアリーシャは、迷わず返答する。

 

「どうしても、やらなくてはならないことがあるんだ。だから私は戦場へ行く」

 

「き、危険です。おひとりでそのような!」

 

アリーシャの発言に驚いたネイフトは、慌てて止めようとする、だが、アリーシャは微笑みながらその言葉を否定する。

 

「ひとりじゃないさ……」

 

「え?」

 

「私にも力になってくれる人がいる」

 

その言葉にネイフトはアリーシャの後方ででバイクに跨っている晴人に視線を向ける。

 

「彼のことを仰っているのですか? ……その…彼は一体?」

 

その問いかけにアリーシャは力強く答える。

 

 

「私の『最後の希望』……かな?」

 

そう言うと、アリーシャは再び晴人の方へ踵を返し、駆け寄るとマシンウィンガーの後部座席に跨る。

 

「話は済んだ?」

 

「あぁ……ハルト、残念だが、バルトロの言っていた事は事実のようだ」

 

「みたいだな。只の脅しなら良かったんだけど、しょうが無い、急ごうか!」

 

 

ブォォオォォォォォン!

 

 

再びエンジンを吹かせて再発進したマシンウィンガーはあっという間グリフレット橋を渡り南西を目指し駆け抜けて行った。

 

 

「あの青年は一体……」

 

見慣れない乗り物に跨り、アリーシャと去って行った晴人を見て、ネイフトは困惑の声を漏らした。

 

 

 

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グリフレット橋を越え、南へ向かう右の細道をバイクで駆け抜けた晴人達は、開けた道へと出る。

 

「後はそのまま南下して行くだけだ! 」

 

晴人に指示を出すアリーシャは頭上の太陽を見上げる。太陽は頭上に昇るか昇らないかのギリギリのラインだ。

 

「これなら、開戦前に何とか到着できる!」

 

安堵の表情を浮かべる。しかし……

 

 

 

ドォォン! ドォォン! ドオォン!

 

 

まるで大地が爆ぜたかのような炸裂音が戦場から離れた晴人達の耳に届いた。

 

「ッ! 今のは!」

 

「あの音……まさか、神衣の力でスレイが! ?」

 

普通ではない音にアリーシャはそれが戦場でスレイが神衣で戦っている物だと考える。

 

「オイオイ……まさか、開戦が早まったっていうのかよ」

 

 

「ッ! ……どうやらそのようだ」

 

事情は分からないが、何かしらの理由で開戦の時刻が早まったのは間違いない。晴人とアリーシャの顔に焦りが浮かぶ。

 

「(妙だ……そんな簡単に命令の開戦時刻が変わるとは思えない……これでは、まるで、私達が開戦に間に合いそうな事に何者かが気付いたようだ……)」

 

 

狙い済ませしたかのような、開戦時刻の繰り上げに疑問を覚えるアリーシャ。そんな彼女の態度に疑問を覚えた晴人はアリーシャへ声を掛けようとするが……

 

 

「? どうしたんだ? アリーシ……ッッ!!」

 

突如、言葉を切り戦場の方角を見つめる晴人。その様子にアリーシャはどうしたのかと問いかける。

 

「どうしたんだ? ハルト?」

 

「……あの戦場からヤバそうな気配を感じた。昨日のデカイ鳥の比じゃないくらい……」

 

「ッ! 戦場から巨大な穢れを感じたというのか!?」

 

晴人の言葉にアリーシャは驚きの声をあげる。確かに人の負の感情が集まる戦場は憑魔発生の環境としては最適かもしれない。だが、昨日、上位種である変異憑魔を単独で圧倒した晴人が、それを圧倒的に上回る穢れを感じたというのだ。それほどの存在が戦場に現れれば、兵士達はどうなってしまうのか……。

 

 

「兎に角、そろそろ到着だ。迷ってる暇はないぜ!」

 

「あぁ、わかっているよ。ここまで来て逃げ出したりなんかしない!」

 

「上出来だ! 」

 

強大な敵の存在を知ってもアリーシャの覚悟は変わらない、その言葉を聞いた晴人は彼女の思いに答えるべく右手をハンドルから離し、ベルトに指輪をかざす。

 

【ドライバーオン!】

 

 

続けて、音声と共に腰に現れたベルト『ウィザードライバー』を操作しハンドオーサーを切り替える。

 

 

【シャバドゥビタッチ ヘーンシーン! シャバドゥビタッチ ヘーンシーン!】

 

 

鳴り響く音声と共に、晴人は叫ぶ。

 

 

「変身!」

 

 

そして左手の指輪をバックルにかざし、そのまま正面に突き出す。

 

【フレイム! プリーズ! ヒー! ヒー! ヒーヒーヒー!】

 

突き出した左手から走行するバイクの正面に赤い魔法陣が出現し晴人はそのままバイクごとその魔法陣を通過する。するとその姿はアリーシャが昨日見た、仮面の戦士『ウィザード』へと変化した。

 

「頼む…無事でいてくれ……」

 

スレイ達や戦場の兵士達の無事を願う声がアリーシャの口から溢れた。

 




余談ですが、今作での移動でかかる時間設定は自分が適当に決めています。イズチ〜レディレイクくらいでしたからね徒歩でどれ位なのか劇中で描写されたのは……

あと、テレポートさんは旅要素を台無しにしかねないので出禁です

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