弟くんがラスボスルート   作:潤雨

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創名の工房1

 

朝になり、再び全員が揃う。朝食は、士郎が作っていたところに、アーチャーが口を出すどころか手を出して、士郎がむきになったせいでやたら豪勢になり、腹ペコ王を歓喜させた。

「ともかく、情報の共有ね。アーチャー、貴方が覚えている限り第五次聖杯戦争(この戦争)の情報と、創名君の情報を話してちょうだい。」

「了解した、マスター」

凛に促されアーチャーが自身が経験した第五次聖杯戦争のあらましを話し出す。正規英霊であり、守護者として使役されていない英雄エミヤシロウの記憶は磨耗していない。キャスターが柳洞寺に陣を敷いていること、ルール違反を犯しアサシンを召喚し、門番をさせていることと、それぞれの真名に、キャスターのマスターの事。さらに、第四次のアーチャー、英雄王ギルガメッシュが受肉し、いまだ現界していることなどを話す。

「ふふ、綺礼め、どうしてくれようかしら?」

「と、遠坂、赦せないのはわかるけど落ち着け、今はキャスター達の方を優先するんだろ?」

「ええ、そうよね。桜を救出してから、殴ッ血KILL(ぶっちぎる)。」

外道神父の行いに、凛が激怒を通り越してアヤシク笑っている。取り合えずは、殺された(もういない)父の仇より、生きている(救える)妹を優先させるだけの魔術師としての理性は残っているようなので、スルーすることにしたアーチャーだった。

「さて、創名の事だが、実は私は創名と同じ戦場に出た事がほとんど無い、よって、創名の現在の戦力について未知数だ。」

アーチャーが生前に活躍したのは主に紛争地域で、創名が暗躍していたのは外道の魔術師狩りの為、それはしょうがないとも言える。

「第六次聖杯戦争では、マスターとして参加したのでしょう、その時の戦闘は参考にならないのですか?」

「無理だ、その時の聖杯戦争では、完全に暗躍に徹して最後の最後まで姿を現さなかった。」

セイバーの疑問に、アーチャーは肩を竦めながら答えた。

第六次聖杯戦争においてアサシンを使役した創名は正しく暗殺者だった。姿を見せず、僅か二日で聖杯戦争を終結させたのだ。士郎が創名と相対したのは、最後に聖杯を得んとする創名と僅かに問答したときのみだ。

それを凛達に伝え、アーチャーは溜め息を吐く。

「ともかく、創名が策を完成させれば、気が付けば謀殺されていた。と言う可能性がある。」

「なるほどね。それじゃぁ、今がチャンスなのかしら?逃げ切られたとは言え、彼の計画を一部崩せたんだし。」

「確かに、逃げる準備が終わる前に私達が突入したせいで、創名はかなりの数の礼装を持ち出す事に失敗している。」

創名は、本人の攻撃力のなさと使える魔術の少なさを礼装でカバーする錬金術士型の魔術師だ。スーツケースを持って逃げたが、アレに入りきる礼装の数はたかが知れている。つまり、創名は現在弱体化していると言っていいだろう。

契約によって、創名の魔術師殺しとしての能力を教える事が出来ないバゼットも同意見だった。

「よし、今夜柳洞寺に乗り込むわよ。時間を置いて策を練られる前に倒しましょう。」

「早めに行くのは賛成だが、策はあるのかね?」

逃げ切られた時点で、予備の策が用意されている恐れがあったが、アーチャーはそれを言う前に凛の作戦を聞くことにした。

「まず、敵の配置だけど、アーチャーの記憶の通りなら、山門にアサシン、柳洞寺にキャスターと葛木先生(マスター)、創名君も同じ場所にいると思うわ。」

「えぇ、山門を離れられないアサシンはともかく、戦力を自陣に集めるのは、キャスターのクラスなら定石です。」

凛の予測にセイバーは頷く。

「門番であるアサシンは、セイバーに抑えて貰うわ。正直セイバーにとって、創名君の固有結界は天敵だもの。」

剣を崩壊させる世界を持つ者と、剣の英霊、相性は最悪である。

「次にキャスターはアーチャーが創名君の時みたいに、固有結界で隔離。」

工房と言う相手に絶対的に有利なフィールドから、自身の心象風景を具現化する事でそれを破れる固有結界持ちはキャスターの天敵と言える。

「で、魔術師(私達)が葛木先生と創名君を相手するわ。キャスターの強化無しなら先生の脅威もかなり下がる。」

葛木宗一郎は、サーヴァントを打倒しうるマスターだが、それは魔術の英霊たるキャスターの強化魔術が有ってこそだ。キャスターを隔離し、強化が切れればそこまで恐くない。

「ふむ、定石で悪くない策だが、それゆえに読まれている恐れがあるな。」

「相手は謀略に長けてるんでしょ?なら、そんな連中に奇策を仕掛けても無駄よ。王道的に力で押しきるわよ。」

不遜かつ、自信に溢れた凛の言葉にアーチャーは頷いた。セイバー達も同意し、作戦は決まった。

「それなら、創名の工房を調べよう。なんの研究をしていたか分かるだけでも戦闘に有利になる。」

「そうね。じゃ、さっさと行きましょうか。」

「待てよ遠坂、洗い物しないと……」

「水に浸けて置いときなさい。」

アーチャーの提案に従い、創名の工房を調べる為、一行は移動し始めた。

 

 




そこは、虎なししよーやロリでブルマな弟子が居る道場の真上から2つ隣の教室。今日も赤毛白衣な先生と、やる気の無い学ランなアヴェくんがいた。

「アンリ´Sきゅーあんどえー!!」
「いえーい。」
先生とアヴェ君がいつものようにコーナーを開始する。
「なぁ、創名の工房って一話予定だったよな?」
「最近、作者的にシリアスなのが続いたから、ネタを入れようとしたらシリアスより長くなりそうだったから分割だって」
「……どうやったらネタがシリアス越えんだよ。」
アヴェ君の呆れた声に先生が紙を取り出す。
「え~と、書く予定は、工房に眠るアーチャーにとってのトラウマ礼装。創名の研究。???。だって。」
「最後の???が激しく気になるんですけど……」
「割りと早めに書き上げるられそうらしいよ。」
アヴェ君が紙を奪おうと飛び掛かるが、チョークに打ち落とされる。
「次回、
創名の工房2
お楽しみに」

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