Zestiria×Wizard 〜瞳にうつる希望〜 作:フジ
戦闘面白いしストーリーも好き嫌いは分かれるタイプだけど筋は一貫しててイケるやん!
連作にするなら何故一作目のゼスティリアもこのレベルで制作しなかったのかコレガワラナイ
なお、三部作疑惑
前回の更新で20件以上という過去最高レベルの感想が来て嬉しい悲鳴です。これがアニメブースト効果か……
てな訳で最新話です。どうぞ
「ス、スレイ!?」
「え、アリーシャ!?」
バイロブクリフ崖道を進むアリーシャ達の前に落下してきた女性に続き現れた青年。それは3人が追っていた導師スレイだった。
「スレイ……良かった。漸く追いつけた」
「アリーシャ、無事だったんだ! 良かった……でもどうして?」
お互いの無事を喜び合う2人。だが、スレイはハイランドの姫であるアリーシャが何故このローランス領内に居るのか困惑する表情を浮かべた。
その時_____
「ロゼ、無事か!?」
スレイの身体が輝き、そこに1人の男が現れる。見る限り天族であろう男はザビーダと同じく180後半はあろうかという長身に緑インナーを除いてジャケットやズボンは黒一色であり、天族は白と自身の扱う属性の色を合わせた服装をしていることが多く、またそういった天族としか会ったことのないアリーシャは内心で珍しいと感じた。
男の緑がかった髪は両目を隠してしまうほど長く、その上から表情を隠すほどに黒い帽子をかぶっており表情は伺いしれないが、その声に秘められた焦りから落下してきた女性を心配している様に見える。
「え? あぁ、大丈夫だってこれくらい。助けて貰ったおかげでピンピンしてるから! 」
「そういう問題じゃねぇ! バイロブクリフ崖道は注意して進めとあれほど言っただろうが!」
「うっ……わかったって! 次から気をつけるって!」
「いや、わかっていない! 大体お前は……」
「だから今度から気をつけるって言ってるじゃん!? あたしの保護者かアンタは!? 」
「……なーんだアレ?」
「さ、さぁ?」
突如現れた男と女性は何故か口論を始め、事態が飲み込めていない晴人とアリーシャは困惑する。
そこに再びスレイの身体が輝き、その周囲にアリーシャや晴人の知る者達が現れる。
「何をやっているんだあの2人は……それにしても。まさか君がローランスにきているとはな」
口論を繰り広げる2人に呆れながらも天族の青年、ミクリオはアリーシャの存在に驚いた声を漏らす。
「ご無事で何よりですアリーシャさん……ですが、何故ザビーダさんがアリーシャさんと一緒に……?」
アリーシャの無事を喜びつつ天族の女性、ライラはザビーダへと視線を向け戸惑いの表情を浮かべる。
「気にするだけ損よ。そいつ気ままにフラついてる奴だから何処にいても不思議じゃないわよ」
ライラの言葉に呆れた様な声を漏らしつつ天族の少女、エドナはジト目でザビーダを見る。
「よう、導師殿御一行! レイフォルクぶりだな」
「ッ! ザビーダ……どうしてここに!!」
「まさか、また憑魔狩りをするつもりじゃないだろうな……」
気さくに声をかけるザビーダだが、スレイとミクリオはザビーダに対して警戒したように表情を険しくする。
それを見てアリーシャは、自分が不在だった時にザビーダとスレイ達がレイフォルクで出会っていたという話を思い出す。
「(スレイ達の反応……やはりレイフォルクで何かあったのか……まさか!?)」
思えばザビーダはラストンベルまで単独行動をとっていた。その事を考えれば彼の憑魔への対抗手段は彼の持つジークフリートのみ……となればとアリーシャの中で1つの答えが浮かび上がる。
「ま、待ってくれスレイ、ミクリオ殿! ザビーダ様は今、私達に協力してくれているんだ。だから話を聞いて欲しい!」
ザビーダが何をしたのか薄々勘付いたアリーシャは割って入る形で仲裁を始める。これから協力し合う者達同士で争う様な事は避けたかったからだ。
「アリーシャ!? だがこの男は!」
「憑魔狩りをして旅をしている。その事は理解しています。ミクリオ殿やスレイにとって憑魔となった天族を殺すというやり方が認められない事も……私とてそのやり方を認めている訳ではありません……ですが、先日のラストンベルでザビーダ様の協力のお陰で私達は天族と人間を救う事が出来ました……ザビーダ様も、浄化が可能であれば憑魔を殺す事は控えて頂けると約束してくれました。ですから、どうか矛を納めてはいただけませんか?」
「……この男が?」
ミクリオは警戒を緩めず鋭い視線をザビーダへと向ける。
おそらく、ザビーダはレイフォルクでスレイ達の前でジークフリートを使い、憑魔を殺したのだろう。その事に対してその場に居なかったアリーシャはその行為に対して肯定も否定もできない。
だが、ザビーダという男が面白半分で、命を奪う様な男ではない事は短い付き合いのアリーシャでも理解している。だからこそ無用な諍いはさけたかった。
「はい、ザビーダ様の協力のお陰でラストンベルの加護の復活にも成功しました。少なくとも今は協力してくれるそうです」
「アリーシャがそう言うなら、それは事実なんだろうけど……信用してもいいのか?」
アリーシャの言葉を受けスレイはザビーダへと問いかける。
「そいつは本当さ。これでも俺は『約束』に関しちゃキッチリした男なんでね。信用してくれ構わないぜ? それに俺としても無駄弾は使いたくないんでな……お前さん達がしっかり浄化できるってんなら協力するさ。『俺の目的の憑魔』以外にはな…… 」
「……ッ!」
「? ……エドナ様?」
ザビーダのその言葉にエドナが僅かに反応しアリーシャはそれを訝しむ。
なんとも言えない空気が漂う中、突如その空気を壊す様に声がかけられる。
「あー、まったくデゼルは小言がうるさいんだから……ん? どうかした? 神妙な空気になって?」
先ほど落下してきた赤毛の女性が一同の醸し出す空気に首を傾げている。
「あ、いやなんでもないんだ。えぇっと……確か君はセキレイの羽のロゼ……と言っただろうか?」
「え? ……あ! アリーシャ姫!? えぇっと……先程は命を助けて頂き_____」
ロゼと呼ばれた女性は慣れない口調で先程の件に関して感謝を述べようとするが、その口調のたどたどしさから無理をしているのが伝わってきてアリーシャは苦笑する。
「敬語は無くて構わないよ。普段通りに話してくれ」
「マジっ!? いや〜助かるよ!慣れない口調で我ながら話し辛くてさぁ〜」
途端に口調を崩したロゼはフランクな調子でアリーシャへと話しかける。そんな彼女に先程の黒服の天族が声をかける。
「構わないと言われたとはいえ態度を崩しすぎだ。お前はもう少しを気を遣え」
「えぇ!? 構わないって言ってくれてるんだからいいじゃん別に」
「限度ってものがあるだろうが」
「あぁ……また小言が始まった……」
黒服の天族の男の言葉にロゼはゲンナリとした表情を浮かべる。
そんな男にアリーシャは問いかける。
「えぇっと……貴方は?」
「……デゼル……風の天族だ。訳あって導師の旅に同行してる」
デゼルと名乗った男は口数少なく最低限の挨拶をする。
「デゼル様ですね。私はアリーシャ・ディフダ。どうぞ宜しくお願いします」
「……あぁ」
「えぇっと……」
素っ気なく返され何か気に障る様な事でも言っただろうかとたじろぐアリーシャだが、そんな彼女にロゼが近寄り耳元で話しかける。
「気にしなくていいって。デゼルはムッツリなだけだから」
「そ、そうなのか? あれは怒っているのでは……?」
「違う違う。時々饒舌になるけど、基本はあの状態なんだってば」
ヒソヒソと会話する2人だが……
「おい、聞こえてるぞ」
「「あ」」
しっかりと聴こえていたらしいデゼルの言葉に2人が固まる。
そんなやりとりに毒気を抜かれた他の面々は苦笑する。
「ハァ……なにやってるんだか……それで? アリーシャはどうしてここにいるのよ? というか、さっきからそこに立ってるそいつは誰?」
呆れた様に溜息を吐いたエドナは何故アリーシャがこの場にいるのか。そして、先程から遠巻きに会話を眺めていた晴人に視線を向け何者なのかとアリーシャへと問う。
「ん? 俺? いやさ。なんか色々と話してるからひと段落するまでは黙ってようかなと思ってさ」
そんな中、アリーシャが答えるよりも先に晴人はマイペースに返事をするが……
「ッ! 天族が見えているのか?」
「そう言えば、アリーシャさんも何故……」
天族が見えている晴人に対してミクリオは驚きの声をあげ、ライラは従者契約の解除されたアリーシャが何故天族を知覚できているのかという疑問を口にする。
「ええっと、ロゼとデゼルって言ったっけ? その2人以外には一応前に会ってるんだけどな」
「は? 覚えがないけど?」
「俺も……あれ? でもその声何処かで……」
晴人の言葉にスレイは何か引っかかったかの様な表情を浮かべる。
だが次の瞬間……
『キェェェェェェエ!!!』
『!?』
頭上から響き渡る叫び声に全員が空を見上げる。そこには……
「憑魔!?」
獅子を思わせる4本脚の身体に顔や前脚は鳥類である鷲の形をしており、その背中から生えた大きな翼で飛行する大型の憑魔がいた。
「グリフォン! 追ってきやがったか!」
「先程、私たちはあの憑魔に襲われたのです」
「おかげさまであたしは崖から真っ逆さまってわけ」
全員がグリフォンに対してそれぞれが得物を構え、臨戦態勢に移る。
そんな中……
「!! 何を!?」
「危険です! 退がって下さい!」
そんな一行の最前線に晴人がふらりと歩み出る。勿論、その行為にミクリオとライラは驚きの声をあげ静止しようとするが……
「大丈夫だって。それに手っ取り早く自己紹介もしなくちゃいけないからな」
「自己紹介? 何よ? この状況で一発芸でもするっての?」
「ちょ!? アリーシャ!? あの人大丈夫なの!?」
「悪戯に前に出るな! 死ぬぞ!」
それぞれが口々に退がれという中、アリーシャとザビーダは信頼したように表情を崩さない。
「大丈夫です。見ていてください」
「まぁ、見てな。おもしれぇもんが見れるぜ」
そして晴人は降りてきたグリフォンを前に口を開く。
「俺は操真晴人」
名を告げながら右手の指輪がバックルにかざされる。
【ドライバーオン!】
「そして、もう1つの名前は……」
【シャバドゥビタッチ! ヘンシーン! シャバドゥビタッチ! ヘンシーン!】
「え?」
「はい?」
「ええっと……?」
「ちょっと……本当に一発芸始めるんじゃないでしょうね?」
「いや、流石にそれはないでしょ」
「……気をぬくな」
ベルトから発せられた音声にそれぞれが様々な反応を見せる中……
「変身!」
【フレイム! プリーズ! ヒー!ヒー! ヒーヒーヒー!】
展開された燃え上がる赤い魔法陣が通過し、青年の姿を仮面の戦士へと変える。
「指輪の魔法使い、ウィザードだ。よろしくな」
ローブを翻しウィザードは静かにそう告げた。
「ウィザード!! あの人が!?」
「今の力、神衣に似ていますが……」
「シャバドゥビ? 一体どういう意味なんだ?」
「……指輪怪人に変身……中々インパクトはあるわね」
「いや、なんで一発芸的な評価!?」
「言ってる場合か! さっさと構え直せ!」
そんな反応を見て晴人は仮面の下で少し笑うと、グリフォンへと向き直る。
「待たせて悪いな。さぁショータイムだ!」
宣言と同時に咆哮するグリフォンに対してウィザードは得物を構え、駆け出していく!
「あぁもう! なんかツッコミ所が多すぎて何を言えばいいのかわかんないんだけど!?」
「まぁ、やっぱ変だよなぁ、あの音……」
「ザビーダ様! 今は憑魔を!」
「へいへい! 」
そう言ってザビーダを同化させたアリーシャは魔力を解放する。
「うわ!? それって神衣!? よっしゃ!私も負けてらんないね! 」
「グリフォンには火と土が有効だ。口から放たれるブレスにも注意しろ」
グリフォンの弱点を手短に告げるとデゼルは得物であろうペンデュラムを構える。
「(ザビーダ様と同じ得物?)」
「なら俺とロゼが神衣で攻める! ミクリオとデゼルは援護してくれ!」
「行こうライラ!『
「よろしくエドナ! 『
真名を告げると共にスレイの足元には赤の、ロゼの足元には黄色の魔法陣があらわれ2人の姿が変化する。
「よし、行こう!」
スレイは姿を変えるとすぐに大剣を構えグリフォン目掛けて駆け出していく。
一方のロゼはスレイ同様に髪が白髪となり地面に着きそうな程伸びたそれをリボンで結びポニーテールにしており、服装も二の腕や背中が大きく露出したタイプのウェディングドレスを思わせる姿へと変わっていた。
「!! ロゼ、君も神衣が使えるのか?」
「ん? スレイ程じゃないけどね! 従士契約をしたらできるようになったんだけど……もしかしてどこか変?」
驚きの表情を浮かべるアリーシャにロゼはあっさりとそう告げる。
「……いや、頼もしいよ! さぁ行こう!」
「おっしゃ! りょーかい!」
そう言うとロゼはグリフォンへ向け駆け出していく。その背中を見つめるアリーシャ。
正直に言えばアリーシャ自身、少しばかり複雑な心境ではあった。嘗て自分が従士契約を結んだときは神衣を使う事など出来なかった。それをあっさりとやってのけるロゼには自分より高い霊応力がある事は容易に想像できる。
ロゼには全く非はないのだが目の前で易々とそれを見せつけられると、やはりアリーシャとてそれに対して思う事くらいはある。
だけど……
「(今は目の前の戦いに集中するんだ。私には私のできる事をすればいい。そうだろ? ハルト)」
一瞬、右手の指輪へと視線を向け思考を切り替えると、アリーシャもまた槍を構えグリフォンへと向け駆け出し、ロゼに追いつき横を並走する。
前方ではウィザードとスレイがグリフォンと交戦し鋭い爪を持つ前脚の攻撃をそれぞれの得物で受け止めていた。
「一気にいくよ!」
「わかった!」
ロゼの呼びかけに応え、アリーシャは自身の纏う魔力を地属性へと切り替える。
一方でウィザードとスレイは後方から一直線で突っ込んでくる2人の存在に気づくと、それぞれの得物をグリフォンの前脚へと振るう。
『ギェェェェェェエ!!!』
グリフォンは前脚でそれぞれの斬撃を掴むように受け止める。
だがそれにより生じた隙にアリーシャとロゼは一気に肉薄し、それぞれの得物をグリフォンの頭部へと叩き込む。
「「駆ける巨魁!」」
「岩砕裂迅槍!」
巨大な籠手と槍の強烈な一撃がグリフォンを吹き飛ばす。
『グゥゥゥゥゥゥ!?』
吹き飛ばされ岩壁に叩きつけられ悶絶するグリフォンだが、追撃を拒むかの様にその口から火炎放射の様に炎のブレスを放つ。
「させるか!白き水よ、崩落せよ! スプラッシュ!」
後方にいたミクリオに詠唱された天響術。直後グリフォンの頭上に出現した巨大な水球が破裂し、それにより生じた水流がグリフォンのブレスを掻き消す。
「とっとと決めろ!
更に続くデゼルの声と同時に、グリフォンの足元より生じた光の鎖が翼と口を雁字搦めにし、行動と反撃を封じる。
「(へぇ、やるようになってるじゃないのアイツ……)」
「(ザビーダ様?)」
アリーシャの脳裏にザビーダの声が響く。どうやらデゼルの今の攻撃を見た感想らしい。
「(そういえば今のデゼル様の技はザビーダ様が以前使っていたような……)」
そんな思考がアリーシャの頭を過るが、一方でデゼルの援護によって生じた隙を突き、ウィザードとスレイがグリフォンに肉薄する。
そして……
「ハァっ!」
地上から接近するスレイに対して、ウィザードは跳躍しウィザーソードガンのハンドオーサーを起動する。
【フレイム! スラッシュストライク! ヒー!ヒー!ヒー!】
「「轟炎…………一閃!」」
「ハァァア!」
『ギェェェェェェエ!?』
炎を纏った大剣の横一閃とウィザードによる頭上からの縦一閃による炎の斬撃が、グリフォンを十字に切り裂く。
断末魔の咆哮をあげ倒れるグリフォン。その穢れが浄化され憑魔の姿が搔き消えると、そこには1人の女性が倒れていた。
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「成る程な。それでアリーシャはローランスに……」
グリフォンとの戦いを終え数刻後、一同はゴドジンを目指しバイロブクリフ崖道を進んでいた。
その道中アリーシャは、自分が何故ローランスを訪れる事になったのかスレイ達へ説明していた。
「導師であるスレイさんとハイランドの王族であるアリーシャさんによる停戦の実現……確かにそれが成功すれば暗躍する災禍の顕主に先んじる事ができるかもしれませんわ」
「だが、良いのか? ライラが言うには天族の力を振るえる導師が政治に介入するのはあまり望ましく無いことなのだろう? 現にハイランドではその力をバルトロが利用しようとしてきた」
「何言ってんだよミクリオ。アリーシャの説明通りなら、今のアリーシャの力で天族や憑魔の存在を信じて貰えれば、人間同士の争いにも慎重になってくれるかもしれないだろ。それは穢れを断つ事にも繋がるんだ。導師の役目としては何もおかしくないだろ?」
「む……まぁ、確かにその通りだが」
「何より、ライラも言ってくれていたじゃないか、導師としての在り方に囚われないでってさ。だから俺は俺が信じたいと思ったものを信じるよ」
「はぁ……わかったよ。確かにそっちの方がスレイらしいしね」
「ははっ! だろ?」
アリーシャからローランスを訪れた理由を説明されたスレイはその事への協力に賛同しつつ、アリーシャの傍を歩く晴人に視線を向ける。
「けど、まさかウィザードまで手伝ってくれるなんてなぁ。けど、普段の状態とは随分姿が変わるんだな」
「まぁな、この姿の時は晴人ってよんでくれ」
「わかった。それにしても魔法使いか……天遺見聞録にも書かれていなかったけど、そんな力もあるんだな」
「そうだね。聞いた限り、アリーシャの力もハルトの魔力を分け与えた結果生じたものらしいし、やはり世界にはまだまだ僕達が聞いたことも無いような事が沢山あるということだ」
「だよな! いずれ、世界中の遺跡を巡る旅をしたら、もっと色んな物が見つかると思うと楽しみだなぁ!」
「なんだ? 遺跡を巡るのが好きなのか?」
「あぁ! 導師の使命を果たしたらいつかミクリオと世界中の遺跡を旅する約束なんだ」
「ふっ……そっか、なら先ずはこの大陸の戦争を止めちまわないとな」
歩みを進めながら会話を交わす3人、そんな時、晴人は視線を感じそちらへと目を向け、視線の主へと声をかける。
「ん? 俺がどうしたか?エドナちゃん」
「……なんでもないわ」
「そうか? なんか俺の事を見ていたような気がしたんだけど」
「気のせいよ自意識過剰ね……それとエドナちゃん言うな」
「え? いやだってザビーダもそう呼んでるじゃん」
「取り敢えずあの半裸のチャラ男を参考にするのが間違いだと気付きなさい。見た目通り巫山戯た奴よ」
そう言って、誤魔化し壁を作る様に晴人に接するエドナ。そんな彼女を見てスレイが晴人に声をかける。
「あ、そうだ! 実は俺、ウィザードに会えたら1つ聞きたいと思っていた事があるんだけど!」
「聞きたい事?俺にか?」
「あぁ……あのさハルトは戦場でヘルダルフと戦う時、ドラゴンと一緒に戦って____ 」
「スレイッ!!」
突如、スレイの言葉をエドナが強く遮った。その剣幕に
「……余計な事を話さないで」
そう言ってエドナは歩みを速め晴人達から離れて行ってしまう。
「すまない……僕達のミスだ。エドナはその……少し人間に対して壁を作る奴でね」
「うん……そのエドナの事でハルトに相談に乗って欲しい事があったんだけど、本人があの様子じゃ……」
そう言って申し訳無さそうにするスレイに、晴人は緩い雰囲気を保ったまま応じる。
「気にしなくていいさ。ま、いきなり現れたよく知らない奴を信じろってのも難しい話だ。それが本人にとって大切な事なら尚の事な」
そう言って晴人は前を歩くエドナに視線を向ける。その表情は手に持った傘に遮られ、伺い知る事は出来なかった。
そんな彼女が心配になったのか、スレイとミクリオは同様に歩みを速めエドナの方へと向かっていった。
その時アリーシャが晴人へと声をかける。
「天族の方達は人々の目に見えないからこそ人の業や過ちを長い年月見てきた筈だ。中には良い印象を持ってない方も多いだろう……おそらくエドナ様も……」
「なるほどね……」
そういって複雑な表情を浮かべる2人だが、そこにロゼから声がかかる。
「ちょいと、そこのお二人さん。気持ちはわかるけど折角仲間が増えたんだからあまり暗い顔しない!」
「ん……?あぁ、悪い悪い、辛気臭くしたな」
「わかればよろしい! それにしてもアリーシャとは久しぶりだね。確かマーリンド以来だっけ?」
「あぁ、まさか商人ギルドであるセキレイの羽の君がスレイと一緒にいるとは驚きだったが」
「驚いたのはあたしもだって! まさかこんな場所で姫に出会うなんて思わなかったし!」
「2人は顔見知りなのか?」
「以前、スレイ達とマーリンドに行った際に少しね。それにしても、君が天族が見えていたとは……」
「あ……違う違う! あの時はまだ天族とか見えてなかったし憑魔の事も知らなかったんだよね」
その言葉にアリーシャは首を傾げる。
「え? いや、だが……君は神衣を使える程の霊応力を持っているだろう? それなら天族や憑魔を視認するくらいわけ無いのでは?」
「あーそれね……なんていうかその……あたしさ、確かに子供の頃は確かに天族の声ってやつ? それが、聞こえてたんだけど……」
「「だけど?」」
微妙な表情を浮かべるロゼに晴人とアリーシャは疑問を浮かべる。
「その……子供の頃のあたしさ……周りには聴こえてない声が自分にだけ聴こえるのが怖くてさ、それが原因で他の人からきみ悪がられたりもした……だからいつも自分に『声なんて聴こえない』って言い聞かせ続けてたんだ。そうしたら……いつの頃からか声は聴こえなくなった」
「それは……」
「ライラ曰く、心が強く拒絶した事で無意識の内に自分の力に蓋をしちゃってたんだってさ」
力を持った事による恐怖と迫害、ラストンベルのマーガレットもまた同じ様な事が原因で憑魔と化した。生まれながらに特別な力を持つ故の苦悩を聞かされ、アリーシャは言葉を詰まらせる。
「まぁ、そんな感じであたしは生きてきたんだけど、この前の両国の大規模な激突の後、あたし達はヴァーグランド森林でスレイ達に出会って憑魔の事件に巻き込まれたんだ」
「では、そこで君は無意識下で抑えていた力を取り戻したのか?」
「うん、結構厄介な憑魔でさ。あたしもライラと従士契約をしてなんとか浄化したってわけ」
「ん? ならロゼはなんでスレイ達と旅をしてるんだ?」
巻き込まれたというのならその場で憑魔を倒すための一時的な契約を交わすのは理解できるが、態々その後も同行している理由に疑問を憶え、晴人はその事を問う。
「あ〜……スレイ達にも理由は詳しくは話してないし、アリーシャ達にも今は悪いけど話せない。けどね、あたし憑魔の事で少し調べたいことがあるんだ」
「調べたい事?」
明るげに話していたロゼの表情が少しばかり神妙なものとなっていく。
「うん……そうすればずっと追ってきた謎の手がかり掴めるかもしれないんだ。導師をしているスレイの近くにいればきっとその近道になる。その代わりと言っちゃあなんだけど、スレイの手伝いをさせて貰ってるって訳」
「そうか……わかった。誰にでも話したくない事はあるだろう。今は深く聞かないでおくよ」
「うん、悪いね……」
そう言ってロゼは少しばかり表情を緩める。
そんなやり取りを聞いていた晴人は、先程からロゼとアリーシャの会話の中に聞き覚えのある言葉があった様に感じ、記憶を漁っていたのだが……
「セキレイの羽……あぁ、思い出した! ラストンベルで会った双子がそんな事言ってたっけ」
ラストンベルで情報収集をした際に出会った商人ギルドの二人組が確か、そんな名前を口にしていたと晴人思い出す。
「フィルとトルメの事? 2人に会ったんだ?」
「あぁ、ラストンベルで情報集めのついでに2人からマーボーカレーまんを買ってね。美味しかったぜアレ」
「あぁ、あれはセキレイの羽の商品だったのか。確かにあれは美味しかった____ 」
アリーシャはティンダジェル遺跡群で食べたマーボーカレーまんの味を思い出しその感想を口にするが……
「……食べたの?」
その言葉にロゼが即座に食いついた。
「え? あ、あぁ、冷めてしまってはいたがそれでもとても美味しかっ_____ 」
「よっしゃ! 『あのハイランドのアリーシャ姫も絶賛の新商品! その名もマーボーカレーまん!』これはイケる!」
突如、テンションが跳ね上がったロゼにアリーシャは困惑する。
「えぇっと……なんの話だろうか?」
「何って……新商品の謳い文句に決まってるじゃん!」
「……はい?」
ロゼの言葉にアリーシャは間の抜けた声を漏らす。
「いやー! これはツイてる! お姫様オススメの食べ物となれば売り上げ上昇は間違いなし!」
「……え? ……え?」
困惑するアリーシャだがロゼのテンションは止まらない。
「そうだ! 折角だからマスコットキャラクターも考えよう! ねぇアリーシャ! 良かったらマスコットのモデルに____ !」
そう言って凄い勢いで捲したてるロゼだが……
「やめろ……姫様が戸惑っているぞ」
いつの間にかロゼの傍に立っていたデゼルによってその言葉は遮られた。
「えー? 良いじゃん。売り上げアップのチャンスなんだよ?」
「にしてももう少しやり方というものがあるだろうが……大体お前は____ 」
「あーはいはい! お説教なら謹んで辞退させて頂きまーす!」
デゼルが小言を言いはじめる気配を感じたのか、ロゼはそそくさと走って先へと行ってしまう。
「チッ! おい待て! また落ちるぞ! 足元を見ろ足元を!……騒がせて悪かったな」
一言謝罪を口にするとデゼルはロゼを追い早足で先へと言ってしまう。
「何というか……嵐のような子だな」
「あ、あぁ……商魂逞しいとはロゼの様な者の事を言うのだろうな」
「そう言えば、ロゼの事は少しわかったがデゼルって奴の方はどうなんだろうな?」
「む、そう言えば聞きそびれてしまったな」
「少なくともヘルダルフとの戦いの時には居なかったんだから仲間になったのはそれ以降の筈だよな?」
「その様だが……デゼル殿はロゼを気にかけている様に見える。だとすればロゼと何か関係があるのではないだろうか?」
「けど、ロゼは最近まで天族や憑魔は見えてなかったんだろ? それだ知り合いってのも妙な話じゃないか?」
「それもそうだな……」
そう言いながらあーでも無いこうでも無いと会話を交わす2人。そこに別の人物から声がかかる。
「仲良く話してるのは結構だがなお二人さん。その影で苦しんでる俺の事も少しは気にかけて貰えないかねぇ?」
声をかけた人物。ザビーダは先程グリフォンを浄化した際に倒れていた女性を背中に背負いながら、しんどそうに登り坂を歩きながら晴人達に追いつく。
背負われた人物はラストンベルで出会ったサインドと似た様なデザインをした服装を着ている為、天族と思われるが、外見は中年寄りでぽっちゃりとした体型の女性であり、それを背負い歩かされているザビーダの表情は疲労の色が濃い。
「レディには優しくがモットーなんだろ? まぁ、頑張れ」
「俺様の扱いがあまりにも雑じゃねぇかなぁ!? 」
2人がそんなやり取りを繰り広げる中、アリーシャがザビーダに問いかける。
「あの……ザビーダ様? もしや、デゼル殿とはお知り合いなのでしょうか? 先程の戦いの際、デゼル殿を気にかけていた様子でしたが……」
「あぁ、そう言えばお前と同じ武器を使ってたよな。ペンデュラムだっけか?」
ザビーダと同じ得物と技を使うデゼルに関してその理由を問う2人だが……
「ん? ……さぁて、どうだったかねぇ……」
当の本人ははぐらかす様に曖昧な返事をした。
「お前なぁ……」
「いいじゃねぇの。イイ男には秘密が付き物なのさ。それはいいからいい加減背負うの変わってくれ」
「はぁ……わかったよ」
そう言うと晴人は指輪を取り出す。
「なになに? なにしてんの?」
「もしかして何か魔法を使うのか?」
「戦闘以外での魔法か……興味深いな」
晴人が何かしようとしているのを嗅ぎつけたのか、他の面々が歩みを止め晴人達の元へ近づいてくる。
「まぁ、見てればわかるさ」
【ガルーダ! プリーズ】
【ユニコーン! プリーズ!】
【クラーケン! プリーズ!】
晴人は次々とバックルに指輪をかざしていき、それにより、赤い鳥・青い一角獣・黄色いイカを模した小型の使い魔達が現れる。
「うわぁ! 何だこれ!」
「見た限り、魔力で生物を模したものの様だが……」
「ガルーダは見たことがあったが、他にもいたのだな」
「というかイカがしれっと飛ぶのはどうなのよ」
それに対して一同は様々な反応を見せる。
「んで? そのちっこいのでどうするつもりなんだ?」
「見てればわかるって言ったろ?」
そう言って晴人はザビーダに背負われた女性に指輪をはめるとバックルに翳す。
【スモール! プリーズ!】
鳴り響く音声と同時に背負われた女性はみるみると縮んでいき、晴人の掌に収まってしまう程小さくなる。
「「ちっさ!」」
それを見てロゼとスレイは揃って声をあげる。
「そんじゃ、頼むぜユニコーン。ガルーダとクラーケンはしっかり護衛してやってくれ」
ゆっくりとユニコーンの背に女性を乗せるとユニコーンは頷き、その周囲をガルーダとクラーケンが旋回する。
「とまぁ、こんな感じかな? ある程度の自衛はできるから戦闘になっても退避位はできるはずだ」
「「おお……」」
関心した様に揃って頷く2人。それを見て晴人は少し面白そうに笑みを浮かべる。
「便利なもんだねぇ……ところでよ。最初からそれを使えば俺はこんな疲れなくても済んだんじゃ……」
「あぁ、悪い。お前の事だから女の人を背負うのは役得とか思ってるのかと思って……」
「いや、ザビーダお兄さんは実年齢は気にしないが外見年齢のストライクゾーンはあるからな? あ……ライラ位はナイスバディなら喜んで背負うぞ?」
「しれっと最低な事言うなお前」
「謹んでお断りします♪」
メンバー内で最もスタイルが良いライラに向かいド直球でセクハラ発言をぶちかますザビーダに対して晴人は少し引き、ライラは笑顔のまま一刀両断する。
「そんなに麗しい淑女を背負いたいなら私を背負わせてあげるわよ? 光栄に思いなさい……歩くの面倒くさいし」
そんなザビーダの発言に乗り楽をしようとするエドナだが……
「あ……エドナちゃんはパス! 3000年後くらいにまたな!」
「……今、どこを見て言ったコラ」
ライラとは正反対なランドスタイルのディフェンドじみたエドナの胸部を一瞥したザビーダは即答する。
そんなザビーダの台詞に対してエドナの表情が引き攣り、声がトーンダウンする。
「そりゃあ、エドナちゃんの残念な胸____ 」
周りの面々が「あ……なんかヤバイ」と察した時には既に遅く、エドナの手に握られた傘の先端がザビーダの首筋に叩き込まれていた。
「ぐえっ!?」
「ちょっとエドナ!?」
カエルが潰れた様な声を漏らすザビーダ。それに対してスレイが驚いた声を漏らす。
「大丈夫よ、怪我する程力は込めてないから」
しれっと言い捨てるエドナ。一方、晴人とアリーシャは首筋を抑えて蹲るザビーダに声をかける。
「ざ、ザビーダ様?」
「なんで、余計な事を言っちゃうかなお前は……で、大丈夫か?」
「あ、あぁ……なんとか……ククク……クハハハハハッ!」
「だ、大丈夫ですかザビーダ様!?」
「どうしたんだお前……」
立ち上がったと思えば急に笑い始めるザビーダに晴人達は困惑する。
「お、俺にも……ククク……わ、わかんねぇっ……クハハハハハ! 」
どうやらザビーダ本人にも原因がわからないのか戸惑っている様子であり、それを見た2人は事の流れから原因である可能性が高いエドナへと視線を向ける。
「あー……エドナちゃん? これは一体……?」
「心配しなくてもその内止まるわよ。あと、エドナちゃん言うな」
「いえ、そうではなく何をなさったのですか?」
「あぁ、これ? これはね天族に伝わる秘伝の技よ」
『秘伝の技!?』
「ええっと……私は聞いた事無いのですけど……」
一同が食いつく中、ライラは苦笑いを浮かべる。
「えぇ……その名も……」
『その名も?』
「……『笑いのツボ』よ」
『……』
そのセリフに笑い転げているザビーダ以外の全員が沈黙した。
「何よ? 何か文句でもあるの?」
「いや、なんか胡散くさ「そう……なら試してみる?」……遠慮しておきます!」
傘を素振りするエドナを見てライラとザビーダを除く面々は早足にその場から散っていく。
「はぁ……それで? いつまで笑ってんのよアンタ。とっくに治ってるでしょ?」
一同から距離が空いたのを確認すると、エドナはザビーダへと声をかける。
「あ? バレてた?」
ケロッとした表情で顔を上げるザビーダにエドナは再び溜息をつく。
「そんで? 両手に花ってのは嬉しいが俺様に何か入り用かい、お二人さん?」
その言葉を受けたライラは少しばかり驚いた表情を浮かべるが、すぐにザビーダへと問いかける。
「ザビーダさん。貴方は彼……ハルトさんと行動していたのですよね?」
「ん? あぁ、ラストンベルからだから短い間ではあるけどな」
「率直にお聞きします。彼の事をどう見ますか?」
その言葉にザビーダは一瞬、眼を細め鋭い視線をライラに向けるが……
「え? いや、悪いけど俺様、男に対してそういう目を向ける趣味無いんだけど?」
その視線は一瞬で和らぎ、おちゃらけた返答がライラへと放たれた。
「そ、そういう意味ではありません! 不潔ですよザビーダさん!」
予期せぬ言葉に顔を赤くして反論するライラ。それを見てザビーダはしてやったりと笑っている。
「そいつの言葉をイチイチ真に受けてるんじゃないわよライラ。アンタもこっちは真面目な話なんだから茶化さないでくれる」
「あん? て事はエドナちゃんもハルトの事を聞きたいわけ? そりゃまたどうして_____ 」
「あの指輪怪人、ドラゴンを操っていたのよ」
エドナのその言葉にザビーダは大きく目を見開いた。
「……そいつはマジなのか?」
「はい……以前、共に戦った際、彼は災禍の顕主に対して、ドラゴンを呼び出し、操ることで相対しました」
「それがどういう意味かアンタならわかるでしょ? 天族のワタシ達ですら聞いた事のない力を持つアイツが如何に得体の知れない存在か」
「なるほどねぇ……こちとら1000年以上生きている分、退魔師だの魔術師だのと色々な呼び名の人間を見てきたが、確かにハルトの『魔法使い』って力は見たことも聞いた事もねぇな」
その言葉を受け、ライラが真剣な表情でザビーダに語りかける。
「その通りです。ですから私は彼が……『魔法使い』が如何なるものなのか見極めなくてはならない……そう思っています」
「そいつは、ハルトの奴が災禍の顕主と同じ様な存在か疑っているってことか……?」
「…………」
ザビーダの問いかけをライラは沈黙で肯定する。その様子を見てザビーダはライラを真っ直ぐと見据える。
その視線が捉えた彼女の表情は申し訳なさや、自己嫌悪の色が見え隠れする暗いものだった。
それを見たザビーダは頭をガシガシと掻くと大きな溜息をつく。
「ったく……態々俺にそんな事を聞くなんざ……慣れないくせに、嫌われ役を買って出ようってか? お前さんも真面目だねぇ……」
「彼には……ハルトさんには感謝しています。以前、災禍の顕主と戦い私達が事なきを得たのは彼のお陰です。ですが……」
「まだ納得はできないってか?」
「……はい」
暗い表情で俯向くライラ。それを見てザビーダはゆっくりと口を開く。
「失敗して導師殿を『ミケル』や『アイゼン』と同じ目には会わせたくないって訳かい?」
「……ッ!」
「ッ! アンタ!!」
ザビーダの言葉にライラは表情を崩し、エドナは珍しく怒りの表情を浮かべる。
「嫌な言い方をして悪いな……だがよ。隠し事をしてるのは俺達だって同じだろうよ」
その言葉に2人はハッとした表情を浮かべる。
「俺はアイツの……ハルトの事を信用していいと思ってるよ。アイツの力は確かに得体の知れないもんだ。だが、アイツはその力を他人の為に振るえる。少なくとも口先だけの男じゃねぇ」
「なによ……結局、根拠の無い勘じゃない……」
そんなエドナの言葉にザビーダは楽しそうに笑みを浮かべる。
「そうかい? 案外、俺様の勘は馬鹿にできないぜ? これでも色んな奴を見てきたからな。目的がなんであれ真っ直ぐに生きる奴ってのはどいつもこいつも似た様な目をしていやがるのさ……『業魔』だろうが、『海賊』だろうが、『魔法使い』だろうがな……」
そう言ってザビーダは先に行ったスレイ達を追う様に歩き始めようとし、何かを思い出したかのように止まるとライラに向けて振り返る。
「あー、だがお前さんがどうしても奴が何者なのか気になるってんなら、手っ取り早く直接本人に聞いてみるこった……アイツは真剣な相手に対してはぐらかす様な真似はしないと思うぜ?」
そう言いながらザビーダは今度こそ前を向き歩き始めた。
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一方、エドナの『笑いのツボ』をくらう事を恐れて先行して歩いている他の面々の中、アリーシャはザビーダ達3人が中々追いつかない事を気にかけチラチラと後ろへ視線を向けていた。
「どうかしたのかアリーシャ?」
「ハルト。ザビーダ様達が中々追いついて来ないが大丈夫だろうか?」
「そう簡単にどうにかなる様な奴じゃないさ。おおかた、また余計な事言ってエドナちゃんにお仕置き食らってるんじゃないか?」
「そうだろうか?」
「あぁ、きっとそうに……ッ!!」
何かを感じたのか晴人は会話を中断し、歩みを止め自身の持つ指輪を取り出す。
取り出した指輪は力を失った指輪の1つであり、その外見は変わりなく輝きを失ったままだ。
「ハルト? どうかしたのか?」
様子のおかしい晴人を心配しアリーシャが声をかける。
「あぁいや、なんでも無い。気のせいだ」
そう言って晴人は指輪をポケットへと仕舞うと再び歩き始める。
しかし、彼は気づかなかった。ポケットに仕舞われた指輪が何かに共鳴する様に赤く輝き始めた事を……
おかしい……火の試練突入まで書く予定なのなキャラ同士を会話させるだけで文字数が、膨れ上がりやがった……このペースだとゴドジンはあと3話かなぁ……
以下、エドナちゃんの胸のその他比喩表現候補
①統制者
②ガンマイザー
③メロンディフェンダー
笑った奴はバンエルティア号の甲板に来いって金髪の強面お兄さんが言ってた