緋弾のアリア 不屈の武偵   作:出川タケヲ

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用心棒 雅  2

 

 

「――何っ!? 侵入者だと!!」

 時雨沢組の組長、時雨沢景義(しぐれさわかげよし)は2人の側近の報告に耳を疑った。

 

 

 深夜ということもあって深い眠りに着いていたのを、大慌ての側近に叩き起こされてつい先程まで不機嫌だったのだが、そんな事はもうどうでもよくなっていた。

 徐々に近くなってくる銃声と組員の断末魔が、時雨沢の不安を煽ってくる。

 

 

「見張りは何をしていた!?」

「どうやら全員気絶させられたようで……応戦している組員からも連絡は一切ありません」

「くぅ……そうだ、雅(ミヤビ)はどうした!?」

 時雨沢が怒鳴る。側近はとても言いにくそうに、

 

「ね、寝ております……」

 と、答えた。

 

「――だったら早く起こしてこい!」

「っは!」

 側近の1人は一目散に部屋の襖を開けて、雅を起こしに行った。

 

「何のために金を払って用心棒をやらせていると思っとるんだ……!」

 歯を食いしばりながら、時雨沢は柱を殴った。

 

「おい! 敵は何人だ!?」

「確認できたのは1名だけですが、相手は武偵という報告があり、伏兵が隠れている可能性もあります」

「武偵……ッ!?」

 時雨沢がその単語を反芻した、その時……!

 

 

 バタンッ! と襖を蹴り倒しながら、彼らの目の前に人影が現れた。

 

 

「その通り、俺は武偵だ。テメェら全員、武器密輸及び麻薬売買の容疑で逮捕する。大人しくしていれば怪我しなくて済むぜ?」

 

 その人影の正体は、朱葉響哉だ。NVDを額に上げ、LAM付きのH&K P2000を時雨沢らの方に向け、その引金には人差し指が掛かっている。

 

 

 

「――侮るな、若造がァ!」

 

 

 時雨沢は着物の中から自動式拳銃……『SIGARMS GSR』を抜こうとした。

 

 

「甘ェ!」

 

 『第六感』でそれを察知していた響哉が、P2000の引き金を引き時雨沢の手から拳銃を弾き飛ばす。銃声に萎縮した側近は「ヒィッ!」と短い悲鳴を上げて身を竦ませ、時雨沢は撃たれた手を庇いながら響哉を睨んだ。

 

 

「無駄な抵抗はやめろ!」

 響哉は投降を促す。

 

 

(ここまでか……!)

 時雨沢は諦めかけ、その目を硬く閉じた。

 

 

 

 

 

 

 

「それは困るわ」

 

 

 

 

 スゥっと襖を開け、その奥から姿を見せたのは……15、6歳程に見える、上下黒い服を着た少女だった。

 

 その少女は響哉と時雨沢の間に立ち、冷たい瞳で響哉を見据えた。

 

 

「女……!?」

 

「み、雅! そいつを殺せ! 殺すんだぁ……ッ!」

 

「分かった」

 

 抑揚のない声で答える雅。そんな彼女の背後では、時雨沢とその側近が部屋から出て行こうとしていた。

 

 

「待ちやがれ!」

「あなたの相手は私」

 

 雅は床を蹴り響哉との距離を詰めた。一瞬だけ気が時雨沢の方に向いていた隙を突かれたが、先に攻撃したのは響哉だった。

 

 

 響哉はP2000を正面に向けていたため、即座に引金を引くことができた。銃声とともに発射された9ミリパラベラム弾は雅の脚に目掛けて飛んでいく。

 

 しかし、雅は響哉が撃った瞬間、横に跳んで銃弾を躱した。その動きを『第六感』で予測できなかったことは大きい。

 

 彼女はその直後、響哉の側頭部に回し蹴りを繰り出し、響哉の身体を吹っ飛ばした! 家の柱に頭を強くぶつけ、響哉は頭部から血を流している。

 

 

(なんて動きだ……反射神経は銭形並みか?)

 

 響哉は畳に唾を吐き捨てながら、素直に彼女に感心していた。

 

 

 立ち上がる時にコンバットナイフを取り出し、右手に拳銃、左手にナイフを構え、大きく息を吐いた。

 

 すると、響哉の視線が鋭くなり、威圧感が増していく。

 

 

「…………」

 

 何かを感じ取ったのか、雅は響哉が立ち上がる間に自動式拳銃『ベレッタM8045 クーガーF』とナイフを取り出し、互いに一剣一銃(ガンエッジ)の構えとなり対峙した。

 

 

 

 一時の静寂が辺りを包み込んだ後――――響哉と雅は、同時に駆け出した。

 

 

 


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