弟くんがラスボスルート   作:潤雨

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お久しぶりです。
私事で忙しくなったのとモチベーションの低下が重なり更新が出来ていませんでしたが、再び更新をしていきたいと思います。

再開したとは言え、相変わらずの不定期かつ亀更新になる恐れが有りますが、お付き合いしていただければと思います。


クランの猛犬1

クランの猛犬

 

アサシンの召喚から半日、創名は隠れ家であるマンションの一室のベットで目を覚ました。寝惚けている様子も無く、あくびさえせずにまるで機械が起動するように目を開いた。起き上がり、腕に刺さった栄養剤の点滴を抜きベット脇の眼鏡をかける。これは蒼崎橙子の作で眼に映らない物を見る為の礼装、霊体化したサーヴァントさえ認識出来る優れものだ。それにより霊体化したアサシンを視認し、おはようと声をかける。

「おはよう、と言ってももう日は沈んでますがね。」

「じゃぁ、こんばんは。予定通りの時間だよ。」

「クク、魔力底上げの“代償”が来てるんでしょう?強がんないでもいいですよ。」

アサシンが言ってきた言葉に創名がアサシンの過去を夢見たように、アサシンも創名の過去を見たのだと悟る。

「誇ると良い、世界の誰もが貴方を間違っていると言おうとも、俺は貴方が正しいと確信している。」

「馬鹿だね。自分は間違っているよ、それでもそれ以外に方法を知らないだけだ。自分の目的に協力してくれるなら、ただ自分の武器であってくれれば良い。」

「了解しました。マスター。この身は貴方の傀儡、好きに使い潰してくださいよ。」

そう言って、互いに笑い合った時、激しい爆発音が響く。何者かがマンションに侵入して来たのだ。マンション全てが創名の隠れ家で、魔術的な罠と物理的な罠が巻き散らかすように仕掛けられている。今の爆発は一階のフロント部分の罠な為、侵入者が創名の現在置である六階まで来るのには、しばしの猶予がある。

「セイバー達ですかね?」

「いや、士郎達は遠坂の家から動いてない。タイミング的に見て、ランサーだろうね。」

士郎達が遠坂の家にいるのは、創名がアサシンを手に入れた時点で確定だ。衛宮の家は暗殺者から身を守るには向かない。殺しに来るのがその家を最もよく知る創名なので尚更だ。

その点、遠坂邸なら結界もあり文字通り凛のホームだ。鉄壁の守りを見せ付けられる。もっとも、凛の性格からして反撃の準備が完了すれば即刻反撃に打って出るだろうが……

兎も角、凛達では無いなら侵入者はランサー、バーサーカー、ギルガメッシュ、大穴で言峰綺礼のどれかだろう。その内、ギルガメッシュと綺礼はまだ動かないだろうと確信している。次にバーサーカーならば、侵入がもっと派手になるように罠を調節してある。よって、侵入者は偵察任務を命じられているランサー、クー・フーリンの可能性が高い。

「赤い輪廻、起動。」

一声、トリガーである詠唱を行えばマンションは最悪の処刑場と化す。このマンションのデザイナーの名が蒼崎橙子であると言えば、そうなる理由も自ずと察せるだろう。

「さて、屋上に退避。死んでくれたら良いけど、そんなに甘く無いだろうし戦闘準備はしといてね。」

「仰せのままに。マスター。」

創名はウァレンティヌスの聖骸布をマフラーのように首に巻き、アサシンを連れて屋上へと向かう。

「ここで迎え撃つんですか?」

「うん。サーヴァントとは言え、ここに来るまで完全に無傷とは思えないし、ランサーは早めに潰しとかなくちゃいけないからね。」

屋上で街を見下ろしながら創名達は待ち構える。マンションからは爆発音や金属がぶつかり合う音など、戦闘が行われている証拠と言える音が響き、段々と屋上に近付いてきている。

「罠は仕掛け無いんですか?」

「このマンションを突破するような奴に、急拵えの罠なんて意味無いよ。」

「そーですね。サーヴァントでも抗魔力が無けりゃ死ねるレベルですしね。」

創名と橙子による技術の出し惜しみ無しの全力で作られた処刑場は、並の魔術師なら屋上に来るまでに軽く三桁ほど死ねるし、全盛期の切嗣でも二十回は死ぬような代物だ。それを突破した猛者に如何なる罠が有効だと言うのか。

パスを通じた念話によってランサーが屋上に到達した後に使う策を伝え、創名は屋上入り口のドアの正面に立ち、アサシンはドアと創名から等しく距離を取った。

「投影開始」

創名の詠唱と共に大量の銀の砂が投影され、屋上を埋めつくす。

それと同時に、屋上のドアが吹き飛びランサーが姿を見せた。所々傷つき、血を流している。

「ようこそ、ランサー。歓迎するよ。」

「ハ、もう充分歓迎されてるぜ。それとも、まだ何か有るのかよ?」

「勿論、伝説たる貴方の最後に相応しい物を用意しました。」

創名は本音を隠し、にこやかに笑いながら告げた。

首に巻かれた聖骸布が風でたなびいて広がり、まるで片翼をもがれた悪魔のようだとランサーは思った。


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