弟くんがラスボスルート   作:潤雨

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久しぶり過ぎる投稿です。蛇足が遅すぎるとか待ってくださってた方はいるのでしょうか・・・


義妹ちゃんが(以下略:3〜虎の襲撃〜

 

「し~ろ~う~!!蒼崎さんと婚約ってどういうこと!?先生は士郎を中学生の女の子に手を出すような子に育てた覚えはありません!!」

 

こあくまな姉の策略を躱しきったと錯覚し、穏やかな眠りについていたキズナは早朝から響く虎の咆哮によって叩き起こされた。

虎の襲来、しかもその台詞から察するに中々お怒りだ。まぁ、弟分にして受け持ちの生徒が中学生と婚約したなんて話を聞けば、姉として、教師として怒りの咆哮の1つぐらいあげるだろう。

 

取り敢えず、タイガに伝えてたの忘れちゃってたテヘペロとかほざいてるロリ姉のおかずを減らす事を士郎とのアイコンタクト会議で決定し、次は虎への対策会議だ。

 

「イリヤの勘違いって言うのはどうだ?」

「そこのあくまは、あ、そういう事にしとかなくちゃいけないんだねとか言い出すよ」

 

一見、無邪気に見える笑顔でイリヤは頷いている。

 

「餌で釣るのは?」

「間に合わない、仕込みは済んでいるけど、調理時間が無い」

 

言ってる間にも藤ねぇが進撃して来ている。普段寝入っている時間に奇襲を掛けた以上、寝起きを狙うのは定石、士郎の部屋を目指して猛進している。

魔術師としては怒られそうなのを承知で家の工房としての機能を発動させて位置を把握、違和感が無い程度に妨害しているだがそれを歯牙にも掛けずに進んで来ている。

えぇい!コレだからギャグ時空の幸運:EXは!

かくなる上は、士郎の部屋に仕掛けてある奥の手、瞬間意識剥奪のトラップを発動させて仕留める。

何故そんな物をそんな所に設置したのかを説明したら、凛に指の数では済まないぐらいdead end送りにされそうなシロモノを起動させる。部屋にいる者、部屋に踏み込んだ者を即死、ではなく、昏睡させる魔術を起動する。

 

「くたばれタイガー!!」

「いきなりどうした!?」

 

対策を話していたのに、いきなり叫びだした自分に士郎がビビっているが関係ない、本気を出して無いとはいえ魔術に関わりの無い藤ねぇに工房のトラップを全回避されているのも関係無い。関係無いったら関係無い。

そして、藤ねぇが士郎の部屋の前で立ち止まった時に勝利を確信した。

 

藤ねぇが士郎の部屋をスルーするまでは

 

「何でだよ!直感!?直感持ちなの!?」

「どうしたって言うんだよ!?落ち着けキズナ!」

「落ち着いてられるか!あの虎ときたら・・・」

 

うがー!と頭を抱えた自分に士郎が本気で心配そうに肩に手を置き声を掛けてくるが、それに応える声は冷静にはならなかった。渾身のトラップを回避されたショックが隠しきれない。あれ?藤ねぇ、こっち来てる?

 

「ここかぁ!!」

 

叫びと共に襖が開かれる。そこにあったのは、

1、2組の布団

2、士郎と自分(寝起きなのでお互い寝巻き、士郎は自分を心配して肩に手を置き、顔を覗き込んでいる)

3、部屋の隅で2人分の布団で簀巻きにされたアヴェくんと視線避けの魔術を使用しているイリヤ

 

これらが藤ねぇにどう見えるかを考えると・・・

 

「あ、あ、あ、あ、あああああ!し、しろう!!」

 

言語能力が壊れている。うん、朝チュンワンチャンある図だよね。

こうなった藤ねぇを言葉で止めるのは至難の技である。

 

「アサシン」

「もっと早く声を掛けて下さい」

 

五月蝿い、忘れてたんだよ。内心で呟くのと死角より這い出たアサシンによって藤ねぇが気絶させられるのは同時だった。

 

「藤ねぇ!?」

「アサシン」

「はいよ」

 

藤ねぇへの暴挙に士郎が騒ぎだす前に士郎にも気絶して貰う。

早朝の部屋に転がる屍が2つ(+簀巻き1)控えめに言って大惨事である。

 

「・・・取り敢えず、朝ご飯作ろう」

 

ただし、イリヤ。テメーは駄目だ。

 

その後、目を覚ました藤ねぇに「藤村さんったら倒れちゃって。士郎も寝坊しちゃって、え?そんな夢でも見たんですよ、ウフフ」とベタベタの誤魔化しをゴリ押しし、朝ご飯を食べつつ(イリヤはご飯と梅干しのみ)やって来た凛と桜との連携により、婚約の説明は放課後という事にして目の前の危機を回避、したのだが・・・

 

「勝負よ!蒼崎さん!」

 

何故、セイバーと同じ様に勝負を挑まれているのだろう?

しかも、持っているのは何時もの虎竹刀ではなくお玉である。え?料理でどれだけの人数を倒せるのか競うの?

 

「士郎と婚約すると言うなら、私を超えて見せなさい!」

「料理で?」

「料理で」

 

新学期の忙しいであろう時期にダッシュで帰って来て、世迷言をのたまいけるこの虎を本当にどうしてくれようか。

 

「藤ねぇ、世の中にはやっていい事と悪い事がある。藤ねぇの台所への侵入は後者だ。」

 

走って追いかけて来た士郎がアーチャーの様な物言いをする程度に有り得ない提案である。

 

「士郎、生きていたらどんな許されない事だろうとしなきゃいけない事もあるのよ」

「そうか、そこまで言うのか、それなら・・・」

 

何故か許されざる罪を犯そうとしている虎は爽やかに微笑み、士郎もそれに僅かに頬を緩め頷き、

 

「勝者、キズナ」

「どういう事じゃー!?」

 

ジャッジを下した。

虎の控訴も却下され、食卓の平穏は守られた。

 

「キズナ、夕飯手伝ってくれ」

「オッケーだよ、一品ぐらいは任せてよ」

「今日こそ料理が何たるかを叩き込んでやる」

「手間かける事だけが愛じゃない事を教えてやろう」

 

言い合いながら、台所に入って行く自分達を藤ねぇは黙って見送った。

 

夕飯が終わり、普段は団欒の場である居間は僅かな作為で自分と藤ねぇのみだった。

藤ねぇが夕飯中珍しいほど静かで気になってしまったのだ。きっと、自分がやらかした婚約の件が原因だろうから、自分にぶつけるなり何なりして早く何時もの藤ねぇに戻って貰わないと調子が狂ってしまう。そう思ってちょっと小細工を仕掛けていた。

 

「ねぇ、蒼崎さん」

「何ですか、藤村さん」

 

思いの外穏やかに声を掛けられて返って身構えてしまった。

ちゃぶ台に頬杖を付いて、藤ねぇは小さく笑っていた。

 

「士郎と結婚するの?」

「さぁ?婚約って事になってますけど、色々と事情が有りまして」

「そう、それならそれでも良いのよ。それなら私の妹みたいな物になるんだから」

 

穏やかな笑み、衛宮創名(自分)でさえ滅多に見た事の無い表情。

 

「だから、藤ねぇって呼んで良いのよ?キズナ」

 

あんまりにも優しい言葉に絶句する。気付いてたの?との呟きさえ出せない。あぁ、けど当たり前の事だった。衛宮士郎と衛宮創名(自分達)と最も長く一緒に居たのは藤ねぇだ。

一度生まれ変わったぐらいでは誤魔化せる訳も無かった。

 

「分かった。藤ねぇ」

 

勝手に逝ってしまった創名を赦して欲しい。勝手に家族に入り込んで来たキズナを許して欲しい。

そう願わなくても、きっとユルシテくれると信じて、自分は大切な人へはにかんで返事をした。

 




本編でも不足して虎成分を詰め込んで見ました

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