半年以上放置とかアホです。本当にすみません
モチべの低下に加えて、ちょっとプロットを変更せざるを得なくなってしまい軽く嫌になってましたが、なんとかモチべが回復してまたポチポチと書き始めました。
亀も呆れるほどの遅い更新になりますがお付き合いしていただければ幸いです。
穏やかな日が差す平日の公園のベンチ、創名はそこに腰掛け人を待っていた。
「(まぁ、人というべきか、幽霊というべきか、それとも・・・)」
公園で元気に駆け回る小さな子供たちを眺めながら、ぼんやりと無駄な思考を行う。冬木教会を焼き払ってから一夜明け、今まで魔術回路をフル起動させて、様々な処理や準備をしていたせいで一睡もしていないのだから気が抜けても仕方ないだろう。しかし、そんなことお構いなしに、警戒用に張った結界に何者かが触れた。時計が指しているのは指定の時間であり、それが創名には意外だった。もっと遅れてくるか、最悪この場に現れないのも想定していたのだ。そして、公園に入ってきた人物が創名の前に立ち、声をかける。
「ふん、王たる
「そう言わないでよ、
怒りの中に嘲りを含んだ言葉に、創名はため息のように言葉を吐いた。
神を疎む半神の王と神を目指す愚直な
創名が言峰綺礼を殺害するまでギルガメッシュの足止めをしていたアサシンにもし、創名が綺礼を殺せたなら今日、この時間にこの公園に来るようにと告げさせていた。ギルガメッシュはその賭けのような言葉に是と答え、創名は綺礼を殺害した。ゆえに、二人はここで対面したのだ。
「ここが、テリトリー?笑わせる、このような結界よりネズミの巣の方が良い出来だ。」
創名の言葉をギルガメッシュは嘲う、確かに公園に張られた結界はお世辞にも上等とは言えない、人払いなど神秘を秘匿する為の効果は一切無く、ただ、領域内で魔力を乱反射させて中にある魔力を帯びたものを魔力の検知などで発見させないというだけの結界だ。
「大方、あの薄汚い
「・・・脱皮か。アサシンの宝具ってそういう扱いなんだ・・・」
ギルガメッシュの言葉を否定せず、対象の肉体に成り代わるという宝具へのギルガメッシュの言葉に小さくうなだれる。アサシンは足止めの際最後の致命傷を宝具を解除することで回避したようだがギルガメッシュにはそれが脱皮に見えたようだ。確かに、被っていた皮を脱ぎ捨てているのだから間違ってはいない。
「まぁ、念の為だよ、この場で戦う気はない。」
「どうだかな、お前はどうやらマガイモノのようだ、その程度の者の言葉を我が信じると?」
「さぁ?まぁ、王の死因は暗殺が多いらしいから、
言い放たれた言葉に、ギルガメッシュの紅い目が細められる。
「言うではないか、雑種。その首、余程要らないと見える。」
言葉と共に僅かにギルガメッシュの背後の空間が揺らめく、ギルガメッシュの宝具、
「まぁ、待ってよ。別に殺し合いするのは良いけど、用件も言わさずに殺すってのはちょっと器量が小さいんじゃない?」
しかし、圧倒的な死の気配を放つ空間を見ても顔色を変えず言葉を続ける創名を見て、気が変わったのか発動を取り止める。
「ほう、ならば聞いてやろう。だが、それが興醒めな物だった場合、その取るに足らん命で償ってもらおう。」
「取るに足らないなら取らないでよとか思うけど、まぁ感謝するよ。」
肩を竦めながら創名は言い、鬼ごっこをして公園を走り回る子供達やベンチの横の砂場で遊ぶ子供を見る、彼らは言ってしまえば創名の意思表示である、この場で魔術を用いた戦闘をするつもりはないというメッセージ、流石になにも知らない子供達を巻きこむほど堕ちてはいないが、戦闘になった場合彼らを守るという気はなかった。
「貴方の確かな目を見込んで聞きたかったんだ。自分はどういう状態に見える?」
「なるほど、この結界はお前を隠す為のモノか。」
言われて、はじめて気付いたようにギルガメッシュが言う。結界のせいで魔力を上手く感じ取れないが、意識してみると、禍々しいまでの魔力を創名は放っていた。其はこの地の聖杯を侵す呪い、人を邪神たらしめた醜い願い。衞宮創名は、聖杯の呪いに蝕まれていた。
前回の聖杯戦争の聖杯の欠片、それが創名が桜から摘出し自分の心臓へと埋め込んだものだ。それは、ある可能性の未来で優しい少女を「反転」させ、暴虐を行わせた呪いの根幹であり、ある意味での「この世全ての悪」の種とも言える物だ。創名が呪いの泥から
「・・・どうやってるかは知らんが、呪いにより反転するはずの魂を強引にもとの状態に戻すことで正気を保っているようだが、そう遠くないうちに呑まれるだろうな。」
そして、創名を検分するように見ていたギルガメッシュが愉快そうに告げた。
「サーヴァントの魂を受け入れた事で大聖杯と繋がり、汚染が効果を出し始めたのだろうよ。耐えられたとしても魔術回路が汚染されまともに行動出来なくなるだろうな。」
創名は固有結界『無限の剣骸』を体内で常時発動させる事による驚異の自己修復能力で呪いによる「反転」を防いでいる。だが、その制限展開も魔力を喰い、その魔力は聖杯から引き出した呪いの魔力である。このままでは、創名が正気を保っていられる時間は多くない。この世全ての悪に堕ちるまでに聖杯を完成させ、衞宮士郎に殺されるという制約を加え、その存在を『この世全ての悪』を『ただ一人の為の絶対悪』へ変化させなければ創名の目的は達成されない。
ギルガメッシュの宣告に、創名はため息を吐く。自己の診断と全て一致していて、呪いの進行を抑える方法は知らないのか言う気が無いのか、ただ愉悦に浸るように笑っている。ギルガメッシュをここに呼び出した
そして、本命の目的の為に動き出す。
「ありがと、ギルガメッシュ。とりあえず、自分には時間があんまり無いことが分かったよ。」
「ふん、この我を呼びつけておいて、これで終わりか?」
「まさか。」
創名が小さく笑い、ギルガメッシュを口の端を吊り上げる。二人の間の空気が高まり、そんな空気を感じとることも出来ないのか鬼ごっこをしている子供達がそのすぐ横を駆けていこうとした瞬間、
「起動しろ、砂の剣」
創名の詠唱と共に、公園の砂場の砂が遊んでいた
「チィッ!」
ギルガメッシュは砂場に体を向け、銀の砂嵐を打ち払うべく
「令呪において命ずる!宝具によってギルガメッシュの体を奪え、アサシン!!」
月と剣を連想させる創名の令呪が一画欠け、その理さえ曲げる力に後押しされて、アサシンが鬼ごっこをしていた
それは、正義を求めた暗殺者が生涯に渡って鍛えた秘技。ただ一度しか見破られなかった彼の奥義。
一瞬でアサシンの体はギルガメッシュの体に吸い込まれるように消え、殺害対象の体を内から殺し尽くさんとする。
「おのれ、暗殺者め!?だが、足りん!」
体の中に潜り込まれてなお、ギルガメッシュは抵抗するように魔力を高め、実際に侵食は目に見えて遅くなった。
「クハハ、足りん、足りんぞ。我の体を奪いたければこの三倍は持ってこい!」
「ふーん、やっぱりか。それじゃぁ遠慮なく。」
勝利したように笑うギルガメッシュに創名はなんの感情も宿さない瞳を向け、令呪が刻まれた手を掲げる。
「令呪を重ね、厳命とし。さらに重ね、絶対とする。我が命を遂行せよ。」
令呪が二画、輝きながら消え、ギルガメッシュの中でアサシンが歓声を上げる。もはやギルガメッシュの抵抗など意味は無いとでも言うように。
「令呪を二画追加で令呪三画、お望み通り三倍だよ。」
「オノレ!オノレ!オノレ!オノレェ!!謀ったな雑種ゥ!」
「そうだね、それでこの結果は因果応報だ。十年前に消えるはずだったのが無理矢理残るからこうなるんだよ」
ギルガメッシュの肌の下で蠢くアサシンが、全身に行き渡りそして
「さようなら、最強最古の英雄王。」
皮膚の泡立ちがピタリと止まり、ギルガメッシュだった体に成り代わったアサシンがニヤリと笑う。
「
「ご苦労様、アサシン。」
創名の言葉と共に公園にいた子供達は全員が倒れ、一様に呼吸を止めていた。それもそのはず、彼らは全て死体だったのだから・・・
もし、ギルガメッシュがもっと公園の子供に興味を持っていれば、あるいは気付けたかもしれない、公園で遊ぶ子供たちが教会の地下で十年もの間自分の餌になっていた子供達だということに。
創名は教会を燃やす前に、地下の子供達を回収した。治療を施したが、肉体、精神、魂といった人を構成する全てが瀕死であり。全ての子供は救えなかった。救えなかった子供達を安らかに送ってやり、その死体を魔術によって動かしていた。魔力感知を妨げる結界は、アサシンを隠す為であり、意識を創名の魔力に集中させるためのものであり、総じて、死体を操る魔術に気付かれることを防ぐ為のものであった。
そもそも、平日の昼間に親がいない公園で多くの子供が遊んでいること事態が不自然であるが、人間に興味を持たないという慢心ゆえにギルガメッシュは気づくことは出来なかった。公園に来る可能性のある子供と親には来ないように、家に忍び込み暗示をかけた。それにより人払いの結界がなく、子供を一般人だと錯覚させたのも大きかったかもしれない。
「はぁ、マスター、この
「まぁ、慢心しない英雄王の三割なら十分だよ。宝具は?」
「乖離剣と
アサシンの報告に頷くことで問題無いことを伝える。
「それなら計画に支障は無いよ。後一手でチェックメイト、と言いたい所だけど、その前にもう一手打っとこうか。」
「あいよ、マスターの仰せのままに」
姿を変えた従者を伴い、創名は公園を後にする。その後ろで子供達の死体が炎を上げて燃え尽きていく、それは送り火のようにも見えた。