すみません。
更新遅くなりました。
これからも私事やテンションの問題で更新が不定期になるかもですが、楽しんで読んでいただけたら嬉しいです。
「さぁ、話して貰うわよ。」
創名が居なくなり、投影の銀の砂も消えた衛宮家の茶の間で、アーチャーは自身のマスターに詰め寄られていた。
「話す、とはなんのことかね?マスター。」
「アンタの真名に
誤魔化そうとするなら令呪の使用も辞さない剣幕で言ってくるマスターにアーチャーは溜め息を吐いた。
「他のマスターに真名を知られて良いのかね?」
「えぇ、構わないわ。」
桜が関わっている以上、凛はかなりの無茶をする。それを知るアーチャーは自身だけで創名を止めることを諦めた。
「良いだろう。と言っても、私と衛宮創名の因縁など聞いても楽しくないだろうがね。」
「さて、まずは簡単に済む衛宮創名の目的から話そうか。
アレの目的は単純にして明確、幼き日の約束の達成、衛宮士郎を正義の味方にする事だ。」
「創名は、俺を正義の味方にする為に桜を浚ったり、攻撃してきたのか?」
「確かに、その目的でどうしてキャスターと繋がっていたの?」
士郎と凛の言葉に、アーチャーは僅かに目を伏せる。
「それは私と衛宮創名の因縁に深く関係する。
……君たちは、英雄と成るためには何が必要だと思う?」
「え?その、諦めない信念とかか?」
「強さ、でしょうか?」
士郎とバゼットが自信なく言った後、セイバーと凛が口を開いた。
「……時代、ですね。」
「そうね、じゃあ、私は怪物だと思うわ。」
英雄としての自身を思ったのか、セイバーの言葉には重みが有った。
アーチャーは、セイバーと凛にその通りだと告げた。
「英雄も時代が違えば殺人者でしかない。と言うのはわりと有名な言葉だ、そして、これは言い替えれば、殺人者も時代さえ違えば、英雄になり得ると言うことだ。」
「……そうですね。」
セイバーの脳裏にかつて衛宮切嗣が言い放った言葉が蘇る。英雄達が殺人に、武勇や名誉といった尊いものがあると
「人々から恐れられた怪物を殺した者は、すべからく英雄だ。その怪物がどんな想いを抱えていようがな。」
凛が思うのは、先刻撃破したライダーだ。彼女の真名はメドゥーサ、
「創名は、聖杯を持ってその二つの英雄となる条件を満たそうとしているのだよ。」
「どう言うことだよ!?創名がそんな……」
声を荒げた士郎を視線だけで制し、アーチャーは言葉を続けた。
「私の真名は、エミヤシロウ。
「……え?」
「やっぱり。」
アーチャーの言葉に言葉を失った士郎、アーチャーの真名に納得する凛。セイバーとバゼットは言葉も無かった。アンリ・マユとは、ゾロアスター教最大の邪神、この世全ての悪。ただの 人間がその存在に成れる筈が無いからだ。しかも、それを殺した?混乱する者を置き去りに話を進めるアーチャーは、凛に一冊の古ぼけた手帳を差し出す。
「これを。」
「これって…」
「衛宮切嗣の本当の手記だ。君が創名から渡されたのは核心が書かれていない
英雄と成った衛宮士郎が生前持ち歩いていた手記を読む内に、凛の顔色が変わる。
「何よコレ!?
「そんな……!」
セイバーは、自分達の戦いが原因で多くの人々を死へ追いやられた事に身を震わせる。
「今の聖杯はあらゆる願いを破滅的にしか叶えることは無い。それならばと、第六次聖杯戦争を制した創名は破滅的な願いを聖杯に託し、願い通りただ一人以外に殺されない邪神と成った。」
「その一人は……」
「あぁ、私だ。」
全員がアーチャーの言葉に沈黙した。
「
「創名は、そんな事をする奴じゃない!!」
士郎の叫びにアーチャーは頷く。
「確かに、創名の人格はそれを良しとしない、だが、衛宮創名は
「どう言うこと?」
「強迫性障害を知ってるかね?創名のそれとは異なるが、最も近いモノだ。」
強迫性障害、ある特定の考えや心配が浮かぶと、一定時間それで頭が一杯になり、無理に打ち消そうとすると不安が強まるが、自分が馬鹿馬鹿しい事で悩んでいる自覚があるという強迫観念や、その不安を拭う為に特定の行動を続ける強迫行為からなる精神の障害である。例えば、不潔な物に触れたと思ってしまい、その不安がはれるまで手を洗い続けるなどの症例がある。また、身動きが取れなくなり、食事などの生命活動さえ出来なくなった症例もある。
アーチャーは、創名の魂の歪みからこれに似た状態にあると説明した。
「すでに創名は自身を止められない。だから、私が創名を止めようとした。」
アーチャーは拳を握り締めそう言った。
「
そして、転生はサーヴァントに近い形の肉体を作り、それに転生する。アラヤの守護者でも殺しきれなかった怪物だ。」
「だから、そうなる前に止めたかった。」
「あぁ、その通りだ。止められる事が、創名にとって救いになる。」
アーチャーがそう言って黙ると、全員が何も言えなくなり、気まずい沈黙が流れる。
「あー、もう!ちょっと頭を整理するから今日はここまで!これからの事は明日の朝話し合うわよ。」
凛がそう言って、その場を後にすると、残された面々も動き始める。明日からの聖杯戦争に不安を抱えながら……
凛は夢を見ていた。それは、自分のサーヴァントの記憶。
多くの人間が血さえ流さず死んでいる。そんな中に彼等はいた。赤い外套に銀のガンドレッドを身に纏ったエミヤシロウと、ツギハギの体で爽やかに笑う、
創名の胸には、幻想のように美しい鋼の剣が突き立てられている。
あぁ、これはエミヤシロウが
「ありがとう、自分は救われた。」
「……創名。」
体中から血を流し、自身が死に向かっているのに、創名は解放されたように清々しく笑っている。
「泣かないで
士郎は何も言わず、創名に手を伸ばす。しかし、その手が触れる前に、創名の体は銀の砂となり、崩れて消えた。もう一度、泣かないで、と呟きながら。
創名にとって、これは辿り着くべくして辿り着いた道行きの果て、あの月下の約束の日から決まりきっていた最後。しかし、士郎にとって最も望みから離れた最後。
切嗣に憧れ、誰をも救わねばと、足掻いていた自分が破滅しなかったのは創名が、家族がいたからだ。
それを、自分の手で殺した……
「あぁ……ゥアアアアアアァァァァァァ!!」
それは、英雄の産声にして慟哭。士郎は、多くの人々を救った。けれど、創名を本当の意味で救うことが出来なかった。
それが、悔しかった。恨めしかった。自分は多くの人々を
この日この時、衛宮創名の死を持って
衛宮士郎は/人の如き剣は
正義の味方に/剣の如き人に
成った。
慟哭は、彼以外いない街に響き渡り続けた。
そこは、虎なししよーやロリでブルマな弟子が居る道場の真上から2つ隣の教室。今日も赤毛白衣な先生と、やる気の無い学ランなアヴェくんがいた。
「アンリ´Sきゅーあんどえー!!」
「いえーい」
何時も通りに始まるが、アヴェくんが窺うように先生を見る。
「えーと、アンリ・マユ?」
「そのとおーり!!」
先生の顔がツギハギの顔になる
「最初から言ってるじゃん。“アンリ´Sきゅーあんどえー”て」
「いや、そんなとこに本編に絡む伏線張るなよ!」
アヴェくんの言葉に邪神モードの先生はカラカラと笑って見せる。
「さて、次回は補足説明3
オマケにアンリ・マユに成ったときの創名のステータスと、セイヴァーで喚ばれた時の英雄エミヤシロウのステータス付きだよ。」