提督ニ捧グ巡恋歌   作:サッドライプ

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瑞鶴視点でほのぼの純愛いちゃラブな話です。

…………うん、何一つ嘘は言ってない




瑞鶴

 

 今日は楽しい提督さんとの一日っ!

 

 おかげで出撃明けだっていうのに昨夜はなかなか眠れなかったし、そのせいか提督の部屋で挨拶するまでの記憶もなんだかあやふや。

 でもせっかく提督さんといちゃいちゃできる機会に、疲れてるなんてありえないよね。

 そんなもの気合で吹き飛ばすっ。

 

 さあ、まずは笑顔で提督に挨拶。

 

 

「おはよう、提督さん。今日はとてもいい朝ねっ!!」

 

「はん、やっと再起動(おきた)か寝ぼすけ」

 

 

「………む~っ?」

 

 今の返事は流石に提督さんでも失礼しちゃうと思うなあ。

 

「寝ぼすけは提督さんでしょっ!服だって……あう、その、ほとんど脱いじゃってるし、匂いもなんだか変よ?」

 

 布団もぐしゃぐしゃにしちゃってもう、どれだけ寝相が悪いんだか。

 シャワーでも浴びてもらって、その間に色々とカタヅケないと―――。

 

「待っててあげるから、お風呂場で汗流してきたら?さっぱりした方が気分がいいでしょ?」

 

「…………」

 

 私の提案に、何故だか考え込む提督。

 なんだか悪だくみをしてたみたいで、にやって笑うと私にすごい提案をしてきた。

 

「じゃあ一緒に入るか?瑞鶴」

 

「――――!?」

 

 提督さんと一緒にお風呂っ!?

 

 それは……当然ふたりとも、はだかってことだし、朝からそんなえっちな展開なんて普通あり得ない。

 でも、提督さんは色々普通じゃないし、でも女の子としてはせくはらは窘めてあげないと、って思うし………。

 あとあと、当然私はここに来る前には身づくろいしてるし、今日の髪型も決まってる方だと自分では思うのに、ここでお風呂に入ったら崩しちゃう。

 それをもっかい整えるのは時間が掛かって提督さんを待たせちゃうし、提督さんといちゃいちゃできる今日という日の過ごし方としても…………。

 

 なんて。

 

 そんな風に“言い訳”を用意するぐらついた気持ちなんて、提督さんに掛かればあっさり崩されるの、分かってるの。

 抱き寄せられて、強く言われたら、抵抗なんて考えることも出来ない。

 

「まさか、断らねーよな?」

 

「―――。はい………」

 

 

――――…………。

――――ぷっ。くっく、ははははははっ!馬鹿みてえ、クッソ、笑わせるにも程があんだろ!?

――――このイカくっせえ部屋で雷の匂いぷんぷんさせてる俺にその表情とか。

 

 

「ははッ。お前最高だよ瑞鶴。マジ愛してる」

 

「!!うん、私も提督さんのこと、大好き………っ!」

 

 

――――都合のいい部分だけは、はッ、認識す(きこえ)るのな。

 

 

 

 

 

 えっちなことはしなかった。

 と、とうぜんよねっ。こんな朝から発情して見境なくなるのは、慎みが足りてないって思うの。

 提督さんのお背中を流して、体と髪を洗ってあげて……それだけでも十分楽しかったし。

 

 朝ごはんもまだだし、ちょっと遅いけど済ませないと。

 結ぶのは諦めて下ろした髪で、私は提督さんと食堂に向かった。

 さほど規模が大きくない鎮守府だから、食堂っていうよりダイニングって言った方がしっくりくるようなスペースだけど。

 

 そのテーブルの一つに、提督さんと向かい合うように座る………、

 

 

――――待ってたわ、司令官っ。雷の愛情たっぷり朝ごはん、もちろんできてるからね!

――――おう。ああ、そっちは瑞鶴の分か?

――――他のみんなはもう食べ終わってるから、とっといたんだけど………あれ、また固まってる

――――愛情たっぷり、に反応した(/反応しなくなった)か?つか、ここで猫のエサにすり替えたらこいつどんな風になると思う?

――――それこそ反応しない、に一票。それに嫌よ、あれ結構高価いんだから。無駄遣いはよくないわ

――――そこかよ。まあ、ご苦労さん、あとはゆっくりしとけや

――――分かったわ!じゃあ溜まってるお洗濯ものかたづけるわね!

――――……。お前がそれでいいならいいけどな

 

 

………次の瞬間には、テーブルの上に料理が置かれてた。

 

 便利な食堂だよねー。

 

 それにしても、食事に手を付けながら思う。

 人に似たカタチの艦娘は、人と同じように食べて、寝て、呼吸しないといけない。

 軍艦の維持コストを考えれば消費としては微々たるものだけど、それでも“意識”をせずにはいられない。

 無駄だなー、って思う。

 

 考えるのは、愛する人のことだけでいい。

 思考を“割く”――――なんで私の意思を大好きな提督さんのこと以外に“分割”しなくちゃいけないの?

 どうして世界はそんな風に出来ているの?

 

「その点、翔鶴姉はすごいよね」

 

 ぽつりと漏れた一言に、なぜか提督さんは目を丸くして驚いていた。

 珍しい、っていうか初めて見るかも知れない表情だ。

 

「………お前でも、流石に姉妹艦は特別なのか?」

 

「あれ?ふふ、もしかして妬いちゃった、提督さん?」

 

 ぬかせ、と鼻で笑われた。ちぇっ。

 

「翔鶴姉は私の目標だもの」

 

「目標?」

 

「ここよりちょっと北の鎮守府でそこの提督といちゃいちゃしてるんだけど、翔鶴姉は愛するその人のこと以外は何も考えないわ。日常生活も、深海棲艦との戦いも、提督に関係ないことなら全て何も考えないで完璧にこなすことが出来るの。

――――さながら無念無想の境地、ってとこかな。まさに愛のなせる業よね」

 

「全国の武術師範が助走付けて殴りかかるレベルの無念無想だな」

 

「翔鶴姉ならにこにこした笑顔のまま身体の反射だけで三秒で片づけるわね。愛する人に関係ない事柄なんだもの。

 

――――私も、早くそうなりたいなあ」

 

 

 そんな素敵になった私を想像して楽しい気分になる。

 もしそうなったらその時から翔鶴姉のことを思い出すことは永遠になくなる………その意味では、特別と言えば特別だけど、“その程度”。

 向こうも私のことなんてもう覚えてないだろうしね。

 

「…………提督やってると、ほんと色々飽きねーな」

 

「そうなの?」

 

 “生きる為に”、朝食をお腹に収めながら何気ない話を提督とする。

 こういうのもほんわかしていいよね。

 その意味だけでは、食事というのも価値があることかなとは思った。

 

 

 

 

 

「今日はどうする?提督さん」

 

「鎮守府の中ぶらぶら歩くぞ」

 

「お散歩ね?うふふ、分かったわ!」

 

 歩き出す提督の後ろをついて行く。

 すたすた歩幅の違いなんて考えてないみたいだけど、長身ってほどでもないから追い付くのに苦労はしない。

 

 でもそれにしても、ぶらぶらと言った割になんだか目的地が決まってるような足取り。

 やがて建物の裏手に回り、手入れのあまりされていない寂れた一角に辿り着く。

 こんなところで何を―――と思ったけど、次の瞬間そんな疑問は解消された。

 

「にゃー」

 

「わあ、ねこだ………」

 

 薄茶色の毛並みの、どこにでもいそうな猫。

 ただこの鎮守府に住みついてる、というならなんだか妙な気分。

 猫を飼ってる提督………なんて似合わないせいよね、きっと。

 

「猫は大丈夫、と」

 

「?何の話ー?」

 

「いや、今日は実験しようと思っててよ。ところで―――」

 

 

――――その猫、メスだぞ。しかもこの鎮守府で俺に一番懐いてる。

 

――――。

 

 

「ふっ、くっ、くくくくく……っ」

 

「?」

 

 何故か提督さんが、地面にうずくまって爆笑していた。

 

「どうしたの提督さん?“なんか面白いものでも居た”?」

 

「く、あはは……いや、何も、ぷぷ、何もいなかったぜ?」

 

「………変な提督さん」

 

 こんな裏庭とも呼べない場所に、“何も居るわけないのに”。

 

「…………あー、笑った。さあ、次行こうか」

 

 

 

 

 その後も、提督さんと一緒に色々なところを回った。

 普段は何の価値もない鎮守府の景色も、提督さんと一緒ならそれこそ別物。

 お昼は艦娘寮の私の部屋で手料理を御馳走した。

 残さず食べてくれて嬉しかったなあ。

 

 そういえば、その道中、こんなことがあった。

 

「提督さん、こっち!」

 

「おわっ、と。あんだよ急に引っ張って―――」

 

「しーっ」

 

――――あれー?こっちからてーとくさんの匂いがしたっぽいー?気のせい、っぽい?

 

「野良犬が紛れ込んだのかしら。ぽいぽい煩いわね」

 

「………悪態とか皮肉で言ってる、訳ねーよな?ほんとどういう基準なんだお前?」

 

「何の話?」

 

「いや、なんでもない」

 

 なんだか不思議な気分になった。

 提督の様子もちょっとおかしかったし。

 

 

 

 

 楽しい時間は早く過ぎる。

 時刻はすっかり夜、提督さんにおやすみを言って自室にまた戻った私。

 提督といる時間だけが早く感じるのは、そういうことよね。

 

 充実した一日だった。

 ずーっと“二人きり”でラブラブできたし、最高だったわ。

 また次の出撃でも、MVPを取ってこんな時間を過ごすんだ。

 

「おやすみなさい、てーとくさん…………」

 

 その為に、早く寝て英気を養う。

 提督さんの夢を見て、一緒にいない寂しさを紛らわす為にも。

 

 いい夢が、見れますように。

 

 

 

 

※その日の夕方、工廠であった出来事。

 

『提督さん、工廠に行くの?何か作る?』

 

――――いや、この時間、ここ榛名がいたと思ったが。

 

 

――――。

 

 

――――提督。と、固まった瑞鶴さん。どうしました?

 

――――よう榛名。“脱げ”。

――――?はい………これでいいですか?ところで、これはどういった趣向なのですか?

――――実験だよ実験。この状態の瑞鶴が実はストレス溜めててその内爆発しねーかなとかそんな感じの。

――――まさか。人間じゃあるまいし、生態、もしくは性質がエラーになるなんて“欠陥”があるとは思えません。

――――そんなもんかね?

――――はい。艦娘<兵器>ですから。

――――お前もか?そうやって何やらせてもはいはい言ってるけど、何のストレスも溜めてないって?

――――当然です。提督が楽しいなら、榛名は大丈夫です。

――――艱難辛苦厭いません、ってか?

――――それは語弊があります。提督の為にすることが、艱難辛苦(つらくくるしいこと)にどうしてなるでしょうか?いいえ、ありえません。

――――ふん?今から瑞鶴の見てる前で、俺に犯されろ、と言ってもか?

――――くすっ。望むところです、

 

 

 

――――榛名でいいなら、お相手します。

 

 

 

 “献身徹底(あなたのためならなんでもします)”、それが榛名という艦娘だった。

 

 

 

 





…………うわあ、ドン引きだわ。まじクソ提督だわ。

 誰だこんなゲスを主人公にしたの()

 いや、主人公って言ってもむしろこの話の主人公は艦娘達の方で、それ書く為に狂言回しとして使ってるだけなんだけどね。
 逆にここまでしないと書き切れないこの作品の艦娘達の狂気染みた“正気”ってことで、いやー自重しないってほんと楽しいわ!

 人選ぶだろうけど、二次創作の醍醐味ってことで、勝手に書き散らすことくらいは許容してくださいな。

 そして次回は榛名話。
 雷、瑞鶴とこの辺りまでは区分を予想できた方もいたのでは。
 なのでそこから埋めていく形式で。

 ではまた。


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