暗殺教室でも俺の青春はまちがっている。   作:sewashi

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殺せんせー過去編。
区切り時が難しいです。


百一時間目 真実の時間

殺せんせーは俺らに過去を話す。

「できれば……過去の話は最後までしたくなかった。けれど……しなければいけませんね、君たちの信頼を、絆を失いたくないですから」

殺せんせーは一呼吸おいて言う。

「夏休みの南の島で烏間先生がイリーナ先生をこう評価したのを覚えていますか? 『優れた殺し屋ほど万に通じる』と的を得た言葉だと思います」

殺せんせーは続ける。

「先生はね、教師をするのはこのE組がはじめてです。にも関わらず、ほぼ全教科を皆さんに滞りなく教えることができた。それはどうしてだと思いますか?」

俺らは気がついた。殺せんせーが教えることができた理由。それは殺せんせーがマッハ20の怪物だからじゃない。その理由は……

「……殺せんせーがかつて、殺し屋だったから?」

「正解です比企谷君。そう、2年前まで先生は……「死神」と呼ばれた殺し屋でした」

……「死神」……

「そうか……」

「何がだよ」

前原に聞かれ、俺は答える。

「俺らが出会った「死神」は親を殺した殺し屋の見事なスキルを目の当たりにして殺し屋になったって言ってただろ? 俺はずっとその影響を与えた殺し屋が誰だったのか気になってたんだが、学園祭に来てたロヴロさん達に聞いても誰も心当たりがなかった。そしてあのとき殺せんせーが言った言葉『影響を与えたものがおろかだった』って台詞、今までのどの言葉よりも重みがあった。……つまり、影響を与えた殺し屋ってのは……殺せんせー自身のことだったからだろ?」

「大当たりです、比企谷君。つまり君たちの出会った「死神」はいわば君達の殺し屋として、教え子としての『先輩』に当たる人だったのです。それからもうひとつ」

殺せんせーは言いはなった。

「放っておいても来年三月に先生は死にます。一人で死ぬか、地球ごと死ぬか、暗殺によって変わる未来はそれだけです」

殺せんせーは語り出した。秘められた……『人間』の記憶を………

 

 ……。

 …………。

 ………………。

 

「私は紛争地帯に生まれ、親も自分の名前も知らずに『人は殺せば死ぬ』と言うことだけを知り育ちました。そして今から2年前君達がE組に入る前、きっかけは君達が出会った「死神」の彼が私を裏切ったことでした。私はとある現状な警備の場所での暗殺の仕事で、丸腰で潜入して彼が私を助ける手筈でしたが彼は私を裏切り、私は捕らえられました」

殺せんせーはあえて俺達が出会った「死神」の名前は出さずに話す。

「捕らえられ、連れてこられたのは、刑務所かと思いましたが、予想と違い私はある研究所へ連れられました。その連れられた研究所の主任が皆さんの知るシロさんの正体、柳沢虎太郎でした」

シロの本名は柳沢虎太郎と言うのか……

「柳沢は『反物質』という生成効率がとても悪いが核爆弾なみのエネルギーをもつ物質を体内で生成して量産化させる研究をしていました。私はその実験用モルモットとして連れてこられたのです」

反物質……?

今にして思えば、それが触手細胞の原型なのだろうか?

「柳沢からしてみれば私にその研究理論は理解不能だと思ったのでしょうが、私はその時から殺し屋「死神」としてあらゆる知識を身に付けていたので理解して研究をこっそりとサポートしていました。そして柳沢は私に監視役を着けました。その監視役こそ、君達の前の担任、雪村あぐりでした」

なるほど……いや、なんでそんな凄そうな研究所に単なる中学教師が!?

「聞くところによると、雪村先生のご実家は柳沢の下請けの会社を経営していたそうです。彼女は親の会社の為に柳沢と婚約をすることになっていたそうです。本人も柳沢もあまり意識はしていないように思えましたが……」

この殺せんせーの発言で、何人かは茅野に確認をとったが、それは本当の事らしい。ついでに言うと、茅野もあまり良い印象を持っていなかったらしい。

「あぐりと共にデータチェックのついでに雑談をしてこの椚ヶ丘中学3年E組の事を知りました。他にも役者の妹さんがいることも、他にも彼女が作るテスト問題にアドバイスしたりも、そしてその時、私は教え子の彼が裏切った理由『見る』ということの大切さを知りました」

殺せんせーと雪村先生の雑談の内容は、殺せんせー自身も楽しく語る。恐らくは本人にとっても楽しかった思い出だったようだ……

「そして研究が進み、私の身体は本来動くはずのない方向にしなるようになり今の触手のようになり始めました。そうなったのが君達がE組に入る頃……三日月が生まれる2週間前です」

殺せんせーは俺らを見て言う。つまり雪村先生が俺達の担任になった頃か……

「ここからはまず、三日月が生まれた日です。雪村先生との関係は、調度一年になり、雪村先生は、私にプレゼントを持ってきました。理由は雪村先生は私が自分を支えてくれたとお礼と、雪村先生は私が誕生日を知らないことからその日を私の生まれた日にしようとプレゼントをくれました。まあ、囚われの身だったので受けとることはできませんでしたが……」

確かに三日月が生まれたあの日、雪村先生が何やらご機嫌だった。カバンにプレゼントっぽい箱もあった。

しかし、殺せんせーの表情がこわばる。

「その2時間後、月には反物質が埋め込まれたモルモットマウスが全自動で飼われていました。柳沢の研究で反物質生成の生物の老化による影響を調べるため念には念をで月で実験したんでしょう、そしてその実験の結果は最悪でした。反物質は体内から暴発し、月の約七割を消し去りました。ここで皆さんに嘘をついて申し訳ないのですが、先生は月が月を破壊したわけではありません。私と同じ中の細胞が月を破壊したのです」

そうだったのか!? つまり、月はネズミが破壊したのか!?

いや、それは良い、つまり……

「柳沢はそのマウスと同じ現象が来年3月13日に起こると予想し、私を処分、つまりは殺そうとします。そして、その事をしったあぐりがそれを知り、私に話してしまったのです」

殺せんせーは『雪村先生』から『あぐり』に呼び方を変えて言う。

「当時の私には、自分の死が見えたことで、あぐりの声が届かなくなっていました。私は実験に絶えて得た能力を使い、研究所を破壊の限りを尽くしました。その時の私は『どうせ死ぬなら地球ごと死のう』としか頭にありませんでした。柳沢は私を殺そうと、皆さんが使っている対先生弾。イトナ君や茅野さんに生やした触手等を使いましたが、私には通じませんでした。研究所を破壊したのち……その私への攻撃のうち一撃が……あぐりを貫きました」

これを聞いた瞬間、俺達は、特に茅野は目が変わった。

「0.1秒。それだけ早く気づけば「死神」として得ていた医学知識で治せる傷でした。触手を医療に使う訓練もしておらず得たものを全て相手を壊すことを目的として使ってきた。しかし、あぐりに気づかされた。そのちからをもっと他の使い方ができたことに……あぐりは私が殺したも同然だと、しかしあぐりは最後に微笑んで言いました『あなたになら殺されてもよいと思う、そのぐらいあなたを大切に思えるから、きっとあなたもそんな相手に巡り会えますよ』と、その時の私にはあぐり以外にそんな相手がいるとは思えませんでした。そしてあぐりは言ったんです」

 

『もし、残された1年間、あなたの時間をくれるなら、私の生徒たち、あの子達を教えてあげて、あなたと同じように……あの子達も闇の中をさ迷っている。真っ直ぐに見てあげれば……きっと答えは見つかるから』

 

「あぐりは、私の触手を見て私なら素敵な教師にと言い残して生きを引き取りました。私はそのあとあぐりの懐に入っていたプレゼントだったこのネクタイを首に閉め『椚ヶ丘中学3年E組の担任ならやってもいい』と書き置きを残してその場を離れました」

殺せんせーが言うと、茅野が言った。

「たぶん、私が見たのはそこからだったんだね。私の目にはお姉ちゃんの遺体の血を弄ぶ怪物にしか見えなかったけど……」

「そして私は政府や関係者から連絡が来るまで適当な山の中で教師になる準備をしました。その時、触手が私に聞いてきました『どうなりたいのか?』と」

これは堀部が言っていたことと同じだ。

「私は答えました『弱くなりたい』と、弱点だらけで思わず殺したくなるほど親しみやすくこの触手にふれるどんな弱いものも感じとり導ける、そんな生物に教師になるために――そして私が生まれました。そして現在です」

殺せんせーは話を区切る。




次回は対決編寸前までを投稿予定。
頑張ります。

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