弟くんがラスボスルート   作:潤雨

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今日はこれを含めて4つ更新します。


VS騎兵

 

 

「慎二、この結界を解除しろ。」

「ハ、士郎ごときが僕に命令するなよ。」

「あら、私には士郎の方が上だと思うけど?」

夕焼けも沈み始め、夜の闇が這い寄る学園裏の雑木林で三人のマスターと三騎のサーヴァントが対峙していた。2対1で、相手はサーヴァントの花形セイバーとアーチャーである。雑木林と言う、比較的にライダーに有利な場でも戦闘が始まればライダーは勝てない、そう簡単に予想できるほどの戦力差があった。普通なら撤退以外の選択が無い状況だが、間桐慎二はそれを選べなかった。彼の祖父と妹が二日前から姿を消したためだ。御三家と呼ばれる家系の中、魔術が使えない自分を置いて魔術師の二人が消えた。慎二は、自分が身限られたと錯覚し、既に冷静な判断を下せないほどに精神的に追い詰められていた。

祖父は自我と精神を崩壊させられ、妹は人質としてキャスターに捕らえられている、しかもそれが友人である同級生の手によるものだと知れば、彼はどんな思いを持つだろうか?

「(……桜)」

ライダーは心の中で呟き、歯噛みをする。二日前の朝、パスをを通して衝撃が伝わってきた。それは、驚きと悲しみ、そして安堵。その後、マスターが変わり、令呪によって前マスターと現マスターの事を探る事、誰かに伝える事を禁じられ、二画目の令呪で偽臣の書を持つものに逆らわず、離れないように命じられ、桜を捜すことも出来ない。その上に慎二の命令に逆らえず、離脱する事も出来ずに脱落してしまう。令呪は明確な命令ほど強制力を持つ、二つ目の偽臣の書を持つものに逆らわず、離れないと言うのは範囲や期間が広く、強制力は通常より弱く逆らおうと思えば逆らえる、けれど確実に動きが鈍る。そうなれば、忽ち切り捨てられるだろう。桜を救えず、無念のままに消える事となってしまう。それならば、僅かな可能性に掛けて死力を尽くす。マスターが桜から変わったなら気にせず魔力を吸い上げる事も出来る。

「やれ!ライダー、僕の力を見せつけてやれ!!」

慎二の命令に、鎖着きの杭剣を構え前に出る。

「アーチャー、セイバー、士郎、手筈通り行くわよ!」

「了解した。マスター、彼らに君の敵は役が勝ちすぎてると教えてやろう。」

「行こう、セイバー。慎二を止めてやんないと…」

「えぇ、シロウ。道は切り開いて見せます。」

セイバー、アーチャーも前に出る、セイバーは風に隠した聖剣を、アーチャーは使い手は無く、作り手が伝説となった双剣を構える。

そして、神話の怪物がその力を解き放つ。

 

「ん、始まった。」

所変わって衛宮家の茶の間、拠点の守備と言う名の留守番役である創名とバゼットがお茶を飲んでる中、創名がポツリとこぼす。

「学校に使い魔を放ってたのですか?」

「うん、そんな感じ」

士郎達と対決してるライダーが使い魔(サーヴァント)である事などおくびに出さず頷く。その後、小さな小箱を取り出す。

「それはなんですか?」

「結界の触媒みたいなの、いい加減この家も本格的に守りを固めないとね。」

小箱の蓋を開けると中には銃弾が入れられている。

それは『起源弾』衛宮切嗣が自らの骨を弾丸に混ぜ込んだ特殊な弾丸、撃ち込まれた対象に切嗣の起源である、“切断”と“結合”を発現させ、あらゆる神経を滅茶苦茶にする魔弾であり、衛宮切嗣(魔術師殺し)の魔術師としての切り札。

その弾丸を握り締め、創名は魔術回路を起動させる。

「起きろ…」

「流れる時よ

巡る時間よ

その理を歪めよ」

バゼットは創名を中心に、正確には創名の持つ弾丸を中心に世界が歪められていくのを感じた。

「我は衛宮に列なる者

血の連なり無くとも縁を持つ者

界と界を隔てる者」

空気が誰かの所有物となるような違和感。既に魔術師の工房 として機能し始めている。

「ここは衛《まもる》べき(場所)

時の狭間を区切りとし、時間よ我が軍門に下れ。」

創名の手の内で起源弾が砕け、儀式魔術としての結界が張られた。これは衛宮の時間操作魔術の応用、時間の流れを結界の内と外で僅かなズレを生み出し、概念的に外界との隔たりを作る大魔術、創名によって保管されている衛宮の魔術刻印を基点に、衛宮切嗣の起源を内包した弾丸を触媒にしなければ発動出来ない、切嗣が息子達の為に晩年に用意した切り札である。

それを肌で感じたバゼットは、執行者としての勘が警報を鳴らすのを感じた。素晴らしい大魔術であるが、工房の守備として発動させ続けるには魔力を食いすぎる。例え、魔力炉を用意しているとしても一晩持たせるのがやっとだろう。明らかに、守りの為の結界ではない、ならば何故、今この結界を発動させたのか?

「さて、準備不足も甚だしいけど、コソコソ策謀を巡らすのはおしまい。これからは堂々と策を弄そうか。」

ツギハギの少年は、明日の天気を尋ねるような気軽さでそう言った。

 

 

セイバー&アーチャーVSライダーは、ライダーが圧倒的に不利になっていた。セイバーがライダーを猟犬の様に追い、攻撃を避ける為に生じた隙をアーチャーが見事な射撃で狙い撃つ。士郎も慎二を狙い、攻勢に出るせいで慎二を守る為に動かなければならない。しかも、士郎の投影と体術は、アーチャーと打ち合った僅かな時間で格段に向上している。数合とは言えライダーと打ち合い、セイバーが攻撃する時間を稼がれるほどである。

頼りの魔力は、戦闘が始まった時点で限界を保つ最低限の魔力量しか供給されなくなった。宝具を使えるだけの魔力もなく、その命運は後数十分で尽きるだろう。

しかし、ライダーは諦めない、桜を救うために……

ライダーは慎二を抱え、跳躍しその怪力を持って慎二を士郎に投げつける。

「うわぁぁ!!」

「慎二!」

叫びながら投げられた慎二を、投影の剣を消して受け止める。それは、致命的な隙だった。

「戯け!!」

アーチャーが叫んだ時には、ライダーは木の幹に着地していた。後は再び士郎に向かって跳躍し、隙の出来た士郎を殺すだけだ。マスターが一人殺せたら、その動揺を突いて逃げ出せるかもしれない。

「……あ」

しかし、それは出来なかった。木の幹を蹴り、跳躍しようとした瞬間、魔力の供給が切れた。マスターが契約を破棄したのだ。力が一瞬で抜け、その隙を突くアーチャーの矢に、心臓を射抜かれた。

霊核を貫かれ、地に墜たライダーは、それでも諦めずに足掻く。

「…お願い…です。……桜を助けて」

「っ!桜がどうしたの!?」

ライダーの言葉に、凛が血相を変えて問いただす。

「……一昨日の……朝に…令呪を奪われ…て……」

契約が破棄された事で令呪の縛りから解放されたライダーは、凛達にそう言い残して消えていった。

「慎二!桜は!?」

「一昨日の朝に、士郎の所に行ったきり帰ってないよ。何だよ…桜がマスターじゃないなら、僕は…」

士郎の問いに、呆然としていた慎二は答え、その後は自分にしか聞こえないほどの小さな声で、何かを呟き続けている。

対して、士郎は自身の内に浮かんだ最悪の考えに顔を青くする。

「……遠坂、一昨日の朝、創名が桜を当校する前に引き留めてるんだ。それに、その日から桜を見てない。」

士郎の言葉に、全員が表情を固くし、言葉を失った。

 

 





そこは、虎なししよーやロリでブルマな弟子が居る道場の真上から2つ隣の教室。今日も赤毛白衣な先生と、やる気の無い学ランなアヴェくんがいた。

「アンリ´Sきゅーあんどえー!!」
「いえーい」
ぱちぱちといつも以上にやる気がなさそうに拍手するアヴェくん。
「なぁ、VS騎兵とか言っといて、この戦闘描写の短さ、薄っぺらさは、いったいどーいう事ですかぁ?」
「作者的に全力だったんだよ、ただ、その熱意に技術が足りなかっただけで…」
先生はため息を吐き、黒板にいつもの事と書きなぐる。
「次回、喰らい合う世界 お楽しみに」
「最近、投げやりじゃね?」
「………」

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