太郎視点
チャイムが鳴った。
私がIS学園に通い始めて2日目の授業が終わりましたが今日も有意義な時間でした。特に興味深いのは
「ISに意識の様な物があり、操縦時間に比例して操縦者の特性を理解しようとする」
という部分です。ISに意識や心の様な物があるというのは感じてはいましたが正しかったようです。実際に私がISを初めて起動した時、ISが誰も乗っていない状態にも関わらず私から逃げる様に距離をとったのです。誤作動という事になっていますが、あれは絶対にISの意思による物です。
恐らく私という魅力的な紳士を前に恥らってしまったのでしょう。あの子とは良い関係になれそうです。
それに関係して山田先生にある提案をするべく今日も職員室に向かいます。ちなみに一夏はセシリアとの決闘に向け篠ノ之 箒と訓練する事にしたらしいです。
篠ノ之 箒とは初日の休憩時間に私と一夏が話していた時に話しかけて来たポニーテールの少女です。肢体の成長度は少女という段階を超えていましたが。彼女はIS開発者である篠ノ之 束の妹という事です。ただ姉である束の話になると不機嫌な顔になっていました。色々あるのでしょう。
2日連続の職員室はライブ会場のステージの様でした。入室した途端にその場の人間全ての視線が私に突き刺さります。
私のカリスマ性に皆目を離せないようです。
ふふっ、スターの登場だよ。IS学園1年1組と国立第5IS研究所所属の山田 太郎。私の一挙一動は誰もが注目します。
折角なので何かサービスをしてあげたいと思いますが手錠、足枷状態では大した事は出来ません。両手を頭の後ろで組み胸を反らしつつ右に捻る。そして目が合った教師にウインクしました。
ブッー。ゴホッゴホッ
彼女は飲んでいたコーヒーを噴き出し咳き込んでいます。彼女にはウインク程度でも刺激が強過ぎたようです。彼女には悪い事をしてしまいました。
私は拭くものを貸そうかとも思いましたが近づこうとすると緊張した様子で首を横に振っていたので止めておきました。私が相手では恐縮し過ぎてしまうのでしょう。罪作りな男です。
一騒動を終え山田先生のもとに着く。山田先生は緊張した面持ちだった。
「た、太郎さん、何か用ですか?」
山田先生は私の事を「太郎さん」と呼んでいる。親愛の証でしょう。私も彼女の事を「真耶さん」と呼んでみたが山田先生に泣かれてしまい織斑先生に殴られた。山田先生は泣くほど嬉しかったのでしょう。織斑先生は嫉妬ですね。古来より女神とは嫉妬深いものです。
「少し頼みたいことがあるんですよ」
「でっでき、出ることならいいいてえて言ってください」
本当に申し訳なくなる程に山田先生は緊張しています。ただ交渉事は相手が平静でない方がやり易いのでこの方が好都合です。
「私の専用機に私が初めて起動させたISのコアを使って欲しいのです」
「あれは訓練機なので『初期化・最適化』の機能がオフになっているので個体差は・・・・ないと思いますよ」
笑ってしまう。
「訓練機はのコアはどれでも同じと?ふふっ、そんな事あるわけが無いですよ」
「ぇっ?『初期化・最適化』が機能してないんですから違いはでないはず・・・・」
さて、どう説明したものか。山田先生の隣の席である国語担当の平本先生を指差し
「いいですか山田先生。お店で売っている新品のショーツと平本先生が履いたショーツを洗った物を貴方は同じ物として扱いますか?」
山田先生と平本先生は私の例えの素晴らしさに言葉も出ない様子です。
「まあ、言葉で説明するより実際に見てもらった方が早いですね」
平本先生がスカートを押さえて涙目でこちらを見ています。
「いえいえ、平本先生のショーツで試すわけではありませんよ。・・・・山田先生のでもないです」
山田先生もスカートを押さえて涙目になっていました。もう立派な大人だろうに可愛いなー。この人達うちに1ダースくらい欲しいですね。とりあえずこの映像を良く記憶しておこうと見つめていると織斑先生がこちらに走ってきます。そして
首に強烈な衝撃を感じ世界が縦に回り
次の瞬間床に叩き付けられる。
「山田!貴様は何をやっているんだ!!」
どうやら私が山田先生と平本先生に何か酷い事をしているんじゃないかと勘違いし折檻(ラリアット)した様だ。荒々しい女神も魅力的ですよ。
「二人が少し勘違いしただけですよ。ちょっとしたお願いと実験の提案をしただけです」
「本当ですか山田先生」
「た、太郎、さんが専用機のコアを、じ、自分の初めて起動した物に代えて欲しいと・・・。あと新品のショーツと、、履いた後のショーツは違うって」
山田先生がつっかえながら言うと織斑先生の目付きはより厳しくなる。
「後半はただの例え話ですよ。『初期化・最適化』が機能していない訓練機のコアに個体差は無いと言うので、どれも同じと言うなら新品の物と変わらないと言うことなのか?私はそんな事はないと思い、それを実際に証明する為に実験を提案したんですよ」
「そんな事をどうやって証明するんだ」
「簡単な事ですよ。私が起動したものを混ぜて何機かの訓練機を並べてください。私が起動したものを当てて見せますよ」
「面白いやって見せろ」
???視点
浅い眠りについていたところ起こされ他の訓練機と一緒に並べられた。場所は格納庫。
状況、場所格納庫。周囲IS4、人間3
注意、エネルギー残量不足
「ではお前が起動させたISをこの中から当てて見せろ」
千冬の言葉に太郎が頷く。自分を起動したことのある唯一の男がいた。自分を含め5機のISの中から自分を当てるということだ。シリアルナンバーを確認でもしない限りこの状態では違いは分からないはずである。
イヤ フレラレルノ イヤ マチガイ キボウ
そのISの想いは通じなかったのか太郎は一直線にそのISに向かう。
チカヅク イヤ フカイ ナゼ ワカル?
「この子です。間違いない」
太郎がそのISに触れると光を放ち起動した。
ナゼ ワカル リユウ フメイ トウソウ シコウ エネルギー ナシ
真耶がシリアルナンバーを確認して驚いた。
「・・・・・・正解です。何故分かったんですか!?」
「むしろ私が聞きたい、何故分からないのか。まあ、とりあえず私の言っている事の正しさは証明されましたね。この子のコアを私の専用機にします」
「学園長の許可が下りるか分からないですよ」
「許可が出なかった時は私に言ってください。何とかしますから」
太郎がそう言うと真耶の顔が引きつった。
「何とかって・・・何を」
イヤ センヨウキ イヤ キライ タロウ
そのISの想いは今は誰にも届かない。