うずまきナギサ物語~姉の愛は世界を救う~   作:レイリア@風雅

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9話 ”ライナ”

 

 

「大分、チャクラの使い方がなってきたのぉ」

 

「そりゃ半年修行付けて貰ってんだ。これくらい出来る様になってなきゃアンタに申し訳が立たないよ」

 

 

地面に降り立ち、グッと伸びをする。

 

 

「あとは”鬼神”の力をコントロール出来ればいいんだけどな」

 

 

ガラガラと砕け散っていく岩壁を横目に見て私は苦笑を浮かべつつ頬をかいた。

エロ仙人に師事してもらうようになって早半年が経った。

自分で言うのもなんだけど、大分強くなったと思う。

一応エロ仙人にも認められるくらいには成長出来たし。

得られた中でも一番大きいのは自分の記憶と、他の誰かの”記憶”を見分けられるようになってきたことだろう。

 

 

「ナギサ、ワシは暫く里を出ることになるが……”記憶”が湧き上がっても不安になるなよ。

惑わされそうになったときは……」

 

「わーってるよ。『自分の大切な人を思い出せ。本当に自分の”記憶”なら大切な人のことが必ず頭に浮かんでくるはずだ』……だろ?」

 

 

何度も何度も口酸っぱく言われたもん。

バカでも覚えるさ。

 

……あれから、途端に蘇る”記憶”が、自分の”記憶”なのか、それとも見ず知らずの誰かの”記憶”なのか……分からなくなることが増えた。

最初はすごく不安になったよ。

でも、その度にエロ仙人はそう言ってくれた。

そんで、ちゃんと思い返してみるとさ、ちゃんと見分けられるようになる。

 

私の”記憶”だったら、その日はイタチと喧嘩したんだっけ、とか、そういえばその後母さんに偶々会えたんだよな、とか他のことも連動して思い出せる。

逆に私の”記憶”じゃなかったら、他には何も思い出せない。どこか冷たくて、暗くて……嫌な感情ばかり渦巻くんだ。

多分、”鬼神”が喰らった人間たちの、恨み、憎しみ、哀しみ、怒り……そんな感情が湧き上がってくるんだろう。

 

 

 

「私なら大丈夫。エロ仙人なんか居なくたって一人でバリバリ修行して、見返してやるくらい強くなってやるし」

 

「全く勇ましい奴だ……『いや!私を置いて行かないで自来也先生ー!』と素直に言えばいいのにのぉ」

 

「そんなこと思ってねーし誰が言うかボケェー!!」

 

 

そんな小ッ恥ずかしい台詞、誰が言うかよ!

これだからエロ仙人は、と剥れていると、頭をわしわしと撫でられた。

 

 

「ナギサ。お前の目標に向かって頑張れよ。このワシが応援してるんだからよ」

 

「!」

 

 

―――だったら強くなって火影の傍にいられるようになりゃいいだろ。

―――強くなって強くなって……火影を守れるような忍になれば、問題ないはずだと思うんだ!そうしたら少なくとも、ずっと父さんと一緒に居られる。

 

 

「辛いからって諦めたりしたら承知しねーぞぉ?」

 

 

父さんと母さんと一緒に居たい、その想いだけで語った目標。

あんな途方もない、叶うかどうかも分からないようなそれを、エロ仙人はバカにするでもなく真剣に聞いてくれていたんだ。

 

 

「……エロ仙人のくせに」

 

 

もう里からいなくなるって時にそんなこと言うなよ。

 

 

「いつもいつも女風呂覗くようなオッサンが何言ったってかっこよくねーっての……!」

 

 

言葉とは裏腹に熱い物が次から次へと目から零れ落ちていく。

かっこ悪いな、私。

もう帰ってこないわけでもないのに……。

エロ仙人はといえば、私の涙を指摘することなくただ穏やかな笑みを浮かべているだけ。

私ばかり寂しいみたいで、悔しくなった。

 

 

「そんな顔をするな。

お前にはやりたいことがあるんだろう?」

 

 

お前はお前らしく自分の決めた道を真っ直ぐ進め。

それがお前らしい。

そう言って、エロ仙人は私の頭を撫でた。

 

 

「離れておってもお前は誰が何と言おうが、ワシの可愛い愛弟子だ。

いつも、お前のことは応援しておるよ。」

 

 

だから、そういうこと言うなって。

余計止まんなくなっちゃうじゃんか。

 

 

「っ、エロ仙人」

 

「ん?」

 

「手……繋いでもいいか?」

 

 

夢、だったんだ。

父さんや母さんに両手を繋いで、里を歩くのが。

でもきっと、それは叶わないんだろう。

 

 

「仕方ないのォ……可愛い弟子の頼みだ」

 

 

ほら、と差し出された手。

恐る恐る繋いだそれは私のなんかよりずっとずっと大きかった。

 

里の門へと続く道をエロ仙人と手を繋いで歩く。

バカみたいな会話をしながら、時折蹴り合いなんかやりながら。

それでも手だけは外さなかった。

 

 

「ナギサ……」

 

「んー?」

 

「大丈夫か?」

 

「んー……うん」

 

 

不躾な視線なんて気にしてられるかよ。

今は一人じゃないんだ。

隣に居るのは何よりも安心できる、私の師匠。

 

 

「だって自来也先生が隣に居るし」

 

「そうかそうか!ようやくワシの偉大さがお前にも……って……い、今なんて!?ワシのことなんて呼んだ!?」

 

「門までもうちょっとだなー」

 

「無視するなァー!!もう一回!もう一回だナギサ!!頼む!!」

 

「やーだよ」

 

 

遠ざかっていく、大きな背中。

それに向かって大きく息を吸い込んだ。

 

 

「エロ仙人!!絶対帰って来いよな!!」

 

 

振り返りはせず、高々と突き上げられた拳。

私も笑って拳を突き上げた。

 

寂しくないって言ったら嘘になる。

けどさ、もう大丈夫だ。

いつエロ仙人が帰ってきてもいいように、私は私の目標に向かって突き進んでいくよ。

 

 

「よーし!頑張るぞー!」

 

 

+++++

 

 

 

エロ仙人が旅立ったその一週間後のこと。

私は16くらいの男に変化し、火影の執務室にいた。

そんな私の周りには忍刀やクナイを構えた暗部が数人囲んでいて、正面には父さんの姿があり、まぁ……その……私が無断で侵入したという状況である。

 

 

「貴様っ!何の目的でここに来た!!」

 

「火影様には指一本触れさせんぞ!!」

 

 

好き放題言ってくれる暗部を無視し、父さんに向かって口を開こうとしたその時、スッと父さんの手が上がる。

 

 

「みんな、下がってくれ」

 

「なっ!?」

 

「四代目!?」

 

「下がるんだ」

 

 

有無を言わせない一言に彼らは渋々武器を下ろした。

正直意味が分からなくて父さんを見つめれば、柔らかい微笑みで返される。

 

 

「君からは全く敵意を感じないからね、あんな風に身構える必要はないと思ったんだ。

それで……君の要件は?」

 

「……俺を暗部に入れてください!!お願いします!!」

 

 

その場で膝をつき、土下座する。

暗部の奴らが動揺したのが空気で分かった。

 

 

「……暗部に入りたいって、君はまだ下忍にすらなっていない一般人だろう?

いくら何でもいきなり一般人を暗部にいれる訳にはいかない」

 

「もし俺が暗部の試験に受かったとしても、ですか?」

 

 

その言葉にピクリと眉を動かす。

私はそんな父さんの目を真正面から見て、私たちは暫し見つめあった。

 

 

「……来年の7月、暗部採用試験が行われる」

 

「!」

 

「正直他の忍と比べたら合格基準が些か厳しくなると思うが……。

君が正規の忍だったら別ルートからの推薦入隊って形にも出来たんだけど、それは無理だし、今年の採用試験はもう終わっているからね。

来年の試験を受け、もし合格したら入隊の許可を出そう」

 

「え……?」

 

 

四代目?!と驚いたような、咎めるような声があちこちからあがる。

しかし、父さんは構わず、微笑を浮かべ、私と視線を合わせるように片膝をついた。

 

 

「その代わり、何故そんなに暗部に入りたいのか、その理由を聞いてもいいかな?」

 

「……守りたい人が、いるんです。

俺は、この里を守ろうとする俺の大切な人たちの為に、力を使いたい……。

その人たちが里を守るなら、俺はその人たちごと里を守りたいんです。

俺の理由は、それだけです」

 

「……ん!いい覚悟だね。

何よりいい目をしてるよ。」

 

 

ニッコリと笑い、父さんは私に手を差し伸べた。

 

 

「ちょっと遅くなったし、知ってると思うけど、改めて名乗らせて貰うよ。オレは波風ミナト。ここ、木ノ葉の里をおさめる火影だ。

君の名前を聞かせてくれないか?」

 

 

私は差し伸ばされた手を取って立ち上がり、この時のために考えた名を、口にした。

 

 

「俺の名は……。

ライナ」

 

 

大切な人の名前を合わせた、私のもう一つの名前。

 

 





非常に遅くなり、申し訳ありませんでした!
もう放置してから何か月目だよ!二か月目だよ!!←
ここでちょっと解説をば……。

○ライナ○
ナギサのもう一つの姿。
16歳くらいの少年で、ショートウルフの黒髪に青目。
左耳に赤いピアスをしていて、実はこのピアスによってチャクラを変えており、変化だとばれない様にしている。
ちなみにピアスは自来也からの贈り物。

以上です。
これからも度々遅れるかもしれませんが、お付き合い頂けると嬉しいです。

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