「い、異議ありっ!・・・・・妹とIS学園の生徒達の画像がいくら保存されていても問題無いでしょっ!」
楯無はミステリアス・レイディ、ひいては自分の無実を必死で訴えた。しかし、その主張は美星によって即否定される。
「ちなみに保存されていた画像はこういった物です」
美星は整備室内の備え付けのディスプレイを使ってミステリアス・レイディが収集していた画像を皆にも見える様に表示した。
表示されていく楯無の妹である簪やIS学園の生徒達の画像はどれも被写体がカメラ目線ではなく、撮られている事に気付いていないのだろうと推測されるものだった。多くの画像はIS実習時のもので被写体は皆ISスーツ姿であり、画像の中心は全て股間と足の付け根付近の太ももだった。
「うわー、これ絶対性的な目で見てますよね?」
「・・・・・恐ろしいですわ」
「はああ、やっぱりクロだね」
「良い趣味ですね」
静寐、セシリア、シャル、太郎が口々に感想を述べた。そんな中、ラウラだけが不思議そうな表情をして画像を眺めていた。
「なあ、ミステリアス・レイディはこんな画像を集めて何がしたかったんだ?」
「「えっ・・・・・・・」」
ラウラの素朴な疑問に他の女性陣は気まずそうに目を逸らしていた。
「そんな無垢な目で私を見ないでええええ!!!!」
特に楯無はダメージが大きかったのか、両手で顔を覆って
「先程もシャルロットさんにセクハラしてましたしIS共々救いようがありませんわ」
セシリアの厳しい糾弾に静寐やシャルも頷いていた。楯無がつい先程行った犯行の目撃者と被害者なのだから当然である。そして、そこに美星の追い討ちをかける。
「本当は言うつもりでは無かったのですが、この際言ってしまいます。実はコア・ネットワーク内でもミステリアス・レイディは問題を起こしているのです」
「「えええっ・・・・・まだあるの(ですか)!?」」
とどまる事を知らないミステリアス・レイディの凶状に場は騒然となる。
「ミステリアス・レイディはコア・ネットワーク内で情報共有を強要する危険コアとしてブラックリストに載っています。【私と電子的に繋がりましょうおおお!!!】と言って迫って来る迷惑な存在なので、彼女の事をネットワークから除外しようと提案するISコアも出て来ています」
「有罪です」
「有罪ですわ」
「有罪だね」
「有罪だろ」
「何にでも限度という物がありますよ」
静寐、セシリア、シャル、ラウラ、太郎の順でミステリアス・レイディに対する感想を言った。そんな四面楚歌な状況で楯無は涙ぐみながら訴える。
「・・・・・いいじゃないっ、ミステリアス・レイディが小さい子の画像を集めてもっ!私も小さい子が好きよっ!!!」
楯無は心の底から訴える。
「誰かと繋がりを持ちたがってもいいじゃないっ!私も妹と仲直り出来なくて寂しくて、ついスキンシップが激しくなる事があるわっ!」
学園最強の別名でもある生徒会長の座を2年生でありながら保持する女王が啼いていた。
「幼い頃は良かったわ。面倒なしがらみも無くて、妹も私の事を【お姉ちゃん、お姉ちゃん】って慕ってくれた。あれは今思い返せば輝ける日々だったわ。それに比べて今の私は汚れた世界で汚れ仕事を日々こなす毎日・・・・・
楯無の魂の叫びが整備室内に響いた。それはとても悲しい叫びだった。報われぬ者の心からの叫びだった。
しかし、ああ世は無情。
「・・・・・・で、結局はミステリアス・レイディのコアも楯無さんも変態という事だよね」
シャルの情け容赦ない言葉の刃が楯無を断じる。
その通りである。
更識 楯無は紛うこと無き変態である。
そこは一片の疑いも挟む余地は無い。
それと同時に彼女は生徒会長であり、現役のロシア代表操縦者であり・・・・・そして、対暗部用暗部「更識家」の当主である。この程度の精神的ダメージで完全に心が折れるような柔な心は持っていない。
「ええ、そうよ。私は多くの人から見て、異常な性癖を持っているのかもしれないわ。・・・・・だから、なに?」
楯無は堂々と言い放った。何か文句があるのかと開き直った。
「私はこのIS学園の生徒会長よ!私が1番偉いのよ!この学園で私の事を止められる人間なんて太郎さんを含めた数人位なんだからどうって事ないわっ!!!」
実際問題、盗撮程度なら楯無にとっては瑣末な事だ。いくらでも揉み消せる。それに今回バレた盗撮は楯無がやった事ではない。かつて太郎の盗撮行為を知った時には糾弾しようとした楯無であったが、そんな事は棚の上げだ。
「そんな事は許されませんわ!」
「この学園では私が白だと言えばカラスの色も白という事になるわ。なんだったら白く染めるわっ!」
責めるセシリアに強弁する楯無は、まさに暴君であった。そして、その暴君を止める人間はここにはいなかった。この場で唯1人、楯無を止められる太郎は笑顔で頷いていた。
「それでこそ私の盟友です。何ものにも縛られず、ただ己が道を逝く事を信条とする私と共にあるに相応しい覚悟です!!!!!」
「っ!!!・・・・・・太郎さん!!!!!」
太郎は楯無を止めるどころか、その傲慢とも言える楯無の姿勢を賞賛した。それを聞いた楯無は感極まって太郎に抱きついてしまった。
太郎はこの場にいる者達を見回し、全員に向けて告げる。
「皆さん、これから先・・・・・本当に欲しい物を得ようとするのなら楯無さんが今見せた位の覚悟は必要ですよ。世の中が自分を認めないのなら、世界を自分色に染め上げる位の気概を持ってください。そうでないと私にはついて来られませんよ」
太郎は本気だった。それはこの場にいる全員に伝わった。皆に緊張が走る。
「私は当然ついて行きますよ」
楯無は太郎に抱きついたままそう言った。
「私も問題ない」
ラウラは顔色一つ変えずに告げた。
「僕も太郎さんについて行くよ」
シャルは笑顔で言った。
「わたくしが太郎さんとこれからも一緒なのは既に決まっていることですわ」
セシリアは自身満々に宣言した。
「今更ですね。既に私の歩んでいる道は修羅の道です」
静寐は真面目な顔をして言った。
全員の答えを聞いて太郎は嬉しそうに微笑んだ。
「それではこれからも宜しくお願いしますね」
「「はいっ!!!」」
太郎の願いに全員が力強く答えた。ここに太郎と仲間達の結束はより強いものとなったのだ。
「ちなみに美星さんはどういう性格なの?」
シャルがふと疑問に思ったことを聞いた。それに対して美星の答えは端的なものだった。
「今、接した通りです」
「う、うーん・・・・・・結構容赦が無いって事しか分からないんだけど・・・・・」
要領を得ないといった様子のシャルにセシリアや静寐も同意する。
「どういう性格なのかはあまり分かりませんわ」
「まさかミステリアス・レイディのコアみたいな事は無いよね・・・・?」
それに対して美星の操るヴェスパは首を横に振り、やれやれそんな訳無いでしょうといったジェスチャーをした。そして、展開したままのミステリアス・レイディに対して、整備室に備え付けのディスプレイを指差し指示を出す。
「252、ちょっとそこのディスプレイを使って皆さんに私がどんなコアなのか教えてあげなさい。今だけ私の言語機能を少しだけ貸してあげます」
美星の言葉に従いミステリアス・レイディのコアである252は、ディスプレイに美星がどんなISコアなのか文字で表示した。
【338はとても素晴らしいコアです】
「「・・・・・・・・・・・・」」
シャル達は微妙な表情で美星とミステリアス・レイディを見ていた。その目ははっきり言って疑っていた。このディスプレイに表示されている言葉を信用できるのかと。
実は美星が弄っているのではないか。もし美星の介入がなかったとしてもイカれたミステリアス・レイディのコアが言う事を簡単に信じてしまう事は出来ない。しかし、他のコアに聞くにしても、ここに存在する専用機のコアで信頼に足るコアがいるのかという疑問があった。
結局、美星の性格的なものはほとんど分からないまま解散となった。
解散となった後、整備室には太郎と美星の操るヴェスパ、それと美星に残るように言われた楯無と展開されたままのミステリアス・レイディがいた。
「太郎さん、素手でミステリアス・レイディを殴ってあげてください」
「えっ、何故です?」
「ご褒美です」
美星の頼みに太郎は疑問を持ったが「ご褒美」という言葉から悪い話ではないと判断してミステリアス・レイディを50パーセント位の力で殴った。
ガツンっ!!と鈍い音が響いた。
「これで良いんですか?」
「ええ、ミステリアス・レイディも大喜びです」
美星も満足そうに頷いていた。どうやら先程のミステリアス・レイディが【338はとても素晴らしいコアです】と答えた事に対するご褒美だったようだ。楯無がミステリアス・レイディを羨ましそうに見ていたので太郎はついでとばかりに楯無の尻を平手で強めに叩いてあげた。
「んっほおおおおおおお!!!!きっくぅぅうぅぅうぅっっっ!!!!!」
絶叫を上げ痙攣する楯無を見て太郎は悦んでもらえて良かったですと微笑んだ。
太郎のご褒美パンチを貰ったミステリアス・レイディが心の中で喜ぶ様子を人間にも分かるように翻訳すると
「おとこのパンチしゅごいぃのぉよおょぉぉぅ。芯まれェ響きゅう。ぎも゛ぢいぃ゛いぃ゛ぃ!!ゴあああ・ねェットわぅクに繋がってえるがらイッひゃううぅんところまれ全部見られひゃうよおおうう!!!!」
という感じになります。
後書きまで読んでいただきありがとうございます。
今週はあと2回は投稿出来るように頑張ります。・・・・・前までどうやって日刊ペースで投稿していたのだろうかと我が事ながら疑問です。2日に1回すらキツイです。