彩花/恋と魔法の物語   作:khiro

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9話 別れ

中学3年生に上がってから、私は由紀ちゃんから酷いいじめを受けた。

しかも、私が大好きだった大輔君まで私をいじめるのを手伝った。

さらに葛西君も私をいじめる側に回った。

 

ある日学校に来ると、机に「史上最強バカウンコ 高梨死ね」と書かれていた。

そして椅子の上に大量の画鋲が貼り付けられていた。ボンドのようなものでとめられていたらしく剥がせなかった。

 

教師「始めるぞ」

 

教師「早く座れ!早く座る!」

 

男子「はい。・・・高梨、何やってるんだ?早く座れ。」

 

彩花「あの・・・」

 

男子「さっさと座れよ。みんな待ってんだろ。」

 

由紀「学年ワーストバカは座り方も知らないの?」

 

由紀「学年じゃなくて学校、いや県内、いや日本、いや世界、いや宇宙一頭が悪い高梨さん。」

 

教師「おーい、早く座りなさい。」

 

仕方なく画鋲がお尻に刺さらないようにして座ろうとしたら

 

彩花「痛い!」

 

私の前の席の大輔君に机を押されて椅子にお尻がつき、お尻に大量の画鋲が刺さった。

お尻が血だらけになった。

 

靴の中に画鋲を入れられたこともあった。

下駄箱に「バカ」「死ね」の張り紙をつけられ、靴を泥だらけにされたこともあった。

 

そしてある日は

 

大輔「いって!」

 

大輔君に無理矢理ぶつかられた。

 

由紀「携帯落ちたよ!」

 

大輔「あー、壊れた!」

 

大輔「どうしてくれるんだ?」

 

彩花「え?」

 

大輔「え、じゃねえよ。携帯が壊れたって言ってるんだよ。」

 

彩花「でもぶつかってきたの・・・」

 

大輔「は?俺のせいだって言うのかよ?」

 

大輔「どうしてくれるんだよ。これ限定モデルだぞ。」

 

大輔「チッ、しょうがねえな。3万でいいよ。」

 

彩花「え?」

 

大輔「明日までに3万持ってこい。」

 

大輔「無理ならお前の親に払ってもらうから」

 

圭一「絶対持ってこいよ!」

 

由紀「行きましょう」

 

由紀「じゃあね」

 

 

由紀「本当に限定モデルなの?」

 

大輔「そんなわけねえだろ。ていうかこれ本当は壊れてないし。」

 

由紀「酷いね。」

 

大輔「あいつから金を取るくらい安いって。」

 

彩花「友達の携帯を壊しちゃったんだ。弁償しなきゃいけないから、3万円貸して。」

 

お母さんに友達の携帯を壊したことを正直に話して3万円貸してもらった。翌日にちゃんと払った。

 

ある日の休み時間には由紀ちゃんと大輔君と葛西君に鞄を回し投げされて、鞄を窓の外に捨てられた。

またある日の給食の時間には、由紀ちゃんに泥を入れられた。大輔君もそれを手伝った。

 

大輔「調味料でーす」

 

由紀「それ食べなさいよ」

 

またある日は砂を投げられた。

 

大輔「おりゃー」

 

あんなに優しかった大輔君が、あんなに私の味方になり、私の味方をしてくれていた大輔君が私の敵になった。

 

そして私は一人ぼっちになった。

 

こんなこともあった

 

由紀「彩花ちゃん、今日もよろしく。」

 

彩花「え?何を?」

 

由紀「テストに決まってるでしょ。テスト。」

 

大輔「またばっちりに教えてくれよ。」

 

彩花「でもバレたら・・・。今回はやめといたほうが・・・」

 

由紀「大丈夫だって。うちの教師とろいし。」

 

私にカンニングの手伝いをさせようとしていた。

 

由紀「あんたの大好きな大輔君が困ってるのよ。」

 

彩花「大輔君は関係ないでしょ。」

 

由紀「教えなきゃまたあんたを酷い目に合わせるわよ。」

 

彩花「・・・わかった。」

 

教師「じゃあテスト始めるから、机のものをしまって。」

 

 

彩花「大輔君もカンニングしてるの?」

 

大輔「そうだけど」

 

彩花「できは悪くっても不正だけはしなかったじゃない!」

 

彩花「0点取ったって、カンニングだけはしてこなかったでしょ」

 

大輔「だからなんだって言うんだ。」

 

 

女子「荒川君から」

 

そこのメモに書いてあったのは

 

「終わったら体育倉庫に来い。バックレたらマジころす。」

 

 

由紀「来なさいよ!」

 

彩花「やめてよ!」

 

大輔「来いって!」

 

大輔「これ結構効くんだよね」

 

彩花「うわー!」

 

スタンガンで攻撃された。

 

彩花「やめて!やめて!」

 

彩花「うわー!」

 

彩花「うわー!」

 

大輔「今日はこのくらいでいいんじゃね?」

 

由紀「そうだね」

 

大輔「でも明日もやるからな」

 

彩花「ウウッ」

 

その日の夜は大声で泣いた。

 

 

別の日も

 

彩花「痛い痛い痛い!お願いやめてよ!やめてよ!」

 

彩花「死にたくないんだよ!」

 

大輔「死ぬの怖い?」

 

彩花「怖い!死にたくない!」

 

彩花「死にたくないんです!」

 

大輔「死んだらこのいじめからも解放されるよ?」

 

大輔「まあ俺は死刑になりたくないから殺したりはしないけどね」

 

大輔君にもスタンガンで攻撃された。

というより、スタンガン自体大輔君の提案だったようだ。

 

 

大輔「俺が由紀にアドバイスしたんだよね。もっと酷いいじめじゃないと彩花は屈しないよってね。」

 

葛西「でもなんでそこまで」

 

大輔「あいつは泣き虫だけど強いからね。これくらいやんないとダメなんだよ。」

 

葛西「さすがにやりすぎじゃないか?死んでたかもしれないし。」

 

大輔「護身用だよ。死にはしないでしょ。」

 

大輔「でも結構バチバチ言ってたよな。フフフ。」

 

 

由紀「ねえ、いじめを手伝ってもらって悪いね。」

 

大輔「手伝ってないよ。俺が自分からあの彩花って女をいじめてるんだよ。」

 

大輔「まあ俺は愛する由紀のためならなんでもするよ。」

 

由紀「じゃあ今度デートに行かない?」

 

大輔「うん、行こう」

 

 

そしてある日

 

母「彩花、お友達からお電話。」

 

彩花「誰?」

 

母「大輔君」

 

なぜ大輔君から?

大輔君からの電話、ちょっと前なら喜んで出たけど今は話したくない・・・。

 

彩花「いないって言ってよ」

 

母「『いないって言ってよ』と言ってるわ。」

 

・・・

大輔「いないって言ってよと仰ってるわ、だって。じゃあいるってことじゃん、バカだね彩花の奴w」

 

・・・

彩花「ちょっとなんてこと言うの!」

 

この母も何を考えているのかわからない。

 

彩花「わかったよ、わたしが出る。」

 

彩花「もしもし」

 

大輔「彩花?俺はあんたと話したくないんで、今由紀に代わるから。」

 

由紀「明日学校が終わったら、大輔君の好きな漫画買ってほしいんだけど。」

 

彩花「そんなの自分で買ってよ。わたし、あまりお金持ってないし。」

 

由紀「誰がお金払えって言った?」

 

彩花「どういうこと?」

 

由紀「お金がないなら、払わないで帰っちゃえばいいじゃない。」

 

彩花「万引きってこと?」

 

由紀「バレなきゃ犯罪じゃないんだよ」

 

彩花「でも、わたし明日用事あるんだ。」

 

由紀「逃げたらどうなるかわかってるよね?」

 

そこで電話を切られた。

 

私は逃げた。由紀ちゃんと大輔君からは酷い仕打ちを受けたけど。

実際に万引きをしてたらどうなってたかと思うと、それよりマシだ。

 

・・・

私はいつか、大輔君以外の人を好きになるだろう。

大輔君以外の誰かと恋に堕ちる日がきっとくる。

 

・・・わけがないじゃない

たとえフラれても、どんなにひどいいじめを受けても、私は大輔君を嫌いになることなんてできない。

大輔君以外の人を好きになることなんてできない。

きっと私はいつまでも大輔君のことを好きでいるだろう。

 

夏休み近くになると進学に響くと思ったのか、大輔君はいじめをしなくなった。

 

 

彩花「大輔君はどこの高校に行くの?」

 

彩花「できれば私と同じ高校に行ってほしいけど、やっぱり甲子園を目指して強豪校に行くのかな?」

 

彩花「でも名門私立じゃレギュラー取れないから普通の県立校に行くとも言ってたよね。」

 

大輔「どちらでもない。俺は他県の学校に留学する。」

 

彩花「え?なんで?」

 

大輔「由紀が中学を卒業したら、引っ越すことになったんだ。」

 

大輔「そしたらちょうど由紀の引越し先の県の学校から推薦の話があってね。」

 

大輔「俺は由紀についていくことにした。」

 

大輔「というのも理由の1つだが、俺も由紀が引っ越すからという理由だけで他県の学校に行ったりなんかしない。それじゃあ両親も納得しないだろう。」

 

大輔「だが俺の親父がその学校を気に入ってて、母さんも大賛成なんだ。」

 

彩花「う・・・」

 

大輔「って彩花!?」

 

私、泣いてる・・・

なんで私、泣いてるんだろう。

 

理由はわかる。大輔君が離れていってしまう。進学先まで由紀ちゃんに合わせた。

完全に大輔君を由紀ちゃんに取られてしまったんだ。

 

私には他県まで大輔君についていくことなどできない。姉と弟のことが心配だからだ。

家を離れることも不安だった。

 

・・・

そして1年が過ぎ、中学校の卒業式。

生まれた頃から一緒だった大輔君と登校するのもこの日が最後になる。

 

彩花「今日で最後だね。」

 

大輔「明後日、家を出ることになってる。」

 

彩花「そうなんだ。」

 

そして別れの朝

 

大輔「じゃあ、休みができたらまた帰ってくる。」

 

彩花「由紀ちゃんと仲良くやってね」

 

彩花「じゃあ・・・」

 

彩花「うえーん・・・」

 

大輔「彩花・・・」

 

涙が止まらなかった

 

彩花「ごめん。泣かないって決めてたのに・・・。笑ってお別れするって決めてたのに。」

 

彩花「でも大丈夫だから。すぐに慣れると思う。」

 

彩花「さようなら・・・」

 

さようなら、大好きな人。さようなら、私の初恋。


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