うずまきナギサ物語~姉の愛は世界を救う~   作:レイリア@風雅

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12話 うちは家の食卓

 

もそもそと漬物を咀嚼し、チラリと視線を上げるとニコニコ微笑みながらこちらを見ているミコトさん。

見られている事には気付いていたが、目が合ってしまったことで反応に困り、そっと視線を逸らす。

逸らした先には会話もなく、ただ黙々と食べ進めるフガクさんとイタチ。

いや、フガクさんはイタチに話しかけようとしているようで、時折じっとイタチを見つめては口を開くが、少し迷ったように視線を彷徨わせた後に口を閉じ、再びおかずに箸を伸ばすという行為を続けていた。

つまり何が言いたいのかというと……。

うちは家の食卓は非常に静かだということだ。

イコール、外部の人間である私からすればかなーり気まずい。

 

 

「母さん、この煮物美味しいな。味付け変えたのか?」

 

「あら、イタチ良く気付いたわね。その通り、ちょっと隠し味を加えてみたの」

 

「なるほど」

 

 

これがいただきますをしてから初めての会話。

それ以降、ずっと会話がないってどういうことだってばね……。

思わず母さんの口癖が出てしまう。声には出してないけど。

 

 

「え、えーっと……」

 

 

静寂に耐え切れなくなって声を発した直後に後悔した。

うちは家の視線が集中したからだ。

うわ、この空気をどうにかしようなんてどうして思っちまったんだろう?

だって気まずかったんだよ!分かってくれよこの気持ち!?

でも食事中は会話しちゃいけません!ってのがうちは家のルールかもしれないし……。うーん。

ま、まぁ、もう声出しちゃったから後の祭りなんだけど、さ……ははは……。

 

 

「い、イタチさ、今日すごかったよな!手裏剣術の実習でイタチだけ全部的に当てられてさ!しかも全部真ん中なのな!」

 

 

いやー、さすがイタチだわ!

明らか声のトーンがおかしかったが、そこはスルーしてくれ。

これでも必死に話のネタを探した結果なんだよ、友達がイタチしかいない私にコミュニケーション能力を求めないで。

うわ、なんか嫌な汗出てきた……!

 

 

「へぇ、すごいじゃないイタチ!ね、お父さん?」

 

「あ、あぁ……。そうだな」

 

 

話を振られたフガクさんは驚いたように肩を揺らし、曖昧に頷いた。

うーん、私の父さんだったら「うんうん!さすがナギサ、もう天才過ぎて父さん怖いよ!」くらい言いそう。

で、言いすぎて母さんに殴られてそう……。

フガクさんはイタチがアカデミーで優秀なのは当然とか思ってたりすんのか?

内心悶々としていると、イタチがふっと目を伏せた。

 

 

「別に、大したことじゃないさ。父さんに教わったことを実践したまでだ」

 

「そんなことないわよ。それも中々出来ることじゃないもの。ねぇ?」

 

「……そうだな」

 

 

でも、フガクさんの目がどこか優しくて、表情もほんのり和らいだ気がする。

誇らしげな……そんな感じが伝わってくる。

 

 

「……」

 

 

なんだよ、フガクさんってば素直じゃねーんだな。

恥ずかしがりやってやつ?

そんなに怖い人じゃないのかも、と笑みを浮かべていたら、フガクさんとバシッと目が合った。

 

なに笑ってんだテメー。

 

そんな副音声が聞こえた気がして、さっと顔を逸らす。

冷や汗がだらだらと流れ始めた。

さっきの訂正!

やっぱフガクさん超怖い……!

 

 

「そ、それだけじゃないんだぜ!イタチってば変化の術一発で成功させてさー、あれもすごかったよな!完璧だし印結ぶの早いし!」

 

「一発で成功させたのはナギサもだろう。オレが凄いのであればナギサもすごいさ。」

 

「……」

 

 

おま、せっかく引っ張り出した会話を3秒で終了させやがって……!

箸を握りしめながら青筋を浮かべていると、まぁ!とミコトさんが両手を合わせた。

 

 

「二人そろって優秀なのね!すごいじゃない!」

 

「い、いや私はそんな優秀なんかじゃ無いッスよ!変化の術だってまぐれですって!」

 

 

あははー、と空笑いを浮かべると、意外な人が口を開いた。

 

 

「そんなことはない。変化の術をその歳で成功させられただけで十分だろう。

さすがあいつらの子だ……」

 

「!」

 

 

まさか……フガクさんからそんな風に言ってもらえると思わなかった。

じわじわと熱を持ち始めた頬に気付き、俯く。

父さんと母さんの子だって認めて貰えた言葉が、嬉しかった。

 

 

「じゃあイタチはさすがフガクさんとミコトさんの子ですね!」

 

 

あまりにも嬉しくて、ニカっと笑いながらそう言ったら、うちは家の三人が目を見開いた。

 

 

「私、父さんにフガクさんがどんなにスッゲー忍なのかいつも聞かされてた!

イタチと友達になってからは特に」

 

 

フガクは凄いんだよ。

それが、最近の父さんの口癖だった。

 

 

「フガクさんは絶対に大切な人を見捨てない強い忍なんだって!言葉は少ないけど、それでもきちんと家族を思い遣る父親だって!

オレも父親としてフガクさんを見習いたいっていつも……?」

 

 

なんだか変な空気になっているのに気付いて顔をあげると、更にフガクさんの目が鋭く、しかも光っているように見えた。

……やべ、私なんかミスった!?

余計なこと言っちまった奴!?

 

 

「え、えっと……」

 

「……ナギサ」

 

 

随分低い、プレッシャーのある声ですね。

なんて茶化せるような感じでもなく、私は残り少なくなっていたご飯粒をかきこんで食器を重ね立ち上がる。

 

 

「ごちそうさまでしたァアアアアアアアアアア!!!イタチ先に部屋行ってるからあぁああああああああ!!」

 

 

叫びながら流し台に水を付けて食器を置き、階段を駆け上り、イタチの部屋に逃げ込んだ。

しばらくあの目はトラウマになりそうだと思いながら私は一先ず去った恐怖に一つ大きく深呼吸をしたのだった。

 

 

その後、部屋にやってきたミコトさんに抱き締められた。

 

 

「もうナギサちゃん最高!ありがとうね!これから毎日うちでご飯食べる!?」

 

「へ、あ、ああ……?」

 

 

訳が分からずイタチに救出されるまでもみくちゃにされたのはまた別のお話。

 




思ってたよりフガクとの会話がスラスラと……。
いやしかしミコトさんとフガクさんの口調がうろ覚えですみません。

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