うずまきナギサ物語~姉の愛は世界を救う~ 作:レイリア@風雅
「今度家にお泊りにいらっしゃい?」
ナギサちゃんなら、大歓迎よ。
そう言ってミコトさんが微笑んでくれたのが、確か一週間前のことだった。
暗部入隊試験まであと一か月を切った。
正直試験勉強や修行に時間を費やしたかったのだが、逆に根を詰めすぎるのも良くないとエロ仙人が言っていたのを思い出したのが三日前。
で、アカデミーに向かわせた影分身にイタチへそのことを伝えたのが昨日の事。
そして、現在、早速とばかりにイタチの案内のもと、うちはの集落を通り、視線が痛い程突き刺さる中……本当に穴が開くんじゃないかと思った……イタチの家へとやってきた。
「ただいま、母さん。ナギサ連れた来た」
「お帰り!ナギサちゃん、いらっしゃい!」
「ど、ドーモ……オ邪魔シマス」
緊張に顔が引きつるのを感じながら笑顔を向けてくれるミコトさんに会釈した。
実は、なんだかんだ言いつつイタチの家に来るのは二度目。
しかもその内の一回目は、イタチに一方的に喧嘩を売った挙句、勝手にぶっ倒れちまったし……。
今思い出してみれば黒歴史以外の何物でもない。
つまり、何が言いたいかってーと……。
非常に、居心地が悪い。
きっと、ミコトさんもイタチもそんなこと気にしてないんだろうけど……。
「イタチ、ナギサちゃんの荷物を部屋に置いてきてあげて?」
「分かった」
「え、いや!大丈夫!自分で持ってくって!」
床に下ろしていた荷物をイタチが掴む前に掴み、持ち上げる。
するとミコトさんが私の手を包み込んだ。
「いいのよ。イタチにやらせて頂戴?
今日はナギサちゃんは遊びに来てくれたお客様なんだから」
「!で、でも……」
「いいから。荷物、貸してくれ」
ん、と差し出された手に戸惑う。
イタチの顔を窺えば、こてりと小首を傾げて少しだけ微笑む。
本当に、あの時のことは何も気にされて、ないんだな……。
「じゃあ……頼む」
そっぽを向いて荷物を預ければ、微かにイタチが笑った気配がした。
じゃあ行きましょうか、とミコトさんに手を引かれ、戸惑いながら大人しくついていく。
さすがうちは当主の屋敷。
広くて立派だ。
通された居間らしき部屋には一人、新聞を広げる男の姿があった。
その雰囲気はイタチとどこか似ているが、それよりもずっと厳格そうな印象を受ける。
「あなた、ナギサちゃんが来てくれたわよ」
ピクリと肩が反応を示し、男は新聞から私の方へ視線をよこした。
イタチに似ているかと思ったけど全然似てねー……!
なんだこのおっさん超怖ぇ……!!
密かにその視線の鋭さに慄いていると、おっさんは新聞を仕舞い、ゆっくりと歩み寄ってきた。
「イタチから話は聞いている。よく来てくれた。ゆっくりしていくといい。」
頭を撫でられ、硬直。
そのまま襖を閉め、居間から出ていった。
それと同時にどっと広がる疲労感。
イタチの父さん……怖すぎだろ……!
私の父さんと違いがあり過ぎる!最早どう接しても怒られる気しかしない!!
「ふふ、あの人ナギサちゃんのこと気に入ったみたいね」
「へあ!?」
「とっても上機嫌だったもの」
拝啓、父さん、母さん。
イタチの父さん……フガクさんは父さんと違って分かりにくいです。
非常に怖いです。
父さん、べたべたし過ぎで気持ち悪いなんて思ってごめんなさい。
べたべたしてもいいから今の父さんで居てくれ。切実に。
「今日から三日間よろしくね!」
「は、はは……」
三日間もフガクさんと顔を合わせる自信がなくなってきたぜ……!!
とは言えず、曖昧に微笑む私だった。
フガク父ちゃんに恐怖しか抱けないナギサ(3歳児)。
こ、子供にはちょっとハードルが高いと思うのです……。