初日の授業が終了し生徒達が立ち上がりかけたところで太郎と一夏が千冬と真耶に呼び止められた。
「織斑と山田はちょっと待て。話がある」
呼び止められたのは二人だけであったが他の生徒達も興味があるらしく誰一人として立ち去らなかった。
「二人には専用機が用意されることになった。織斑には学園が用意する。山田はいくつかの企業が手を挙げているからそこから自分で選べ」
千冬の言葉にクラスは驚く声で溢れる。
「えええ、二人とも専用機を貰えるの?」
「すごーい。うらやましいよー」
「私に乗ればいいと思うよ」
「山田はこの後職員室で山田先生に話を聞いて来い。以上だ」
周りで騒いでいた生徒達も千冬に「お前らもさっさと帰れ」と散らされた。
一夏と別れ真耶と職員室に来た太郎は真耶の机まで付いて行った。手錠と足枷がガチャガチャいって非常に目立つ。真耶は机の引き出しから七冊のカタログと書類を出した。
「この中から好きな企業を選んでください」
書類は各企業からのお誘いのお手紙だった。
ウチと契約してくれればこういうサポートをしますよ。
我が社の売りはここです。
世界の半分をやろう。(訳・ウチはこの武装に関してはシェア50パーセントです。その力欲しくないですか?
様々なメリットが書かれていたが一旦そちらは置き、カタログを流し読みしていく。そして最後の一冊の中ごろでそれを見つけた。
「これにして下さい」
太郎が選んだカタログを受け取ると真耶の顔色が変わる。
「あ、あの〜、ほんとにこれでいいんですか?」
「はい、これがいいです。」
「こういう事を言っては駄目なんですが、この企業とこの機体についてはいい評判を聞きません。やめたほうが・・・」
真耶が止めても太郎は一顧だにしなかった。
「この機体・・・よい面構えです。ティン〇と来ました」
「えっ、今なんて言いました?」
「・・・?ピンと来ましたと言いましたが」
真耶が首を傾げていたが何かを思い出したのか机の一番上の引き出しを開けた。そして中に入っていた鍵を太郎に渡した。
「これが寮の鍵です。太郎さんの部屋は1002号室になります。織斑先生のいる寮長室の隣なので悪いことは出来ませんよ」
普通の生徒が相手なら確かにこれで大人しくなっただろう。しかし太郎相手では逆効果であった。寮へと向かう太郎はスキップをしそうなほど軽やかだった。ちなみにスキップは足枷が邪魔で出来なかった。
楯無視点
今日ついに山田太郎がIS学園に登校した。拘束衣から手錠と足枷に変更するというイレギュラーはあったが彼は大人しくしていたらしい。だがクラス代表を決める決闘に参加するという不安材料もある。早めに探りを入れようと寮の太郎が入ることになっている部屋に忍び込む準備を始める。
軽く誘惑して反応を見てみようと思う。もし簡単に襲い掛かってくるような人間なら隔離することも視野に入れないといけない。
どういう誘惑の仕方をしよう?
資料を見る限り下着とISに並々ならぬ執着を持っているようだ。でも自分が彼に下着姿を見せるのは嫌である。ISに関しては部屋の中で展開するのは少し大きいし、部分展開で誘惑になるのか?そもそもISを見せただけで誘惑になるのか?
色々と考えたすえ下着を見せるのは嫌なので水着にしようかと考えていると良いことを思いつく。
『男は裸エプロンが好き』
どこで聞いたのか、そんな情報があったような気がする。水着を着てエプロンを着ければ正面からは裸エプロンに見えるはずだ。その時は何故か自分の思いつきが凄く良い閃きだと信じ込んでいた。
準備を終えて太郎の部屋に忍び込む。部屋の中には誰もいなかった。裸エプロン(偽)に着替え隠れる。
10分ほど待つと扉が開く気配がする。3回深呼吸をすると笑顔を作りベッドの影から飛び出す。
「ご飯にします?お風呂にします。それとも、わ・・た・・・えっえええええ!!!!」
太郎は全裸であった。
「じゃあ、君が着けているそのエプロンで」
笑顔で近づいてくる太郎に思考がショートする。
「イ、イヤアアアーーーー!!」
反射的に部分展開したISの右腕を太郎に向かって振るう。当たれば人間なら先ず即死するような攻撃だったが楯無にそんなことを考える余裕は無かった。
しかし一撃で太郎の頭を粉砕するはずだったISの拳は空を切る。一瞬消えたように見えたがこちらに向かって屈みながら間合いを詰めて回避したのだ。その勢いのまま脇をすり抜け背後に回ってくる。
背後に向かって肘を叩き込もうとするがそれは出来なかった。羽交い絞めにされてしまったのだ。
不意打ちで探りを入れようとしたのに相手が全裸であったのだ。そのせいで混乱をしているところを羽交い絞めにされたのだ。振りほどこうと暴れるが引き剥がせない。
部分展開であったとはいえISによる一撃を避けて見せた男に羽交い絞めにされている。その事で頭の中は恐怖と驚きでパニック状態だった。いつもは特に意識することもなく出来るISの展開が上手くいかない。背中やお尻にナニかが何度も当たる。
そして壁に押し付けられた。その頃には頭の中は恐怖で埋め尽くされていた。
体が震える。上と下の奥歯が全身の震えの為にぶつかってカチカチと嫌な音が鳴る。
涙で視界がぼやける。
慢心していたのだ対暗部用暗部「更識家」の当主であり、IS学園の現役生徒では最強の自分が生身の人間に負けるなど露ほどにも考えていなかったのだ。
それだけではない。そもそも自分の強さなど本物では無かったのだ。不測の事態に恐怖で震え、まともに発揮することが出来なくなる力など偽者なのだ。
幼馴染の姉妹や妹の姿が脳裏に浮かぶ。溢れそうになっていた涙が決壊したかのように流れ出した。ごめんなさい、ごめんなさいと誰に対してかも分からない謝罪が口から漏れる。
私はここで犯される。
しかし、いつまで経っても抑え込まれたままでそれ以上の事は何もされない。そしてこちらを抑えていた腕が外された。恐る恐る振り返ると太郎が距離をとり、こちらを落ち着かせようとしていた。
「私に君をこれ以上傷付ける気はないですよ。安心してください」
その言葉に襲いかかってきた相手が目の前にいるのに不覚にも気が抜け崩れ落ちるように床に腰を落としてしまった。
「・・・・・とりあえず、服を着て下さい」
そう言うことしか出来なかった。自分も水着にエプロンを着けた酷い格好だったが。
太郎視点
寮の部屋に着くと先ず手錠と足枷を外した。実は授業中もずっと外そうと試行錯誤していたのだ。その甲斐もあって最後の授業が終わる前にはいつでも外せる状態だったのだ。
手錠と足枷を外すと服や下着も直ぐに脱ぎ開放感を味わおうとしているとベッドの影から裸エプロン姿の少女が出てきた。
「ご飯にします?お風呂にします。それとも、わ・・た・・・えっえええええ!!!!」
「じゃあ、君が着けているそのエプロンで」
少女の問いかけに答えたのだが彼女は聞いていないのか何故か悲鳴を上げて
「イ、イヤアアアーーーー!!」
部分展開されたISで襲い掛かってきた。
IS学園恐るべし。公衆の面前で排泄しろと言う女教師、奴隷にしてやるという女子生徒。そして寮には裸エプロンで襲い掛かってくる少女がいるとは素晴らしい人材が揃っているようだ。歓喜に打ち震えながらも気は抜かない。
迫り来るISの拳を屈んで避け少女の脇をすり抜ける。背後に回ると少女を羽交い絞めにする。少女が暴れるのでナニが彼女のお尻などに当たって昂ぶってしまう。
背後に回って気付いたが裸エプロンではなかった。水着を着ているようだ。残念ではあるがそれどころではない。
柔らかく滑らかな肌触りの尻。何度も舐めたくなる様なしなやかな背中。
体勢の関係で彼女の頭が目の前にある。薄い水色の髪が美しい。これ幸いと顔をうずめる。
・・・・なんと芳しい。
このまま〇〇〇してしまいたい。
いえ、駄目です。そんなこと紳士として許されません。
・・・でも待てよ。この娘はISで生身の私を攻撃してきたな。俺を殺そうとしたってことだ。偉い人も言っていた「撃っていいのは撃たれる覚悟のある奴だけ」だと。それならば俺がここで撃ってもいいんじゃないか。股間のやんちゃ坊主をさ。
抵抗が弱くなり、代わりに振るえ始めた女に嗜虐心が疼く。しかし女を壁に押し付け喰らいつこうとしたところで気付く。涙を流し震えながら「ごめんなさい、ごめんなさい」と掠れるような声で呟いているのを。
命を脅かされたとはいえ、このような謝罪を受けておいて「そんなものは関係ない」と蹂躙していいのか。
それに改めて考えてみると彼女は最初笑顔で私を出迎えたではないか。しかも紛い物とはいえ裸エプロン姿で新婚プレイの定番であるセリフまで・・・・。
頭から冷水をかけられたような感覚。
まさか彼女は私を歓迎しようとしたのではないのか?しかし何らかの行き違いがあった為に驚愕し、つい手が出てしまったという事ではないのか。その予想は恐らく正しいだろう。何故なら色仕掛けから油断を誘って襲い掛かってきたという感じは受けなかったからだ。
ああ、私は何と言う事を・・・・。わざわざ歓迎しに来てくれた少女をレ〇プするところでした。
慌てて羽交い絞めにしていた腕を放し怯える彼女を落ち着けるため距離をとる。
「私に君をこれ以上傷付ける気はないですよ。安心してください」
「・・・・・とりあえず、服を着て下さい」
私の言葉に彼女は震える声で一言だけ言った。
少女が落ち着くのには少々時間が掛かった。服を着て腰の抜けた彼女をベッドに座らせた。体に触れた時に彼女は怯えていたが床に座らせたままというわけにもいかないので我慢してもらった。ハンカチで涙を拭いてあげ、用意した飲み物を飲み終わる頃にやっと話すことが出来る程度には落ち着いた。
泣いている時の顔は幼さがあったが肢体は肉感的である。筋肉も余分なものは一切ついていない洗練された鍛えられ方をしている。全体的に色素が薄く肌は新雪のように白かった。そして瞳だけが濃い紅で特徴的だ。美しい少女である。
彼女がぽつり、ぽつりと事の経緯を話し始める。彼女の名前は更識 楯無。生徒会長にしてIS学園最強の称号を持っているらしい。そして対暗部用暗部「更識家」の当主であり今回の件は私の性格や危険性を調べるために来たという事だ。
対暗部用暗部とか私に教えてしまって問題ないのでしょうか。
楯無が頭を下げる。
「もし私の攻撃が当たっていれば大変なことになっていました。本当にごめんなさい」
「こちらも乱暴な扱いをしましたから、お相子ということにしませんか」
太郎の言葉に楯無は少し考えた後頷く。
「分かりました。太郎さんがそれで良いと言うなら。あっ、それとハンカチ洗って返しますから」
どうやら彼女の涙を拭く時に使ったハンカチの事を気にしているようだ。
「お気になさらず」(美少女の汁が付いているハンカチは万金の価値あり)
「そういう訳にはいきません。私の気がすみません」
強く言う彼女にこれ以上断るのも不自然と思いハンカチを渡す。
「太郎さんにとってここでの暮らしは不自由なものになると思いますが何かあったら私に言って下さい。出来るだけの事はしますから」
帰り際にそう言って楯無は帰っていった。
私は彼女の姿が見えなくなるまで見送った。
いいお尻だった。
太郎「ほぼ逝きかけました。」
コイツ紳士じゃないよな。