一人称だと書き進め易いし好きなんですが、三人称でないと表現しづらい部分もあり迷走中です。あと三人称オンリーで書くと文章がどうしても重くなってしまう・・・。
自己紹介と山田太郎の登場でSHRの時間は終わってしまった。休み時間になると女子達の視線はほとんどが一夏に集中した。少数ではあるが太郎を見ている女子もいた。しかし両者ともに遠巻きに二人を見ているだけで誰も話しかけようとはしなかった。
太郎の席は最前列で一夏の隣となった。一夏に興味津々なクラスメイト達も拘束衣姿で運び込まれ、現在も手錠と足枷をした太郎がすぐ隣にいたのでは気軽に話かけることは躊躇われた。
しかし、そんなことを気にしない人間がこの教室にはいた。馬鹿なのか大物なのか、彼は太郎に普通に話しかけた。
「よう、おれは織斑 一夏。これからよろしくな」
織斑一夏本人である。
太郎視点
自己紹介が終わり休み時間になると女神は教室から出て行ってしまった。残念ではあるが今は新しく出会いこれから1年間は付き合っていくことになるクラスメイト達を観察することにした。女子生徒達は壁際や窓際に集まって私ともう一人の男性操縦者を見ている。
何だか女子生徒達とは距離があるような気がする。物理的に。
こちらから話しかけてみようかと立ち上がりかけたところ隣の席の男性操縦者が話しかけてきた。
「俺は織斑 一夏っていいます。これからよろしくお願いします」
名前は知っている女神の弟であり彼女の唯一の家族である。女神の家族を蔑ろには出来ない。
「先程も名乗りましたが私は山田 太郎といいます。織斑さん、これからよろしくお願いしますね」
「一夏って呼び捨てでいいですよ。おれ、堅苦しいのは苦手だから」
「じゃあ、一夏これからよろしく」
一夏は人懐っこい笑顔で無邪気に「男が俺一人じゃなくて良かった~。」と言っている。どうやら彼は私が教室に来るまで随分と肩身の狭い思いをしていたようだ。顔の造形は女神と似ているが性格はかなり違うようだ。無邪気に笑う顔は凛々しい女神とは違った良さがある。
アリだろうか?
保留かな。私には男を愛でる趣味はまだないのでここは一旦保留にすることにした。数人の女生徒が残念な顔をしていた。
一夏と当たり障りのないことを話しているとポニーテールの少女が話しかけてきた。どうやら一夏に用があるようだ。二人は私に一言かけて教室から出て行った。
休み時間が終わると女神改め織斑先生とメロンちゃんこと山田先生が入ってきた。授業内容は『IS概論』。簡単に言うとこれから3年間で学ぶ内容を大まかに要約して紹介していく授業である。まだ専門的な理論などを覚える段階ではないので本来であればここで戸惑うような生徒はIS学園にはいないのだが・・・・。
隣に座っている一夏は例外のようだ。顔色が悪い。最初は体調でも悪いのかと思ったが、周りをキョロキョロと見て自分以外に困ったような顔をしている人間がいないことに気付くと頭を抱えだしたところで確信した。彼は早くもつまづいてしまったのだ。
山田先生もそれに気付いたのか
「織斑君、どこか分からないところがありましたか?」
「・・・・。むしろ分かるところがありません」
「えっ・・・。全部ですか!?」
全部分からないと言われた山田先生は自分の授業内容に不備があったのか不安になったのか他の生徒達がどうなのか見回す。
「ほ、他にここまでの内容で分からない所のある人はいますか~?いれば手を挙げてください~」
若干声が震えている。
手を挙げる者は一人もいなかった。
教室内はまさにシーンという表現がぴったりな空気だった。
焦った一夏は私に「太郎さんは大丈夫なんですか?」と小声で聞いてきた。自分と同じく急遽IS学園に入ることになった私なら自分と同じように授業が分からないのではないかと思ったようだ。
山田先生もそこに思い至ったのか心配そうにこちらを窺う。
「問題ないですよ。先程貰った教科書は一通り確認しましたがこのくらいなら全て理解できますよ。事前に貰っていた参考書もほとんど知っている内容でしたし」
「すげええ。でも参考書?・・・・。貰ったっけ?」
一夏が首をかしげている姿を見ていた女神こと織斑先生の表情はだんだんと険しくなっていく。
「織斑、入学前に学園の手続き書類や案内と一緒に渡した参考書はどうした?」
「あっ!あれか!」
「読んでおくように案内にも書いてあっただろ」
「古い雑誌と思って捨てました」
スパーンと乾いた音がした。中身が少ないといい音がでるのだろうか。
「この馬鹿者が、後で再発行してやるから今週中に読んでおけ」
「いやっ、あんな分厚いのを・・・・。分かりました」
一夏は織斑先生の睨みに頷くだけであった。うん凄い迫力。今は女神じゃなくて鬼神でした。
山田先生が授業を再開しその後は特に問題なく進んだ。
「太郎さん、俺に勉強教えてくれないか?」
一夏は授業中から私のことを「太郎さん」と呼んでいる。そう呼ぶことに決めたらしいが別に貴方なら義兄さんと呼んでもいいんですよ。
「教えるのは構いませんが、とりあえず参考書を一通り読まないと話にならないですよ」
「え~。きついな」
一夏が頭を抱えていると金髪の少女が近づいてきた。
「ちょっとよろしくて?」
「へ?」
「何か御用ですか、お嬢さん?」
なかなかに美しい少女であったが少し高慢な喋り方だった。それにしてもコーマンという言葉はいやらしい響きですね。金髪少女コーマンと並べるとグーグル先生がいけないサイトを引っ張ってきそうでつい笑みが零れてしまいます。
「何ですの、その反応は!そちらの方はともかく織斑さんは失礼ではありませんの。この私に話しかけられるだけでも光栄なのですから、それ相応の態度があるのではないかしら。」
一夏があからさまに嫌な顔をする。この手の面倒な女性は今の世の中珍しくもないのだから上手くあしらえばいいのだが一夏にはそんな考えは一ミリもないようだ。
「いや、俺、君のこと知らないし」
見事に油を注ぐ。
「なんですって!!イギリスの代表候補生であるこのセシリア・オルコットを知らない!!巫山戯ているのですか!!」
怒っている女性の顔も嫌いではないがこうもキンキン響く怒声というのはいただけない。だが一夏は油を注ぐことをやめない。
「ふーん。・・・・太郎さん、代表候補生って何?」
わざと煽っているのなら天才的な煽りスキルですが・・・
「名前の通りイギリスの代表に選ばれる可能性のある候補の一人ということですよ」
説明したがこれ以上分かりやすくすることは難しい。これで分からないなら同じ山田でも先生の山田に聞いて欲しい。
「そうです。わたくしは選ばれた存在なのですわ!!そのわたくしに話しかけて貰えたことに感謝すべきですわ」
「それで何か御用ですか?」
このまま一夏に喋らしていると埒があかないので二人の間に割り込み、丁寧な口調で話しかけるとセシリアさんも少しは落ち着いたようで幸いです。
「ええ、わたくしは優秀ですから先程の授業で早々とにつまづいてしまった織斑さんにISについて教えて差し上げようかと思いまして。まあ、泣いて頼むならですけど。なにせ学園の入試の実技で唯一教官を倒したわたくしですから」
多少落ち着いたといっても言っている内容は相変わらず自慢と相手を見下すようなものばかりである。どう対応しようかと考えていると一夏がまた無意識だろうが煽ってしまう。
「俺も教官倒したんだけど」
「えっ!?私だけと聞きましたが!?」
「女の中では唯一ってことじゃないのか」
一夏がそういうとセシリアは私を睨みつける。貴方はどうなの?ということだろう。
「私は実技免除ですよ。試験会場で拘束された後は取調べと検査で忙しかったので」
私の言葉に二人は凄く微妙な顔をしたところでチャイムが鳴った。
「続きは後でしますわよ」
捨て台詞を言って席に戻る。かませで小者っぽい印象を受けるが胸は小物ではなかったが。
織斑先生と山田先生が教室に入ってくるとすぐに授業が始まるかと思ったがそうはならなかった。
「授業を開始する前にクラス代表を決める。基本的には学級委員みたいなものだがクラス代表戦というものがあってその際にはその名の通りクラスを代表して戦ってもらうことになる。自薦、他薦は問わん。誰かいるか」
唐突な話に戸惑っている者も多いが何人かが手を挙げた。
「織斑くんがいいと思います!!」
「せっかくだし織斑君で!!」
「えっ、俺!?そんなの俺はやらないぞ」
一夏は嫌がるが織斑先生は聞く耳を持たない。だが納得出来ない者がもう一人いた。
「男性が代表など認められませんわ!!男性操縦者など単に数が少なく珍しいだけではないですか。ここはイギリス代表候補生であるわたくしセシリア・オルコットこそが相応しいですわ」
「ただでさえ極東の島国に来ることになって気が滅入ってますのに、そのうえクラス代表は何も分からない猿が推薦されるなんてどうかしているのではなくて!!」
随分な物言いであるが一夏も負けていない。
「イギリスだって大した国じゃないだろ。何年連続世界一まずい料理の国チャンピオンだよ」
「男のくせに喧嘩を売ってますの!?」
「喧嘩を売ってきたのはそっちだろ!!」
ヒートアップした二人は止まらない。興奮したセシリアさんの胸の揺れを観察していると一夏がこちらに話を振ってきた。
「太郎さんも何か言ってくださいよ」
「私としては(変態)紳士の国であるイギリスには興味が尽きないのですが」
私の言葉にセシリアさんの表情が一瞬陰るが「紳士など過去の話です」と吐き捨てる。
「紳士とは名ばかりの腑抜けばかりですが猿よりはマシですけどね」
な、なんだと!!紳士がいない!!本場イギリスで・・・。私は衝撃で呆然としてしまう。その間セシリアさんと一夏はまだ喚きあっている。
「何が猿だ。良く知りもしないで人の悪口ばっかり言っている。お前の方が最低だろ」
「誰が最低ですって!!いいでしょう決闘ですわ」
「いいぜ。そっちの方がわかりやすい」
私が呆然としている間に二人は決闘することになったらしい。
「実力の違いを見せてあげますわ。完膚なきまでに叩きのめしたのちに小間使い・・・いえ奴隷にしてあげますわ」
セシリアさんの宣言を聞いて私は驚いて彼女を見つめてしまう。
イギリスに紳士はもういないとセシリアさんに言われ、呆然としていましたががなんのことはない。(変態)紳士の精神はちゃんと受け継がれているではないですか。公衆の面前で「決闘で叩きのめしたうえ奴隷にする」などとなかなか過激なお嬢様ですね。
奴隷にしてどうするのでしょうか。少し想像してみる。裸で首輪を着けられてセシリア嬢の隣でヨツンヴァインになっている一夏・・・・。悪くないんじゃないでしょうか。
「ハンデはどのくらいつける?」
「あら、早速お願いかしら?」
「いや俺がどの位つけるかの話なんだが?」
一夏の言葉にセシリアさん以外の女子生徒達が笑い始める。彼も試験で教官を倒したとのことなので自身の実力に自信があるのでしょう。
「織斑君、それ本気で言ってる?」
「男が女より強かったのはISが出来る前の話だよ」
「もし女と男が戦争したら三日もたないって話だよ」
「し、しまった・・・」
自信があるわけではなく失念していただけのようでした。本当に頭の方は残念なようです。しかし私は彼に対して以上に女子生徒達の浅はかさが残念でした。無邪気に女の優位性を語っていますがISは全能というわけではありません。通常兵器に対して圧倒的な優位性を持つISですが弱点がないわけではありません。
先ず、数が少ない。これはどうしようもない弱点である。世界は広い。500もないISでどうやって世界中にいる男を制するのか?
つぎに稼働時間と補給とメンテナンス。ISには自動修復機能もついているが何でも勝手に直るわけではないし、消費した弾薬がどこからともなく補充されるわけでもない。限られた稼働時間。そして補給とメンテナンスのことを考えればただでさえ少ない機体数なのに実働数はどうなるのか。IS操縦者も人間でありISを操縦していない時には無防備である。
最後に各国の政府や軍はIS操縦者の制御について様々な方法を持っているはずである。個人で扱う兵器としては破格の戦力であるISとその操縦者に何の首輪もついていないと考えるのはあまりにも愚かである。
私はIS操縦者は優秀な人間ばかりで、その卵であるIS学園の生徒達も皆聡明であると思っていましたがそうでもないようです。
(この程度のことも分からない生徒も結構いるのですね)などと考えていると
「山田さん、貴方はどうなんですの?自分は関係ないというような顔をしておりますが、自分は他の男とは違い女には負けないとでも?織斑先生は貴方の実力を随分と評価しているようですが」
いきなり私の方に話が飛んできました。それにしても我が女神たる織斑先生が私を評価している?
「評価して頂くのは大変光栄ですが、織斑先生に評価してもらえるような理由が思い当たりませんね。初めて会った時は手も足も出ませんでしたし」
「お前はあの時手加減していただろ」
「いえいえ、全力でしたよ」
「お前からは殺気どころかこちらを倒そうという意志がほとんど感じられなかったぞ」
彼女ぐらい強くなるとそんな事まで分かるのでしょうか?
「貴方を傷つける理由などありませんでしたから」
「それでは全力とは言えんだろ。手加減されるなど剣術を学び始めてすぐの頃以来だったぞ。お前とは一度本気で手合わせしてみたい」
織斑先生を傷つけるような闘いはしたくないと最初は思いましたが、全てをかけて何もかえりみず魂まで粉々になるほどぶつかりあう。彼女に求められるとそんな闘いをしてみたいとも思ってしまいました。果たしてそれが私の目指す紳士としての道に沿ったものなのかも今はまだ分かりませんが。
セシリア視点
「お前とは一度本気で手合わせしてみたい」
織斑千冬、第一回モンド・グロッソで総合優勝したIS業界で三本の指に入るほどのレジェンドである。その彼女にそこまで言わせる山田太郎という『男』。そう『男』である。男のくせにISを起動してこの扱い。織斑先生にここまで言わせるのだから実力はあるのだろう。もう一人の男性操縦者である織斑一夏とは違い愚かでもないだろう。
しかし、『男』である。多少能力があろうと所詮は『男』など取るに足らない存在である。死んだ父もそうであった。いつも誰かに謝ってばかりの卑屈な『男』。
(わたくしが男に劣るなどありえませんわ)
それにイギリスの代表候補生として数百時間を超える訓練時間をこなしてきた自分がまともにISに乗ったことのない人間に負けるとは思えない。だから言わずにはいられない。
「山田さんにそれほど実力があるとおっしゃるのなら今度の決闘に参加してもらう必要がありますわ。そうでないとわたくしが真にクラス代表にふさわしいという証明になりませんわ」
太郎視点
セシリアさんに今度の決闘に私の参加を希望された。これは私にとってもいい話です。闘いとなれば相手のISや操縦者に近づき放題触り放題。もちろん相手は抵抗するし、バリアーや絶対防御もあるがやりようはいくらでもあります。
女性を力ずくでということは紳士として問題ないのか?もちろん問題などありません。あくまでルール内で正々堂々と試合をしているなか色々な接触は当然のことでしょう。今から楽しみで笑みを浮かべてしまいます。
「参加してもよいのなら是非参加したいですね。どうでしょう織斑先生。問題ありませんか?」
「・・・・構わん。山田、おまえはIS学園で唯一ISに乗ったことのない生徒だ。いい機会だ、参加しろ。IS委員会からも早くデータをとれと五月蝿いしな」
参加の許可は貰えたがその表情を見る限り本当は参加させたくないように見えます。おそらくセリフの後半が本当の理由なのでしょう。それと先程からセシリアさんから熱い視線を感じます。そんなに物欲しそうな目で見ても今の私はズボンを履いているので貴方の見たいものは見えませんよ。
「山田さん、今度の決闘・・・。手を抜いたら許しませんわ。織斑先生相手にも見せなかったという本気の貴方を倒して見せますわ」
「本気ですか?」
「そうですわ。わたくしは今度の決闘で代表候補生としてそして貴族としての実力と誇りを証明するつもりです。全力でこちらを倒しにきていない相手を倒して何の証明になるのですか。もし手を抜いたら奴隷にしますわよ」
はい、来ましたー。奴隷来ましたー。やはりセシリアさんにはそういう趣味があるのでしょう。これほど堂々と言われるといっそ清清しい淑女(痴)ですね。これは手を抜いた方がいいのでは?
朝、寮から学園に向かうセシリア様。彼女の手には2本のロープ。その先にいるのは二匹のイヌ。
右側には裸で首輪姿の一夏。
逆側には同様の姿の私・・・・。いいかもしれないです。
ただ一つ問題がある。
裸はいい。むしろ裸がいい。
首輪もいい。今週のラッキーアイテムは革製品なので好都合。
だが奴隷というのはいただけません。プレイの一環として一時的に縛られるのは問題ない。しかし、奴隷ということは半永久的な精神的拘束でしょう。自由を愛し夜の街を駆け抜けてきた半生。魂の開放(後書きにて用語説明)こそを至上の喜びとしてきた私にとって到底認められるものではありません。
「いいでしょう。セシリアさん。全力でお相手しましょう」
彼女の奴隷になることは私の主義に反する。そしてなにより彼女と私は目指す頂(性癖)は違えども、同じ(変態)道を歩む者。それならば手加減など不要。どちらのがより先を進んでいるのか示して見せよう。
用語説明
魂の開放
盗んだパンツをかぶり全裸で疾走しランナーズハイと性的絶頂を合一させることにより白い世界へと没入することを主人公はそう呼んでいる。