弟くんがラスボスルート   作:潤雨

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久々の投稿です。しばらく更新投げ捨ててストックが溜まったら再開を、とか考えてたら全然貯まらないと言う・・・
開き直って書きためてた分を投稿して、随時更新に戻す事にしました。
お待ちしてくれていた方に謝罪と感謝を、これからも更新は遅いと思いますが、どうか見捨てないでくださいm(_ _)m



前哨戦、もしくは前兆1

創名が色々やらかしているなか、遠坂邸を拠点とした士郎達はそれぞれがやるべきことこなしていた。屋敷の主である凛は桜の体を調べ、その対処を行いながら、バゼットと協力し創名の工房にあった資料の解析、桜と慎二は彼らの祖父が消えた家から資料を持ち出し、凛に協力している。セイバーは屋敷の警護と士郎に稽古を付け、士郎はセイバーに稽古をつけてもらいながら家事をして、街でイリヤスフィールに遭遇し、遠坂邸まで連れてくるという魔術師の常識を斜め上にぶっちぎる行為を披露している。イリヤ本人に敵意が無かったのもあって穏便にすんだが、一歩間違えば壮絶な戦いに発展したかも知れなかったのである。あかいあくまのガンドの的にされたのにも同情の余地はない。そして、アーチャーの役割は偵察と監視で、衛宮の武家屋敷を監視している。アーチャー達がこの街で確認している創名の工房はそこだけなので念のためである。発見出来なかっただけで創名の礼装が隠されていたり、何らかの儀式の要に設定されている可能性も高いとして、その変化を見逃さぬように監視がもうけられており、鷹の目を持つアーチャーがその役割をこなしている。

そんな中で、凛の解析がある結果を出していた。

「ふう、この情報から導きだされるのはそういうことだけど、あり得ると思う?」

「衛宮切嗣が残していたハーヴェストの身体データは疑いようの無い物であると結論を出した以上、そこから求められる答えは自ずと真であるはずです。・・・確かに信じがたいですが」

衛宮家で見つかったデータは、二人の魔術師にとって疑わしい結論を弾き出していた。すなわち、衛宮創名と衛宮士郎が限りなく同一の存在であり、その違いはわずかな魂の変質(キズ)のみであるという結論である。

「そうね。ただ、これが真実なら、それは普通では起こり得ない。誰かが士郎のレプリカとして創名君を作った。そう考えるのが自然よね。」

「ええ、その『誰か』は皆目見当も着きませんが。」

二人で話し合いを重ねながら、凛の脳内にはある考えが浮かんでいた。それは、確実に創名を殺す事ができる方法であり、即刻破棄するべきと思える物だった。

「(アーチャーも士郎も、創名君を止めることを目指している。創名君を殺すことはできない・・・手遅れになるその直前まで)」

クラスメイトを救いたいとただの学園生活を過ごしていた凛が思い、殺さなければ止められないと優れた魔術師である遠坂が告げ、自分のサーヴァントの願いを叶えてやるべきだと誇り高き遠坂凛が言う。対立した考えたちは、諦めずに止める方法を探すと言う意思に統一された。

「心の贅肉ね」

普通の魔術師ならば有り得ない葛藤を飲み込み、凛はため息と共に言葉を吐いた。

『凛、創名を発見した。ギルガメッシュと共に衛宮の家に向かっている!』

「なんですって!?」

アーチャーからのパスを使った報告に凛は驚きの声をあげた。創名がこちらの一応程度の備えに掛かったことにもだが、ギルガメッシュと共にいる事にである。アーチャーの話しでは、ギルガメッシュの狙いはセイバーであり、セイバーは士郎のサーヴァントだ。士郎と敵対している創名と協力関係にあることはあり得ない事ではない。もしくは、ギルガメッシュは既に殺されており、創名と共にいるのは英雄王の皮を被った暗殺者か。

「(どっちにしても状況が悪化してるじゃない!前者ならアサシンが創名君の守りを考えずに暗躍してくる。後者なら最強のサーヴァント(ギルガメッシュ)の最大の弱点と言える慢心と唯我独尊さが消えている。)」

僅かな間に考えを巡らして、それぞれの可能性を検討する。

『アーチャー、ともかく見失わないように監視してて、私は士郎とセイバーを連れて合流するわ。』

『それは危険だ凛、ギルガメッシュと創名が手を組んでいる可能性がある以上、拠点を守るサーヴァントがいなくなるのは不味い。君たちが家を出ている間ににアサシンが強襲を仕掛けてくる恐れがある。』

凛の取ろうとした行動をアーチャーが否定する。遠坂の屋敷がある土地は冬木の一級の霊地であり、聖杯を降臨させることが出来る四つの霊地の内の一つだ。そこを押さえられるのはあり得てはいけないし、ここにいる桜やバゼット、ついでに慎二を人質に取られる可能性がある。守備にアサシンを退けることの出来るサーヴァントは必須と言えた。

『ギルガメッシュの皮を被ったアサシンかもしれないでしょうが!?それなら一人で戦うのは無謀だし、ウチの守りも必要ない。』

『だが、そうではないかもしれない。その賭けはリスクが大きすぎる。なに、私に考えがある。』

その言葉の後に続いたアーチャーの『考え』に凛は渋い顔をする。

『確かに、この状況からすればベストかもしれないけど、士郎にかかる負担と言うか、コストが大きすぎるわ。』

『己の弟が起こした事態だ。それぐらいは支払われてしかるべき代償だ。本人に確かめてみたまえ、確実に嫌とは言わん。』

アーチャーからの念話に渋々ながら了承を示して、その策を伝えるべく同級生の名を呼びながら外へと駆け出した。


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