彩花/恋と魔法の物語   作:khiro

6 / 10
6話 デート

第6話

 

・・・

とある遊園地

 

大輔「そういえば初めてだな。お前と遊びに行くの。」

 

圭一「荒川君と来れて嬉しい。」

 

祐樹「この3人で行くのもいいな」

 

大輔「ここは両親と彩花とよく遊びに来たな。」

 

 

彩花「ここはわたしの思い出の場所でもある遊園地」

 

彩花「唯ちゃんやかなちゃんと来るのは初めてだね。」

 

唯「でもなんで私を誘ってくれたのかな、って思ったけど、荒川君と葛西君と中沢君のデートが見れると聞いたら見に行くしかないでしょ。」

 

彩花「わたしが1人で見てるだけだと3人の邪魔になりそうだから、唯ちゃんも誘ったんだ。」

 

香苗「ぼくはいつもお兄ちゃんたちの絡みをいつも見てるけど、同級生ライバルコンビってのもいいよね。」

 

 

祐樹「でも3人だと誰か1人が邪魔になりそうだよね。」

 

祐樹「俺は見てるから荒川君と葛西君の2人きりで話してきなよ。」

 

祐樹「そのあと俺に変わってくれればいい。」

 

大輔「そうだな。」

 

圭一「さあ、次はあれに乗ろう」

 

大輔「うん」

 

今日の葛西君は今まで見たこともないような笑顔だった。

大好きな大輔君とのデートだもんね。

中沢君に、大輔君も楽しそう。

 

彩花「葛西君楽しそうだね」

 

香苗「ぼくたちも行こう」

 

唯「いいなぁ。イケメンの男の子同士って。」

 

唯「でもそこにあたしはいらないんだよね。」

 

彩花「わたしもすごくそう思う。なんていうか男の子に生まれたかったな、って。」

 

彩花「だけど女の子に生まれたからBLを美しいと思えたんだと思うだ。」

 

 

由紀「そこにいるのは彩花ちゃんたち」

 

彩花「由紀ちゃんも遊びに来たの?」

 

由紀「パトロールよ。いわば奉仕活動。」

 

由紀「あなたも魔法少女ならそのくらいしないといけないわよ。」

 

由紀「それよりさっき荒川君と葛西君と中沢君も見かけたんだけど、一緒にいなくていいの?」

 

彩花「今日はいいの。男の子同士で楽しませてあげたいんで。邪魔しちゃ悪いから。」

 

由紀「そう」

 

 

祐樹「実は荒川君と2人で話がしたいと思ってたんだ。」

 

祐樹「今日は相談っていうか、俺の母と姉のことなんだけど。」

 

大輔「相談ってなんだ?」

 

祐樹「奇跡ってあるのかな?」

 

大輔「奇跡?」

 

祐樹「俺の母さんと姉ちゃん、2人が今生きてるのは奇跡みたいなもんなんだよね。」

 

祐樹「実は俺、小学校5年生のときにちょっとお腹が痛くなって病院に行ったんだよ。」

 

祐樹「原因はただの食べ過ぎだったんだ。笑っちゃうよね。でも笑えないことが起きた。」

 

祐樹「そのとき偶然調子悪かった母さんも診てもらったんだけど、そしたらガンが見つかったんだ。」

 

祐樹「ギリギリセーフだった。もし俺が食べ過ぎでお腹壊してなかったら母さんは助からなかったかもしれない。」

 

祐樹「今は癌から回復して元気に暮らしてる。」

 

祐樹「母さんはなんとなく俺に感謝してるようだけど、そんなの単なる偶然。」

 

祐樹「どちらかといえば母さんは自分の行いがよかったから神様に救われたんだと思う。」

 

祐樹「母さんは昔骨髄バンクに登録して、そしたらその1年前、俺が小4のときに俺と同い年の女の子が白血病になって、母がドナーとして一致した。」

 

祐樹「母さんは白血病の小学校4年生の女の子のドナーになって命を救ったんだ。だからそのご褒美みたいなもんだ。」

 

大輔「へえ。そういうこともあるんだな。」

 

祐樹「次に姉ちゃんのことなんだが、桜ヶ丘航空の墜落事故。」

 

大輔「ああ、今年の夏か。それがなんか関係あるのか?」

 

祐樹「実はあの飛行機に、姉ちゃんも乗ることになってたんだ。」

 

大輔「なんだって?」

 

祐樹「友人と旅行に行くことになってて、帰りに予約してたのが例の便。」

 

祐樹「ところが出発の1週間前、母さんが風邪をひいちゃって、それを姉ちゃんにうつして高熱。」

 

祐樹「やむを得ず姉ちゃんだけ旅行はキャンセルした。」

 

祐樹「そしたら乗るはずだった飛行機があの事故だ。乗員乗客全員死亡。」

 

祐樹「風邪をひいて旅行に行かなかった姉ちゃんは助かったわけだ。」

 

大輔「それはよかったね。」

 

祐樹「それがよかったとは言えない。旅行に行った姉ちゃんの友達は亡くなった。」

 

祐樹「自分だけ偶然助かってしまったことを、喜べるわけがない。」

 

祐樹「姉ちゃんはあれ以降クラスメートからまるで人殺しみたいな白い目で見られているとのことだ。」

 

祐樹「ついに学校を休むようになった。俺はなんて言ってやればいいのかな、って。」

 

大輔「そうか。」

 

大輔「そういうのは時間が解決してくれるんじゃないかな。お前のお姉さんだけでなく、事故で亡くなった人の遺族も。」

 

祐樹「そうするしかないね。」

 

祐樹「なんていうか、俺も荒川君と話せてすっきりした。」

 

大輔「さあ、次行こう。」

 

・・・

楽しい時間はあっという間に過ぎていった。

 

圭一「今日はありがとう。すごく楽しかった。」

 

大輔「こちらこそ、楽しかった。」

 

祐樹「今度は高梨さんとデートしてあげて。」

 

大輔「そうだな。彩花と2人きりって意外にないんだよな。」

 

圭一「僕に荒川君とデートさせてくれた高梨さんにお礼を言わないとね。」

 

圭一「荒川君には誰よりも自分のことを思ってくれる子がいていいな。」

 

・・・

中2の冬休み

 

大輔「こうやって2人で遊びに行くの久しぶりだね」

 

彩花「そうだね。やっぱり大輔君と一緒だと楽しいな。」

 

ここは大輔君との初デートの場所でもあった

 

大輔「小さい頃の思い出は、大輔君との思い出でもあるんだよね。」

 

ずっと私のことをただの幼馴染にしか思ってくれなかった大輔君が、1人の女の子として見てくれるようになった。

 

彩花「わたしたち、これからもずっとこのままでいれるのかな。」

 

大輔「そうだな。今の関係でいれたらいいな。」

 

彩花(わたしは、できれば恋人同士になりたいな。)

 

 

この日は冬なのに花火大会をやっていた。

 

彩花「わたし・・・、好きだよ。」

 

大輔「俺も好きだ。」

 

彩花(え?)

 

大輔「・・・花火」

 

彩花(なにそれ、ラブコメのお決まりの発言。)

 

冬なのに花火やったのはこの展開にするためだったのね。

 

・・・

中2 冬休み明けの3学期の席替え

 

わたしの隣は中沢君

大輔君は2年生の2学期に転校してきた由紀ちゃんの隣の席になった。

 

 

中学生になって、私は恋をした。

 

今まで普通に接してきた男の子に初めて心を奪われた。

相手は荒川大輔。幼稚園のころから接してきた男の子。

 

幼馴染を好きになってしまったのはある意味おかしいかもしれない。

誰かに相談したくても、できない。笑われてしまいそうで。

 

大輔君とは今までどおり普通に接していきたい。

だけど恋をしてしまうと、どうしても特別に意識してしまう。

恋はこんなにも辛いものなのか。

 

大輔君は小学校時代の運動音痴とは対照的に、今は野球部のレギュラーになってる。

 

・・・

彩花「彩ちゃん」

 

彩花「恋の相談なんだけど。」

 

彩花「わたし、今好きな子がいるんだよね。」

 

あや「そう。相手は多分、大輔君だね。」

 

彩花「図星か。」

 

彩花「あの子以外考えられないじゃない。」

 

あや「私も好きな人ができて去年告白したけど、フラれちゃったのよね。」

 

あや「だから今は好きな人いない。」

 

あや「あれから恋をするのが怖くなっちゃった。」

 

あや「すごく好きだったから。多分今でも好きだと思う。」

 

彩花「そうなんだ。」

 

あや「でも彩花ちゃんの恋は実ると思う。だって誰よりも可愛い彩花だもの。」

 

あや「彩花が嫌いな男子なんていないって」

 

・・・

彩花「達也」

 

私の弟の達也

 

彩花「達也は好きな女の子とかいる?」

 

達也「いるよ。」

 

彩花「え?誰?」

 

達也「彩花お姉ちゃん」

 

彩花「クラスメートとかで、好きな子いないの?」

 

達也「いない。僕はお姉ちゃんたちが大好きだから。」

 

彩花「そうか。」

 

彩花「わたしは今クラスメートに好きな子がいるんだ。」

 

達也「そうなんだ。」

 

達也「恋してる女の子って素敵だと思う。」

 

達也「僕は彩花お姉ちゃんのどんなところも好きだけど、恋してるときはなお輝いてるね。」

 

彩花「えー。恥ずかしいよ。」

 

 

秋、思わぬライバルが現れた。

1人は葛西圭一。小学校のころから大輔君と仲のよかった葛西君も彼のことを好きになっていた。

もう1人は中沢祐樹。大輔君の幼馴染の1人。

 

私は中沢君、葛西君と争った。2人の恋は報われることはなかった。

今は2人とも私の恋を応援してくれている。

 

葛西君のためにも、私は幸せにならなければならない。

 

・・・

圭一「僕が荒川君を高梨さんに告白させるよう仕向ける。」

 

彩花「いや、わたしが告白するって。」

 

圭一「なんでだ。男が告白しなきゃダメだろ。好きな女の子に告白できない男はダメだ。」

 

彩花「わたしから告白しない限り、大輔君を自分のものにできないと思う。」

 

彩花「それにわたし、幸せは自分でつかみたいから。」

 

・・・

2月上旬

 

彩花「よし! 告白をしよう!」

 

古臭いやりかただが、バレンタインデーにチョコレートをあげて告白することにした。

 

彩花「唯ちゃん、わたしとチョコ作ってくれないかな?」

 

唯「ちょうど良かった。私も誰かにチョコあげようと思ってたんだ。」

 

唯「誰にあげるかは言えないけど。」

 

彩花「わたしは・・・、今思いを寄せてる男の子に告白したくて。」

 

唯「相手は誰だかわかるな。多分D君でしょ。」

 

彩花「やっぱりわかるか。」

 

唯「かなちゃんも渡す相手いるんだって。」

 

・・・

それはバレンタインデーの2日前、突然訪れた。

 

由紀「あやちゃんに相談があるの。恋の相談。」

 

彩花「恋の相談?」

 

由紀「私、荒川君のことが好きなんです。」

 

彩花「え?」

 

由紀「私、バレンタインデーに荒川君にチョコを渡して告白しようと思います。」

 

彩花「・・・」

 

由紀「そういえば彩花ちゃんは、こないだ葛西君と荒川君をかけて決闘したんだって?」

 

彩花「よく知ってるね」

 

由紀「クラスの噂になっていたんで」

 

由紀「ならば、私とも荒川君をかけて決闘しましょうか?」

 

彩花「何?」

 

由紀「冗談です。そんなことしても荒川君は喜びません。」

 

彩花「そう。」

 

彩花「わたしも告白することにしたんだ。バレンタインデーに。」

 

由紀「そう。ならば勝負ですね。」

 

由紀「彩花ちゃんは荒川君の幼馴染だからね。私の先を越す権利があると思って、言っておきました。」

 

 

オラフ「それより君は今まで出番が少なかったのに、急に出番が増えてきたね。」

 

彩花「オラフ、いつの間に・・・」

 

由紀「そうみたいね。それが何か?」

 

オラフ「死亡フラグだよ。影の薄かったキャラに急にスポットライトが当たるってのは」

 

由紀「何また縁起の悪いことを・・・」

 

彩花「やめとこう。由紀ちゃんには死亡フラグとか通用しないんじゃないかと。」

 

由紀「そうかもね。でも恋の勝負、負けるのは由紀、君だろう。」

 

・・・

たかなし家

 

唯「あやちゃんは料理が上手だから羨ましいな。お姉ちゃんのほうのあやちゃんより上手いし」

 

彩花「それあやちゃん(姉)の前では言えないけどね。」

 

 

 

唯「チョコの形が完成したら、冷蔵庫に入れて1時間ほど待つんだよ。」

 

彩花「チョコ作りって初めてやってみたけど結構難しいんだね。」

 

唯「まあ今回は彩花ちゃんの恋を応援するためだから」

 

 

それから一時間ほどで、チョコの形は完成した。

型に入ったそれは、冷蔵庫の中で固まることを待つだけとなった。

 

彩花「わたしのチョコへ。美味しく固まってください」

 

私にとって、あのチョコレートは勝負の道具だ。

 

バレンタインまであと2日

私の恋の決戦まであと2日なのだ。

 

・・・

彩花「わたしは大輔君に告白するの。」

 

彩花「わたしは傷つくかも知れない。フラれるのは怖い。」

 

彩花「だってずっと好きだった男の子だし。」

 

あや「大丈夫。あやちゃんをフる男の子なんていないよ。だってこんなに可愛いんだし。」

 

彩花「でも今までわたしのことを女の子として見てくれてなかったからなあ。」

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。