弟くんがラスボスルート   作:潤雨

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お久しぶりです。水着の王妃が当てられず、むしゃくしゃして書きました。


義妹ちゃんがラスボスルート2

夜になった衛宮邸の一室、蒼崎キズナの部屋で、キズナ、アヴェくん、イリヤの3名が集まっていた。

「で、なんであんなことになったんだよ?」

「うん、ついカッとなってやっちゃったんだよ」

「仮にも魔術師と名乗ってるんだから感情で暴走するのは良くないわよね」

創名の時とは違い整理整頓された和室の畳の上で、自身の行いを悔やんで転がるキズナをアヴェくんとイリヤが慰めたり、追加ダメージを与えていた。

「こうなったら、ディルムッド殺すちゃん3号でもばら撒いて騒ぎを起こしてうやむやにするしか・・・」

「教会と凛を敵に回すような騒動は止めておきなさい」

「てか、3号ってディルムッドに何の恨みがあるんだよ」

キズナが破れかぶれのようにつぶやく科白を聞いて、イリヤとアヴェ君はそれを止める。冗談めかしているが、目の前の少女はやるといったことはやる危険人物であることが昼間のはっちゃけ具合からも想像がつくだろう。

ちなみに、ディルムッド殺すちゃん3号というのは鏃を模した礼装であり、キズナの属性である月より、恋人であるオリオンを射殺した月の女神アルテミスの伝承になぞらえ、所持者が恋している対象が射程に入った時、オートで対象を狙って飛ぶという、はた迷惑な礼装である。この時、恋が一目ぼれならば『不意打ち』という概念も付与され回避判定にペナルティがかかるという、無駄なまでの性能の良さを誇っている為、この礼装が量産されてばら撒かれるという状況は彼の英霊にとっては死にたくなる状況だろう。(使い切りで量産前提の為、サーヴァントにダメージを与えられるほどの神秘を持っていないということは関係なく。)

そして、恋のお守りだとか言って殺傷能力を削ったこの礼装を士郎達の通う高校にばら撒いたりすればかなりの騒ぎになるだろう。凛あたりがうっかり鏃を持ったまま士郎に接近すればキューピッドの矢になること間違いなしだ。

「うん、それをリンとサクラのカバンに仕込むつもりだったのね。そしてそれを忘れて、ついカッとなってやった、と」

「創名のころもそうだったけど、お前って色々計画するわりに最終的に感情で動くよな」

礼装の説明を聞いたイリヤに当初の計画を見透かされ、アヴェくんの素朴な感情での呟きにキズナはさらに落ち込み、畳の目を数えだした。

「でも、キズナと士郎が結婚してくれたら、わたしは嬉しいよ」

「おっ?意外だねぇ。てっきり、士郎はわたしの!ってなるかと思ってたんだけどなぁ?」

「うん、(シロウ)(わたし)のモノよ?だけどリンとサクラ、セイバー相手だと盗られちゃいそうだもの。キズナと結婚してくれれば三人は手を出せなくなるし、(キズナ)(わたし)のだから、ずっと一緒にいられるでしょ?」

「お、おう、そうだな」

茶化すようなアヴェくんの言葉に頷きながら返された言葉は魔術師らしく合理的で、どこかの女神のように姉の身勝手に溢れた物だった。

流石のキズナも真顔になって、笑顔のイリヤから少し距離を取っている。アヴェくんは自分が地雷を掘り起こしたのを察し、引きつった笑みを浮かべている。

「だからね、キズナ。わたしはお姉ちゃんとしてアナタが嫌がってもアナタとシロウを応援するわ。アナタが嫌がっても、ね」

「なんで2回言ったんですかね?いや、分かるよ?大切なことだからでしょう?チクショウ、聖杯を寄越せ。過去を変えてやる!」

「うふふ、そろそろリズが来るだろうからわたしは帰るわね。おやすみ」

意味深に笑いながらイリヤは去っていった。その後、士郎に添い寝を強請っている声が聞こえる当たりがイリヤらしく、きっとさっきのは何かの間違いだったのだと思える。そう、イリヤが敵に回ることは無いはずだと、キズナは自身に言い聞かせることが出来た。

キズナとアヴェくんが互いに顔を見合わせ深い息を吐いた瞬間、再び襖が開かれた。

そこにいたのは士郎の手を引いているイリヤと引っ張られて来ただろう士郎だった。帰ると言ったのは、キズナ達を油断させる為の虚言、真の狙いはコレだったのだ。

「キズナー!一緒に寝ましょう!士郎も一緒だけどいいわよね」

瞬間、この展開を予測していたアヴェくんは素早く立ち上がり、逃走しようとしたがさらにそれを予知の如く予測していたキズナが詠唱なしで放った魔術によって、足の神経が血の一滴も流れることなく切断され、無様に転ぶこととなった。

「(逃げんなよ、元自分)」

「(逃がしてくれよ、我が来世)」

互いが口に笑みを作りながら目だけでお互いの意図を理解していた。

その後、イリヤの無邪気を装った策謀(魅了の魔術含むその他)を掻い潜り、同じ部屋だが、イリヤの隣にキズナ、二人と向かい合う位置に士郎とアヴェくんという修学旅行スタイルに落ちつけたりと、キズナとアヴェくんは頑張った。そして、頑張りすぎたのだろう。イリヤの本日最後の爆弾に気づかなかったのだ。

「し~ろ~う~!!蒼崎さんと婚約ってどういうこと!?先生は士郎を中学生の女の子に手を出すような子に育てた覚えはありません!!」

その爆弾は、キズナが疲れて眠ったその日の朝に、恐ろしい威力を持って爆発した。





ロード・エルメロイⅡ世の事件簿が面白くて、何段か飛ばしで時計塔編に突入したい衝動に駆られてます。
グレイちゃん可愛い

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