うずまきナギサ物語~姉の愛は世界を救う~ 作:レイリア@風雅
「よし、ではこれから修行を行う……とでも言うと思ったかバカ者めー!!」
「……」
なんか一人で真面目オーラ出し始めたと思ったら今度は凄い顔でバカにし始めた糞ジジイ。
逆に私はどういう反応をすればいいのか分からない。
いや、マジで。
「まずは礼儀というものを身に着けてから出直して来いのォ!」
「礼儀、ねぇ……」
一人高笑いをするエロ仙人を後目にどうしたものかと腕を組む。
確かに敬うべきかもしれない、が……。
所詮女湯を覗くような変態親父なんだよなぁ、この人。
「まずは自分の行いを振り返ってみろよ。
敬いたくても敬えないわ、ボケ」
「本当に可愛げのない……お前それでも2歳児か!?ガキらしくねーっての!!
ガキはガキらしくしょんべん漏らして泣いてりゃ可愛げがあるってのに!」
「そんな時代とうの昔に通り過ぎたよ。つーか汚い」
「悪かったな汚くて!!どうせワシは汚ねー大人だよ!!」
「いや別にエロ仙人が汚いって言ってるわけじゃ……」
つーかなんだこの人めんどくさい。
唾飛ばして怒鳴り散らすから服についちゃったじゃないか。
……あ、やっぱエロ仙人も汚いわ。
「あー、もう面倒だな!!いいから私にさっさと修行付けやがれこのくそエロジジイ!!」
「なんっちゅー態度だ!
ガキならガキらしくもちっと可愛く頼んでみろ!ええ!?」
「はぁ!?意味分かんない!!
そっちこそいい年した大人のくせに大人げねーんじゃねーの!?
そもそも私に用事だったんだろ!?ならさっさと修行つけろ!今すぐに!!」
「大人げなくて結構!
ワシはな、お前みたいなちんちくりんで口の聞き方のなってねーガキが大嫌いでのォ!!」
「ちんちくりん~!?まだ2歳なんだから当たり前だ!!
あと十五年したらピチピチのナイスバディになってやるっての!!てめーが鼻血でジェット噴射出来るくらいのなぁ!!」
「ハン!!お前じゃ十五年経っても口の減らない頭の悪そ~なまな板ギャルにしかなれないっての!!」
「なんだとゴラァ!?」
「やんのかガキ!?」
ぐぬぬ、と睨み合いの唸り合い。
「「フン!」」
同時に鼻を鳴らし、そっぽを向いてしまった。
そのことにイラァっと苛立ちが募る。
それは向こうも同じだったみたいで、舌打ちされた。
ぶっちーん。
もう怒っちゃったもんねー……!!
「いいからさっさと修行つけろよ……こっちは早く強くなんなきゃいけないんだから……!!」
この一か月で覚えた術の印を結ぶ。
アカデミーも今日はないし、最悪イタチの前で『私』が消えようが構わないだろう。
「ふん!クソガキのお前に何が出来る?
こんなにも礼儀知らずなガキだったとは……もうワシ怒ったからな!
修行の話はナシ!!諦めるんだのォ」
「聞いてりゃガキガキクソガキって……うるせーんだよ、エロ仙人が……!
クソガキにだってな、これくらいは出来るんだよ!」
多重・影分身の術!!
森一帯を埋め尽くすんじゃないかってほどの量の影分身を出現させる。
流石のエロ仙人でも僅かに目を見開いて動揺しているのが分かり、内心ほくそ笑む。
「「「「これで帰れねーだろ!!!」」」」
「(この年でこれほどの分身体……しかも影分身だと……!?
幾ら鬼神を封印されてるとはいえ……コイツ、一人で一体どんな修行を……!?
生まれ持った才能、か……流石は親子だのォ。忍の血は争えんか)」
「どーしたよ?ビビッてんのかぁ!?」
「天下の三忍様が情けないことだな!!」
「ほーら!かかって来いよエロ仙人!!」
「……まずは全員消し飛ばしてやろう……話はそれからだ」
青筋を浮かべたエロ仙人は何やら印を……っておいおい!
あれ口寄せか!?
「口寄せの術!!」
「「「うわぁあああ!?」」」
エロ仙人の近くにいた影分身が潰され、一気に4分の1ほど消されてしまった。
おいおいウソだろ……。
片頬が引きつるのを感じながら口寄せされた生物を見上げる。
「で、でっけー……」
身の丈何十メートルだろう。
少なくとも木なんて当に超えてやがる。
そんな巨大なガマガエルを口寄せしやがった当の本人はといえば、蛙の頭の上に仁王立ちしている。
「ブン太、突然呼んですまんなぁ!」
「全くじゃ!久しぶりの娑婆じゃぁ思ぅたらこんな狭い森の中なんかに口寄せしおって!!」
「だから悪かったっての。ちょっと躾のなってねーガキがいてのォ」
「あん?」
蛙の目がギョロリとこちらを向いた。
流石に怖い。
何がって……まずこの大きさにビビるって。
「これまた随分ちっこいガキじゃなぁ……。
……ん?あのガキ……顔が四代目に似とる気がするけんのォ」
「そりゃ当然だ。何せアイツの娘だからのォ」
「!なるほど……あの娘が例のガキ、というわけじゃな」
「!」
エロ仙人、私の出自まで知ってんのか!?
あの蛙もまさかの把握済みって……。
「ハッ……」
こりゃ、マジで修行つけてもらわないといけないな……!
そもそも私の中にいる‟コイツ”の存在がなんなのか、正確に理解しているのは多分エロ仙人だけだ。
絶対にこのチャンス、逃がすわけにはいかない。
「まぁ、見ての通りとんだじゃじゃ馬の野生児でな……少し痛い目見せてやろうかと思っての」
「っだーれがじゃじゃ馬の野生児、だぁあああああああ!?」
怒鳴ろうとしたその瞬間、蛙の長い舌が迫ってきていることに気付いた。
瞬時に木から飛び降りれば、横なぎにされ、吹き飛ばされる影分身数体。
あ、あっぶな……。
あんなの2歳児がまともに喰らったら死んじゃうだろうが!!
「くそッ……何かいい手ないの!?いい手!!」
あんなに覚えた術はいざ実践で役立つかと言えば、そうじゃない。
エロ仙人レベルならまず間違いなく通用しない。
それくらい、私だって分かってる。
「ッ!?」
再び襲い掛かる巨体に一斉に逃げ出す。
逃げることで精一杯なこの身体はやっぱり不便で、苛立ちと共に悔しさが溢れた。
ギリッと奥歯を締め、諦めそうになる自分を奮い立たせる。
こうなったら変にちょこまか逃げたって仕方ない。
どうせ体力ありまくりの蛙に敵うはずもない。
……だったら。
意を決して私は飛び上がり、木の上に登った。
流石に想定していなかったらしいエロ仙人が意外そうに目を見張る。
「なんだ……もう降参か?
吠えてた割にゃー根性ないのォ、お前」
「ハッ……降参?誰がするかよ……」
そりゃ、疲れてはいるけどさ……。
まだ立てるし、まだ走れる。
まだ、私は折れちゃいない!
あくまで見様見真似。
それもきちんとチャクラを扱いきれていない私が‟これ”をやったってたかが知れてる。
でも……やるっきゃないだろ。
「負けるもんか……絶対に諦めるもんか!!」
「!それは……!!」
「あんたに私を認めて貰うまで……絶対に私は諦めたりしない!!」
掌の上で乱回転し、輝くチャクラの塊。
それを今度こそ驚愕に目を見開くエロ仙人を見据える。
里の奴ら全員に、なんて……。
そんな無謀なことは思ってない。私には思えないよ。
でもさ……。
大切な人には認めて貰いたいんだ。
私の存在を、その価値を。
イタチ。
父さん。
母さん。
この三人しか大切な人なんていない。
別にそれ以上欲しいとも思わない。
エロ仙人……。
大切でもなんでもない、まだ出会ったばかりの赤の他人……。
それでも、あんたに認めて貰いたいんだ。
なんでって言われると、そうだな……。
化け物が封印されてるって知ってるくせに里の奴らみたいに私を凶弾したりしなかったからかもしれない。
だから、手を伸ばしたくなった。
クソガキだなんだと言いつつ、私を認めてくれるだろう、あんたに。
だってさ……。
もし本当に嫌いで嫌いで絶対に関わりたくないんなら、そう思った時点であの冷たい目をするはずなんだ。
そして私の存在なんて認めたくないとばかりに無視をして、ムカついたら問答無用で暴力の限りを尽くして……。
口寄せして、ちょっと怖がらせよう、なんてそんなまどろっこしいことしない。
なら、届く内に掴み取ってやる。
あんたに認められる、その可能性を……!
あんたに認められる未来を!!
「うぉおおおおおおおおおおおおおおおおお!」
蛙の舌も妨害してくるクナイの雨も自分の持つ技量全てを使って紙一重でかわし、エロ仙人の懐に突っ込む。
「なんだと……!?
(あの攻撃をすべてかわすか……!)」
「いっけぇええええええええええええええ!!」
螺旋丸!!
水色の綺麗な輝きを放つ球体は、もう少しで届くという所で輝きを失い、消失した。
頼りない私の小さな手がエロ仙人の腹に触れたその直後、私の身体は吹き飛ばされ、宙を舞っていた。
あー……くそ……。
負けちまったか……。
憎たらしいほど雲一つもない青空が視界を埋め尽くしたその瞬間、意識はブラックアウトした。
+++++
「ん……」
目を覚ますと、私は森の中で寝ころんでいた。
身体中が痛いし、なんだか怠くて起きられそうもない。
……エロ仙人帰っただろうな……
いつの間にか傍に来ていた虎が心配そうにきゅんと鳴いた。
それに構う余裕もなくて、腕で目を覆い隠す。
「くそ……っ」
認めさせられなかった……!!
「なーに泣いとるんだ」
「!!」
身体が悲鳴をあげるのも構わず、飛び起きる。
目をやった先には確かにエロ仙人がいて……。
じわりと視界が滲んだ。
「や、やっぱ傷、痛むか?」
「え……?」
「流石に2歳児相手にここまでするのは大人げなかったのォ」
片目を閉じて少しだけバツが悪そうな笑みを浮かべた。
何がどうしてこうなったのか全然分からない。
だって私は負けたんだ。
認めて貰えなくたって当然なのに……。
「な、んで……」
「ん?」
「どうして……なんで……帰らなかったんだ……?」
「なんだ、帰って欲しかったのか?
なら、帰るとするかの」
「ま、待って!」
激痛をこらえながらなんとか服の端を掴む。
エロ仙人は驚いたような顔をして、振り返った。
「そ、そんなこと言ってないだろ……」
「じゃあ何が不満なんだ」
「不満とかじゃなくてさ……わ、私……あんたに認めて貰えなかったんじゃないのか……?
ガキらしくないし、口は悪いし、強くもなくて、ちんちくりんなのに……」
「!」
あんたの求める物、一つも持ってない自分が情けない。
かといって求める物になれるかと言われればそうでもない自分が悔しい。
「い、今更ガキらしく、なんて……わかんないよ……。
口が悪いのも元からだし、今すぐ強くなんてのは現実的に考えて無理だ。
ちんちくりんなのは変化使えばなんとかなるかもしれないけど……」
「……ハァ……」
呆れたように溜息をつかれた。
終わったな……。
もう、‟これ”のことなんて教えてもらえない。
修行なんて論外だ。
きっと、認めて貰う機会ももう二度と来ないだろう。
鼻の奥がツンとする。
瞳に溜まった物が零れ落ちないように必死にこらえた。
せめて立ち去っていく瞬間に跳び蹴りしてやる。
痴漢で打ち首になれ!とでも叫んでやろう。
そんなバカみたいな強がりを、多分エロ仙人は気付いていた。
必死に平静を装うとする私の頭にそっと置かれた大きな手。
「そういう所が子供らしくないんだってーの」
「!……?」
「大人の要求を子供が叶える必要はどこにもねーよ。
今の姿がお前の自然体なら、無理に子供らしくする必要はねーのォ。
口が悪いのだってそうだ。必要な時以外に子供が敬語なんざ使う必要はない」
一回、もう一回。
ぎこちない手つきで些か乱暴にぐしゃりと頭を撫でられる。
目が、すごく熱かった。
「そもそも2歳児のお前がワシに一撃をくれるほど強いだなんて思っちゃいないのォ。もしそれほどまでに強かったらこれから強くしてやろうってのに楽しみがなくなっちまう。
ちんちくりんなのは仕方ない。十五年後を楽しみに待ってやるさ。……ま、所詮お前のことだ。ボン!キュッ!ボン!なお色気お姉さんにはなれねーだろうが、そんなのは大した問題じゃないのォ!」
茶化すようにそう付け加えるくせに、その声色も頭を撫でる手もこれでもかってほど優しい。
優しくて、温かくて……。
ボロボロと零れ落ちるそれに情けないとは思いつつも止める術がなく、どんどんと溢れるばかり。
「ナギサ」
「!ぇ……」
今、私の名前……!
反射的に顔をあげる。
晒してしまったみっともない私の顔を見るなりエロ仙人は笑って、私にとっては大きな親指の腹で目元を拭ってくれた。
「ナギサ、お前はお前のままでいい。お前らしく居ろ。
そして出来るだけさっきみたいに素直に自分の想いを吐き出せ。
……それがワシがお前に修行を付ける条件だ」
「!」
「泣け泣け!それも立派な子供の仕事だ、のォ?」
「う、うぅ……うわぁあああああん!!」
みっともなく泣き叫んだ。
母さんや父さんの目の前でもこんなに叫んだことなんてないってくらい、泣き叫んだ。
うるさかっただろうにエロ仙人は嫌な顔一つせず、私の頭を撫でながらずっとそばにいてくれた。
微笑みすら浮かべて……。
色々あったものの、エロ仙人とこうしてなんとか師弟関係になれた。
……師弟関係になるだけなのに代償が大きく、怪我と疲労感に暫く苛まされたけど。
でもこれでようやく‟これ”とも向き合えるし、みんなを守れるくらい強くなれそうだ!
どんなに辛い修行だって耐えてやる!
どんな困難だって負けたりするもんか!!
「げへ、げへへへへ」
「……」
「やっぱり木ノ葉はいいのォ~、綺麗な姉ちゃんがいっぱいだのォ~~、うへへ……」
「……エロ仙人……」
女湯を覗き見していたらしいエロ仙人の肩が跳ねあがる。
ゴキッ、バキッと無表情で関節を鳴らしているとだらだらと冷や汗を流し、面白いくらいにさぁああっと青ざめた。
「い、いやー、落ち着け?な?話せば分かる!
今回はちょーっと魔が、いや、覗きという名の不届き者がいないかの監視をだな……!」
「結局覗きじゃねーか」
「あ」
「よし、くたばれ」
「ちょ!?それはちょっと冗談にならねーっての!!」
「問答無用ォオオオオオ!!」
やっぱりちょっと前途多難、かも……。
いやー、なんとか書きあがりました……。
一回タブを閉じてしまって、全消しになったかもと青ざめました……。
今回は少しだけナギサに子供らしさを出してほしいなーと思い、自来也と大喧嘩して貰いました。
それ以外特に何も方針は決めてなかったのですが……いやぁ、勝手にキャラが動く動く(笑)
何より自来也とナギサのやり取りを書くのが思いの外楽しくて、自分の方がのめりこんでしまっていました。
それでは閲覧くださった皆さま!
ありがとうございました!!
よりよい文章を書きたいと思っておりますので、感想・ご意見・評価などなどお待ちしております!